ハラスメント防止法とは?法令の基本的な原則と社内で必要となる対策について解説する
企業においてハラスメントが起きることで、従業員の心身を傷つける行為は事業経営に悪影響を与える経営課題です。本記事では、ハラスメント防止に関する法令と対策について解説します。企業成長や企業運営に大きな影響を与えるハラスメントを抑制するために法令を理解していきましょう。
- 01.ハラスメントとは
- 02.ハラスメントの種類
- 03.ハラスメント防止に関する法令
- 04.2022年4月から施行のパワハラ防止法とは
- 05.ハラスメント法の準じた対策を取るための方法
- 06.Schooビジネスプランの特徴
- 07.まとめ
01ハラスメントとは
ハラスメントの問題は、ニュースや新聞、SNSでも大きく取り上げられており、社会的問題として認識されています。しかし、まだまだハラスメント対策が完全ではなく、ハラスメントが起きる現状が存在しているため、ハラスメントの定義を再確認し対策の必要性を考えていきましょう。
ハラスメントの定義
一言でハラスメントを定義すると「嫌がらせ」となります。現在は、ハラスメントとして取り上げられる種類も多く存在し、無自覚によるハラスメントによる被害も訴えられています。ハラスメントが起きることで、被害者の心身喪失、職場環境の悪化を生む社会的問題です。
ハラスメント対策を講じる必要性
企業におけるハラスメント対策の必要性は、被害者の心身喪失を防止するだけではありません。ハラスメントによる職場環境の悪化による経営不振、ハラスメントによる風評被害での信頼喪失などの可能性もあり企業経営に悪影響を起こします。企業におけるハラスメント対策は、企業経営を円滑に行うための必須事項となっており、企業全体で撲滅の活動を行うことが急務であると認識しておきましょう。
02ハラスメントの種類
企業内で起きるハラスメントは、その性質によって分類されます。次にハラスメントの代表的な種類について解説します。ハラスメント防止法を理解する前に、ハラスメントの種類は意味合いを理解しておきましょう。
パワーハラスメント
パワーハラスメントは通常、「パワハラ」と呼ばれています。厚生労働省は、パワハラの定義を行っています。以前は上司から部下に対してのみだったパワハラは、同僚や部下からの行為に対してもパワハラと捉えるようになっています。
- 【パワーハラスメントの定義】
- 1.優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 2.業務の適正な範囲を超えて行われること
- 3.身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメントは、「セクハラ」と通常呼ばれています。セクハラはパワハラと同じように厚生労働省で定義されています。セクハラは常に社会的問題となっているハラスメントの1つです。
セクシュアルハラスメントの定義
職場におけるセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれます。また、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。
モラルハラスメント
通常、「モラハラ」と呼ばれます。「態度」「言葉」「文書」などにより陰湿に繰り返される精神的な暴力や嫌がらせのことです。パワハラに類似していますが、「暴力行為」が含まれない点、職場の優位性には起因しない点などの相違点があります。
マタニティハラスメント
「マタハラ」と呼ばれ、「妊娠」を理由とする不利益な扱いを指します。2015年1月に「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法の解釈通達」の改正によりマタハラに関する明文化が行われています。男性優位の価値観が残る日本社会においては、大きな問題として取り上げられています。
ジェンダーハラスメント
ジェンハラと呼ばれ、「男性」「女性」という性別を起因として、「性格や能力」について固定観点や差別意識に基づいた嫌がらせのことです。セクハラと類似していますが、セクハラは異性間で起こるハラスメントに対して、ジェンハラは同性間でのハラスメントも対象となる点に違いがあります。
カスタマーハラスメント
近年より問題視されるようになってきているのはカスハラと呼ばれるカスタマーハラスメントです。カスハラとは、顧客や取引先が行う「暴力」「悪質なクレーム」などの迷惑行為のことです。こうした行為は多くの顧客と日常的に接する職業では特に問題になりやすく、2021年に全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)が実施したアンケートでは、交通運輸・観光サービス業に従事している所属組合員のうち過去2年にカスハラに遭遇した割合は46.6%であり、特にタクシー・バス・鉄道に関する業務に関わる人では50%を超える数値となりました。
03ハラスメント防止に関する法令
次にハラスメント防止に関する法令についてご紹介します。ハラスメントに関する法令は年々改訂され、ハラスメント抑制に対して国として対策を講じる必要があると判断されています。こうした背景もあり企業においては、ハラスメント防止に関する法令の理解と遵守が求められています。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法第11条には、職場でのセクハラに対する具体的な対策を講じる必要があることを定めています。男女雇用均等法におけるセクハラには同性に対してのセクハラも同様に対策を講じる必要があることを明文化され性別に関わらずセクハラを禁止する旨を発表しており、企業全体での対策を講じる必要があると定義していることに注意しておきましょう。
【男女雇用機会均等法第11条】
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」
労働基準法
労働基準法には、マタハラを許されない行為と明記され法的根拠とて扱われています。労働基準法は、「労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を営むための労働条件の最低基準を定める法律」として定められており、ハラスメント行為は労働条件の最低基準を下回る行為と扱われている点に注意しておきましょう。
「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合は、その者を就業させてはならない」
「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」
