アンガーマネジメントを効果的に行うには?研修方法やセルフ実践・資格について解説

アンガーマネジメントとは、怒りの感情をうまくコントロールすることです。怒ったときに、その感情をそのまま相手にぶつけてしまうことはデメリットばかりです。当記事では、アンガーマネジメントの効果や実践方法・講師に必要な資格について詳しく解説します。
01アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、「怒り」の感情とうまくつき合い賢くコントロールすることや、その手法です。 1970年代にアメリカで生まれた概念です。当時は家庭内暴力や軽犯罪者向けのものとされていましたが、現在では広く普及し企業の研修にも用いられるようになりました。 アンガーマネジメントは、「怒ること」を制御しようとするのではなく、怒りの感情が発生したときの「怒りとの向き合い方」を変えていくための取り組みです。怒りの感情を適切にコントロールできれば、人間関係が円滑になるだけでなく、気持ちに余裕をもって過ごせるようになるでしょう。
人はなぜ感情が乱されるのか
怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」入門というオンライン学習サービスSchooの授業において、「人はなぜ感情が乱されるのか」を日本リーダーズ学会代表理事の嶋津良智先生は以下のように解説しています。
「〜あるべき」という期待・価値観・思い込みが怒りの原因です。自分の中の"普通(べき・当たり前)"を相手も普通に理解しているという勘違いが、怒りの原因になります。人は誰しも経験によって培われた「〜あるべき」というマイルールを持っているのです。そして、人は自分の「〜あるべき」というマイルールが守られないと、感情が乱されます。
マイルールの主な例として、以下を参考にしてみてください
- ・雑用は後輩がやって当たり前
- ・上司は部下に奢るべき
- ・家事は奥さん(女性)がやるべき
- ・少し体調が悪くても出社すべき
怒りは対象者が自分に与えているものだと思いがちです。しかし、元を辿れば相手の好意や言葉に対して、自分自身が「怒る」・「悩む」・「落ち込む」という意味づけをして、自ら発生させている感情なのです。起きた出来事に対して、自らが感情を意味づけしていることを理解すると、アンガーマネジメントしやすくなります。
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日本リーダーズ学会代表理事 リーダーズアカデミー代表
人づくり、組織づくりに特化をした、スークール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。Iリーダー育成の専門家として世界15都市でビジネスセミナーを開催。延べ50000人以上のリーダー育成に携わる。 シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計は28冊で150万部を超える。
02アンガーマネジメントの効果
自分の怒りをコントロールできるようになることで、自分だけでなく周囲にも良い影響をもたらします。ここでは、アンガーマネジメントがもたらす効果について詳しく解説します。
良好な人間関係の構築
怒りをコントロールできることで、周囲と良好な人間関係を構築できます。 怒りの感情をそのまま相手にぶつけてしまうと、ぶつけられた相手はストレスを感じてしまいます。そうなれば、相手とのコミュニケーションはギクシャクしてしまいます。怒りを抑え、自分の気持ちを分かりやすく相手に伝えることで、相手も素直に受けとめてくれるようになるでしょう。
セルフコントロール力の向上
怒りの感情をうまく扱えるようになることで、感情のセルフコントロール力が向上します。 相手とコミュニケーションをとるなかで、思わず感情的になってしまった経験はないでしょうか。後から「言わなくても良い発言をしてしまった」と後悔してしたとしても、発言を取り消すことはできません。 アンガーマネジメントができるようになると、自分の感情をコントロールし、失言を減らせるようになるでしょう。
生産性の向上