「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」
育児・介護休業法
育児・介護休業法では、企業におけるマタハラ防止のための具体的な措置を講じる法的義務を定め、企業に取り組みを行うことを明記しています。企業においては、育休/産休の取得率は、その後の採用活動にも大きく影響する要素です。マタハラの事例があれば、いくら育休/産休の取得率が高くても女性からの求人応募を期待できないなど、将来的な企業運営に影響することが予測されます。
042022年4月から施行のパワハラ防止法とは
先ほど解説した法令に加えて、パワハラ防止法があります。2020年6月より改正労働施策総合推進法が施行され、その中に職場内のパワーハラスメントを防止する規定が盛り込まれていることから、パワハラ防止法と呼ばれているのです。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から施行されています。つまり、全ての企業においてパワハラ防止法が適用されています。ここでは、パワハラ防止法の概要や基準について詳しく解説します。
パワハラに該当する類型
どのような言動がパワハラにあたるのでしょうか。ここでは代表的な6つの類型と例について解説します。
身体的な攻撃
当然ながら身体的な攻撃はパワハラに該当します。具体的には殴打や足蹴りをしたり、相手に向かって物を投げつけるなどの行為が挙げられます。一方で、誤ってぶつかってしまった、というケースはパワハラには該当しないと考えられます。
精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、脅迫や名誉棄損、侮辱、暴言等を指します。人格を否定するような言動や、相手の性的指向・性自任に関する侮辱的な言動が該当します。また、業務の遂行において必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこともパワハラに該当します。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しとは、隔離や仲間外し、無視などが該当します。具体的には1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させることなどが挙げられます。また、本人の意思に反して、仕事をさせず、長時間にわたって別室に隔離させるなどもパワハラに該当します。
過大な要求
過大な要求とは、業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことを強制したり、仕事の妨害をすることを指します。新入社員に対して、業務遂行に十分な教育を行わないまま、遂行不可能なレベルの業績目標を課し、達成できなかった場合には厳しく叱責するなどが該当します。
過小な要求
過小な要求とは、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことなどを指します。例としては、管理職の社員を退職させるために、誰でもできる業務だけをさせたり、気に入らない社員に対して嫌がらせのために仕事を与えるなどが該当します。
個の侵害
個の侵害とはプライベートな部分に過度に立ち入る事です。例えば、社員の性的指向や病歴などの個人情報について、その社員の了解を得ずに他の社員に共有すること、などが該当します。
パワハラ防止法で企業に義務付けられる措置
パワハラ防止法で企業に求められる対応は4つあります。ここでは、それぞれ詳しく解説します。
事業主の方針等の明確化や周知・啓発
職場におけるパワハラの内容やパワハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、社員に周知・啓発することが必要となります。また、パワハラを行った者については、厳正に対処する旨の方針と対処方法を就業規則等の文書に規定し、社員に周知・啓発することも必要とされています。
相談に対して適切に対応するための体制整備
パワハラに関する相談窓口を設け、社員に周知することが必要です。また、相談窓口の担当者が、相談内容や状況に応じて適切な対応が取れるように教育しておくなどの体制整備が求められます。
職場でのパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
職場でパワハラが起こってしまった際には、事実関係を迅速かつ適切に確認し、被害者に対する配慮のための措置を行うことが求められます。また、事実関係を確認した後、行為者に対する措置も適切に行うこと、再発防止に向けた措置を講じることも含められています。
その他の講じるべき措置
相談者と行為者などのプライバシーを保護するための必要な措置を講じ、その旨を社員に周知することも必要です。また、相談したことを理由に、相談者に対して解雇をしたり、不利益な取扱いをしないことを定め、社員に周知・啓発することも求められます。
パワハラ防止法を無視するとどうなるのか
パワハラ防止法において、現在は罰則規定は設けられていません。つまり、罰金や営業停止などの処置は取られないというわけです。しかし、だからと言って無視をしてよいというわけではありません。パワハラの事実が発覚すれば、厚生労働省から勧告を受ける可能性があります。その際に、適切な対応を取らなければ、社名とともにパワハラの事実を公表されてしまう可能性があります。
05ハラスメント法の準じた対策を取るための方法
企業において、ハラスメント法に準じた対策を取るためには、いくつもの対応方法が必要です。ハラスメント法に準じるためには、会社内の仕組みやルールを整備し継続した活動が必要だということを念頭に対応を実施していきましょう。
法令の理解
ハラスメント法の遵守を行うなら最初に行うべきは、法令の理解です。本記事でも関連する法令をご紹介していますが、法令自体を読むことが苦手でもインターネット上には法令に関する解説記事が掲載されており、それらを参考にすることでも法令理解を進めることは可能です。その他にも厚生労働省が発信しているハラスメント防止に伴うガイドラインなども法令理解の参考になりますので、一度、確認しておきましょう。
ガイドラインの利用
法令遵守のためには、厚生労働省などが発行しているガイドラインを活用する方法もあります。厚生労働省が発表している「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」には、現在のハラスメントの発生状況などが記載されており、自社においてハラスメント対策を実施する際の参考になるデータも掲載されています。その他にも厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」なども自社の活動の参考になりますので確認をしておきましょう。