怒りの感情をコントロールできるようになることで、生産性が向上します。 集中して取り組まなくてはいけない作業があっても、ほかのことに対して怒りの感情を抱いてしまうと、頭のなかは作業どころでなくなってしまいます。負の感情に左右されてしまうと、作業効率が悪くなります。 怒りの感情をうまく扱えるようになることで、感情の起伏を抑え作業に集中できるようになるでしょう。
03アンガーマネジメントの実践方法
怒りをコントロールするためには、いくつかのテクニックがあります。ここでは、アンガーマネジメントの実践方法を解説します。他者と接する際の意識を変えることで、自分の怒りとうまく向き合いましょう。
タイムアウト(その場を離れる)
タイムアウトは、少しの間を置くというアンガーマネジメントの手法になります。一般的に普及しているアンガーマネジメントの手法で「6秒待つ」というものがありますが、このタイムアウトと同義です。 怒りが生じたとき、そのピークは6秒だといわれています。衝動的な怒りは、暴力や暴言に現れてしまい相手を傷つけてしまう恐れがあります。怒りを感じたら、まずは6秒待つことで衝動的な行動を制御することができるのです。怒りを感じた時は、深呼吸で心を落ち着かせたり、一旦その場を離れるといった行動をとると良いでしょう。
ストップシンキング(思考を止める)
怒りの感情を客観視できた際に、思考を止めて怒りの感情を制御する手法です。頭の中に自分が喜びを感じた瞬間や幸福を感じた出来事を常に用意しておいて、感情が乱されたタイミングで思考を止め、嬉しかった時のことや幸福を感じた瞬間を思い浮かべることで怒りの思考を停止させることができます。
スケールテクニック(レベルをつける)
怒りにレベルをつけるという手法がスケールテクニックです。怒りの感情を持ってしまった時に、過去に起きた怒りの事象と比較して、現在の怒りの感情がどれくらいのレベルかを数値化します。そうすることによって、突発的に感情に任せて発言することもなく、間を置くことができ、過去の事象と対比した際にレベルが低ければ怒ることではないという自分の中で結論になることもあるでしょう。
プレイロール(理想の人物を演じる)
自分自身が尊敬している上司や先輩を想定して、その人だったらどう思うか・対処するかを考え、現状と向き合う手法になります。ある意味で自分の思考を止めているので、先述したストップシンキングに近いアンガーマネジメントの手法と言えるかもしれません。
リフレーム(受け取り方を変える)
受け取り方のメガネを変えるという手法がリフレームです。人は誰しも自分のメガネ(フィルター)を通して物事を見ています。違うメガネをかけたら、この事象はどう見えるのかを考えてみるというのがリフレームの具体的な方法になります。
ポジティブフォーカス
ポジティブフォーカスは、感情が乱されたときに、人の良い側面に焦点を当てるというアンガーマネジメントの手法です。例えば、「あの人の発言は許せないけど、あの人は後輩に優しい側面を持っている」というように、人の良い部分や尊敬できる部分を思い浮かべて、怒りの感情を抑える手法です。
キープメンター
感情マネジメントをしていくには、怒りの感情を溜めないことが非常に重要です。つまり、感情を定期的に吐き出すことによって、怒りの感情にならないように調整するのがキープメンターです。例えば、ブログに感情が乱された出来事を書いたり、仲のいい先輩に相談したりといったように、怒りの感情が爆発する前に吐き出す手法をキープメンターと言います。
アンガーログ
アンガーログは、怒りの記録をとっていくという手法です。怒りのログを記録していくと、自分が怒るパターン・傾向を掴むことができます。自分がどのようなことで怒りやすいかを分析することで、その事象が起こらないように事前に手を回しておくことが可能になります。また、自分が何で怒りやすいかを客観視できているので、その場面に遭遇してしまっても「このパターンか」と一旦落ち着くこともできるようになるでしょう。
アクトカーム
アクトカームは、怒らないと決めるという手法です。例えば、今日1日は絶対に怒らないと決めて、何が起こっても怒らないというのがアクトカームです。この手法は、絶対に怒らないという誓いを自分で守り通すことができれば、非常に強力な手法となります。特に怒りやすい人ほど、アクトカームを用いて耐性をつけていくと、自分の「〜あるべき」が緩和されていき、怒りにくいようになることもできます。
04アンガーマネジメントの研修方法
怒りのままに相手を注意しても、部下は素直に受けとることができないでしょう。 アンガーマネジメントができるようになることで、部下の育成や指導にも活かせます。そのため、アンガーマネジメントは企業の研修としても注目を集めています。ここでは、企業で実践できるアンガーマネジメントの研修について詳しく解説します。
座学
研修方法として、アンガーマネジメントの効果などを伝える座学が挙げられます。 怒りの感情が与えるデメリットやメリットを知らない方も多いのではないでしょうか。座学として、怒りの感情をコントロールする大切さを伝えることで、組織全体で「怒りをコントロールしていこう」といった風潮が生まれます。 アンガーマネジメントの大切さを共通認識としてもっておくことで、怒りのままに発言している人がいると互いに注意し合えるようになります。
ロールプレイングの実施
怒りをコントロールするといっても、どのように相手に対応したら良いか分からない方もいるでしょう。 相手を怒ることがなくなっても、トゲがあるような発言をしてしまったり、怒りが表情に出てしまう恐れがあります。ロールプレイングを実施し、実際の場面を想定することで、怒りをコントロールするイメージをつけましょう。 また、ロールプレイングの設定で相手の状況や背景が分かることで、実際に同じような状況が発生しても「相手はロールプレイングで実践したような状況に置かれているのかもしれない」と配慮した考えができるようになります。
怒り項目のチェック
自分が怒るときの状況を整理することで、どのような場合に怒りの感情が生まれるのか把握できるようになります。日本アンガーマネジメント協会によると、怒りのタイプは大きく6つに分かれるといわれています。
- ・公明正大:正義感が強く、規則や社会規範から外れた行動に怒りを示す
- ・博学多才:完璧主義であるため、優柔不断な人や些細なミスが目立つ人に怒りを示す
- ・威風堂々:自尊心が高いため、周囲から低い評価や雑な扱いを受けることに怒りを示す
- ・天真爛漫:考えを素直に表現できるため、意思表示がはっきりしない人に怒りを示す
- ・外柔内剛:自分の意思を強くもつため、合わない考え方や価値観に怒りを示す
- ・用心堅固:慎重で警戒心が強いため、自分の領域に踏み入れられると怒りを示す
怒りのタイプは無料で診断できるため、関心のある方は自分の怒りのタイプを確かめてみてはいかがでしょうか。
05アンガーマネジメント講師に必要な資格とは
アンガーマネジメントは企業の研修でも実践されるほど、需要が高まっています。 アンガーマネジメントを講師として教えるためには、資格を取得する必要があります。アンガーマネジメントに関する資格は複数存在します。講座の受講や認定試験に合格することで取得が可能です。 ここでは、アンガーマネジメントの講師になるために必要な資格を解説します。
アンガーマネジメントファシリテーター
アンガーマネジメントファシリテーターとは、日本アンガーマネジメント協会が認定する怒りの感情に関する専門的な資格です。 資格を取得するには、同協会が主催するアンガーマネジメントファシリテーター養成講座を受講し、試験に合格する必要があります。アンガーマネジメントファシリテーターの資格があれば、怒りの専門家として講座やセミナーを開催したり、企業から協会に依頼があった研修に講師として応募することができます。
アンガーカウンセラー
アンガーカウンセラーは、日本メディカル心理セラピー協会(JAAMP)が認定する資格です。 アンガーマネジメントに関する基本的な知識を有していることが必要であり、独学でも取得可能です。アンガーカウンセラーは、怒りの専門家であると同時にカウンセリング技術の習得を重要視しているため「アンガーカウンセラー」として活躍できます。 一度でも心理学について学んだことがある人は、身につけやすい資格でしょう。
アンガーコントロール士
アンガーコントロール士とは、日本インストラクター技術協会(JIA)が認定する資格です。 怒りをコントロールするための基本知識を身につけ、アンガーコントロール士認定試験に合格すると、取得できるようになります。取得後は、アンガーマネジメントの専門家として、講師としての活動が始められます。
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■資料内容抜粋
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