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
定期的な社内調査
社内でのハラスメント発生状況を定期的に確認することも大切です。アンケートの実施などにより、社内でハラスメントが起きていないかの確認やハラスメント防止活動の定着度合を確認していくことは法令遵守の上で大切なことだと理解し、情報の収集、早期発見を実施していきましょう。
外部相談窓口の設定
ハラスメントの早期発見や被害者の保護のために、社内だけではなく外部相談窓口を設定し相談できる環境も構築しておきましょう。社内の窓口に相談しずらいと感じる場合でも、外部であれば相談できる可能性があります。いつでも相談できる環境を作ることも早期発見に繋がる対策です。
社員教育の実施
法令遵守のためには、社員教育の実施と行動の定着化を実施することは必須の対策方法です。社員一人一人が意識してハラスメント行為を抑制することこそが、企業としての法令遵守の原則だということを理解し、継続した教育を実施していきましょう。
06Schooビジネスプランの特徴
Schooビジネスプランでは約8,500本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schooビジネスプランの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
schooビジネスプランは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約8,500本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.ハラスメント研修におすすめの授業
Schooではハラスメント研修に活用できる授業をご提供しています。ここでは、おすすめの授業をご紹介しますので、興味のある方はご確認ください。
パワハラ問題の多様な局面と判断要素
パワハラの問題はパワハラ防止法上の定義に該当する行為であれば、その後の処分や対応の回答が全て出てくるというものではなく、不法行為や労災認定基準にまで該当するかなど、その局面は多様的です。この授業ではまず、このようなパワハラが問題となる局面の多様性について解説をし、その後、パワハラか否かを判断する要素や考え方について紹介します。
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高井・岡芹法律事務所 弁護士
2004年早稲田大学卒業。2007年東京弁護士会登録。2011年経営法曹会議会員。企業側弁護士として、労働問題の解決に取り組む。中でもハラスメント等の問題社員対応、職場のLGBTの問題を専門とする。単著として『1冊でわかる!改正早わかりシリーズ パワハラ防止の実務対応』(労務行政)、共著として『知らないでは済まされない!LGBT実務対応Q&A―職場・企業、社会生活、学校、家庭での解決指針―』(民事法研究会)などがある。
ハラスメントへの管理職としての関わり方
この授業では近年のハラスメント事案の背景や、関連する法律の内容について紹介し、管理職がどうハラスメントと関わるケースがあるかについて解説します。
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株式会社Niesul(ニースル)代表取締役/社会保険労務士
大学卒業後、機械メーカー、コンサルティング会社を経て2010年にニースル社労士事務所を立ち上げ。以来、200社を超える社内制度づくり・働き方改善に関わる。 本音を言える場づくりを大切に、経営者・社員と「ともに」社内制度を作る参加型プロジェクト「みんなでつくる就業規則づくり」、ハラスメント防止のための研修など多数実施。 著書に『「社会人になるのが怖い」と思ったら読む 会社の超基本』がある。YOUTUBE「世界一わかりやすい就業規則」チャンネルを発信中。
ハラスメントのない職場を目指す 一人ひとり違うことを理解する
この授業では、ハラスメントの原因になり得る無意識の偏見や価値観の違いについて解説し、予防のために組織やチームが心がけるべきポイントについて紹介します。
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社会保険労務士法人グラース 代表
特定社会保険労務士、ハラスメント防止コンサルタント。ダイバーシティ(仕事と育児・介護の両立、多様な働き方、テレワーク導入、女性活躍、ハラスメント防止等)を専門領域としてコンサルティング、研修を多数実施。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業」検討会委員をはじめ、多くの公的委員、調査に加わる。
3.ハラスメントのない職場を目指す 一人ひとり違うことを理解するを無料視聴する
3.管理画面で受講者の学習状況を可視化できる
Schooビジネスプランには学習管理機能が備わっているため、研修スケジュールの作成を容易に行うことができます。さらに、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、レポート機能を使って学んだことを振り返る機会を作ることも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。
まず、Schooビジネスプランの管理画面を開き、「研修を作成するという」ページで作成した研修の研修期間を設定します。ここで期間を設定するだけで自動的に受講者の研修アカウントにも研修期間が設定されるため、簡単にスケジュールを組むことができます。
この、管理者側の管理ツールでは受講者がスケジュール通りに研修を受けているかを確認することができます。もし決められた研修をスケジュール通りに行っていない受講者がいれば注意したり、話を聞くことができるなど、受講者がしっかりスケジュールを守っているかを確認することができます。
07まとめ
本記事では、ハラスメント防止法に関する解説をしています。年々強化されるハラスメント防止法に関しての対応は、罰則規定の強化もあり企業としては必ず遵守したい内容です。本記事を参考に、自社における法令遵守の仕組みを構築していきましょう。
オンライン研修でハラスメント防止やアンガーマネジメントが学べる!
オンラインだから隙間時間でいつでも学べるスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など