06アンガーマネジメントの研修ならSchoo for Bussiness
Schoo for Bussinessでは約9,000本の授業をご用意しており、アンガーマネジメントの研修にも対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schooビジネスプランの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
schooビジネスプランは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約9,000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.自発的に学ぶ人材を育成できるSchooの講座
上記でも説明したように、Schooでは約9,000本もの動画を用意している上に、毎日新しいトピックに関する動画が配信されるため、研修に加えて自ら学び、成長する人材の育成が可能です。近年の社会のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、企業を取り巻く環境が刻々と変化しています。それに伴い、社員の業務内容や求められるスキルも早いスパンで変化しています。このような予測のつかない時代の中で会社の競争力を維持するためには、社員一人一人が自発的に学び、成長させ続けることができる環境、いわば「学び続ける組織」になることが必要です。
Schooビジネスプランの講座では、体系的な社員研修だけでなく、自己啓発を通じて自発的に学び、成長できる人材を育成することが可能です。
ここでは、人材育成に活用できるSchooの講座をご紹介します。
アンガーマネジメントを活用したコミュニケーション術

喜怒哀楽という人間の基本感情の中でも、怒りは人に様々な形で影響を与えるものです。 怒ってしまって人との関係が悪くなったり、人生やキャリアに大きな傷跡を残してしまうこともあります。 この授業では、「アンガーマネジメント」というアメリカ生まれの怒りをマネジメントする手法を軸に、皆さんのコミュニケーションがもっと円滑にするための考え方やノウハウをお伝えします。
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日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長
命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。 情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。 競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。 2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。
アンガーマネジメントを活用したコミュニケーション術を無料視聴する
価値観が多様な時代に学ぶ「アンガーマネジメント」のキホン

そもそも「アンガーマネジメント」とはなにかや、学び習得するとどんな効果があるのか、怒りをコントロールするとはどういうことなのか、を学んでいきます。 実践の前の基礎編として、知っている方も学び直しの意味も込めて一緒に受講していきましょう。
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(社)日本リーダーズ学会代表理事 リーダーズアカデミー代表
人づくり、組織づくりに特化をした、スークール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。IT系企業に入社後、同期100名の中でトップセールスとなり、最年少営業部長に抜擢。 就任3か月で担当部門の成績が全国No,1に。28歳で独立、2004年株式上場(IPO)を果たす。 現在は、講演・企業研修・コンサルティングを行う傍ら、顧問・社外役員として経営に参画。リーダー育成の専門家として世界15都市でビジネスセミナーを開催。
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3.受講者の学習状況を把握し、人材育成に役立てることができる
Schooビジネスプランには学習管理機能が備わっているため、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、受講者がどんな内容の講座をどれくらいの長さ見ていたのかも把握することができるため、社員のキャリアプランの傾向を掴むことも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。

管理画面では受講者それぞれの総受講時間を管理者が確認できるようになっており、いつ見たのか、いくつの講座を見たのか、どのくらいの時間見たのか、ということが一目でわかるようになっています。

さらに、受講履歴からは受講者がどのような分野の動画を頻繁に見ているかが簡単にわかるようになっており、受講者の興味のある分野を可視化することが可能です。これにより、社員がどのようなキャリアプランを持っているのかを把握できるだけでなく、社員のモチベーションを高めながら人材育成するためのヒントを得ることができます。
さらに、社員に自己啓発を目的として受講してもらっている場合、社員がどのような内容の授業を受講する傾向があるのかを把握できるため、社員のキャリアプランを把握することができます。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

07まとめ
生活していると、あらゆる場面で怒りを感じてしまうことがあるでしょう。しかし、怒りの感情を表に出してしまうことは、自分にも周囲にも悪影響を及ぼしてしまいます。怒りの感情とうまく向き合い、コントロールできるようになりましょう。