公開日:2021/06/30
更新日:2023/04/19

アンガーマネジメントを効果的に行うには?研修方法やセルフ実践・資格について解説

アンガーマネジメントを効果的に行うには?研修方法やセルフ実践・資格について解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

アンガーマネジメントとは、怒りの感情をうまくコントロールすることです。怒ったときに、その感情をそのまま相手にぶつけてしまうことはデメリットばかりです。当記事では、アンガーマネジメントの効果や実践方法・講師に必要な資格について詳しく解説します。

 

01アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、「怒り」の感情とうまくつき合い賢くコントロールすることや、その手法です。 1970年代にアメリカで生まれた概念です。当時は家庭内暴力や軽犯罪者向けのものとされていましたが、現在では広く普及し企業の研修にも用いられるようになりました。 アンガーマネジメントは、「怒ること」を制御しようとするのではなく、怒りの感情が発生したときの「怒りとの向き合い方」を変えていくための取り組みです。怒りの感情を適切にコントロールできれば、人間関係が円滑になるだけでなく、気持ちに余裕をもって過ごせるようになるでしょう。

 

02人はなぜ感情が乱されるのか

怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」入門というオンライン学習サービスSchooの授業において、「人はなぜ感情が乱されるのか」を日本リーダーズ学会代表理事の嶋津良智先生は以下のように解説しています。

「〜あるべき」という期待・価値観・思い込みが怒りの原因です。自分の中の"普通(べき・当たり前)"を相手も普通に理解しているという勘違いが、怒りの原因になります。人は誰しも経験によって培われた「〜あるべき」というマイルールを持っているのです。そして、人は自分の「〜あるべき」というマイルールが守られないと、感情が乱されます。

マイルールの主な例として、以下を参考にしてみてください

  • ・雑用は後輩がやって当たり前
  • ・上司は部下に奢るべき
  • ・家事は奥さん(女性)がやるべき
  • ・少し体調が悪くても出社すべき

怒りは対象者が自分に与えているものだと思いがちです。しかし、元を辿れば相手の好意や言葉に対して、自分自身が「怒る」・「悩む」・「落ち込む」という意味づけをして、自ら発生させている感情なのです。起きた出来事に対して、自らが感情を意味づけしていることを理解すると、アンガーマネジメントしやすくなります。

  • 日本リーダーズ学会代表理事 リーダーズアカデミー代表

    人づくり、組織づくりに特化をした、スークール形式では日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』を経営。Iリーダー育成の専門家として世界15都市でビジネスセミナーを開催。延べ50000人以上のリーダー育成に携わる。 シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計は28冊で150万部を超える。
 

03怒りの感情がもたらすデメリット

衝動的に発生した怒りの感情を相手に伝えてしまうと、人間関係が悪化する恐れがあります。 それだけでなく、状況によってはパワーハラスメントになる危険性もあるでしょう。特にマネージャーや部長職といった部下を指導する立場の人は注意が必要です。 ここでは、怒りの感情がもたらすデメリットについて詳しく解説します。

モチベーションの低下

怒りの感情は、相手のモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。 部下に指導するにあたり、「教えた通りにできない」「指示通り動いてくれない」といったことで、相手に怒りを感じてしまうかもしれません。しかし、怒りをそのままぶつけてしまうと育成対象者のモチベーションを低下させてしまいます。 相手に怒る前に、まずは相手に伝わる説明となっていたかどうか自分の言動を見直しましょう。

ストレスの増加

怒ること自体が、ストレスの増加につながります。 それだけでなく、感情的に怒られた側もストレスを感じてしまいます。互いのストレスから関係がギクシャクしてくると、スムーズにコミュニケーションがとれず、さらにストレスが蓄積するという悪循環に陥ってしまいます。 怒りの感情で負の連鎖を生み出さないように注意しましょう。

行動の萎縮

感情的に怒ってしまうと、相手を萎縮させてしまう恐れがあります。 怒られることで、相手は怒られないように動くことだけに気を取られ、顔色を伺うようになってしまいます。相手が過剰に気を使ってしまうことで、円滑なコミュニケーションがとれなくなるのです。 相手の言動に対して怒りを感じたとしても、声は荒げず注意を呼びかけるようにしましょう。

 

04アンガーマネジメントの効果

自分の怒りをコントロールできるようになることで、自分だけでなく周囲にも良い影響をもたらします。ここでは、アンガーマネジメントがもたらす効果について詳しく解説します。

良好な人間関係の構築

怒りをコントロールできることで、周囲と良好な人間関係を構築できます。 怒りの感情をそのまま相手にぶつけてしまうと、ぶつけられた相手はストレスを感じてしまいます。そうなれば、相手とのコミュニケーションはギクシャクしてしまいます。怒りを抑え、自分の気持ちを分かりやすく相手に伝えることで、相手も素直に受けとめてくれるようになるでしょう。

セルフコントロール力の向上

怒りの感情をうまく扱えるようになることで、感情のセルフコントロール力が向上します。 相手とコミュニケーションをとるなかで、思わず感情的になってしまった経験はないでしょうか。後から「言わなくても良い発言をしてしまった」と後悔してしたとしても、発言を取り消すことはできません。 アンガーマネジメントができるようになると、自分の感情をコントロールし、失言を減らせるようになるでしょう。

生産性の向上

怒りの感情をコントロールできるようになることで、生産性が向上します。 集中して取り組まなくてはいけない作業があっても、ほかのことに対して怒りの感情を抱いてしまうと、頭のなかは作業どころでなくなってしまいます。負の感情に左右されてしまうと、作業効率が悪くなります。 怒りの感情をうまく扱えるようになることで、感情の起伏を抑え作業に集中できるようになるでしょう。

 

05怒りのタイプを知る「アンガーマネジメント診断」

怒りのコントロールと一言で言っても、怒りを感じるきっかけは人によって異なります。そこで、一般社団法人任本アンガーマネジメント協会が考案した「アンガーマネジメント診断」を行うことで、自分の怒りのタイプを把握することができるので、ここで紹介します。

怒りのタイプを把握する12の質問

「アンガーマネジメント診断」では、以下の12の質問に点数で応えます。

  • 1. 世の中には尊重すべき規律があり、人はそれに従うべきだ
  • 2. 物事は納得いくまで突き詰めたい
  • 3. 自分に自信があるほうだ
  • 4. 人の気持ちを誤解することがよくある
  • 5. なかなか解消できない、強いコンプレックスがある
  • 6. リーダー的な役割が自分に合っていると思う
  • 7. たとえ小さな不正でも見逃されるべきではない
  • 8. 好き嫌いがはっきりしているほうだ
  • 9. 自分はもっと評価されていいと思う
  • 10. 自分で決めたルールを大事にしている
  • 11. 人の言うことをそのまま素直に聞くのが苦手だ
  • 12. 言いたいことをはっきりと主張すべきだ

点数

  • まったくそう思わない→1点
  • そう思わない→2点
  • どちらかと言うとそう思わない→3点
  • どちらかと言うとそう思う→4点
  • そう思う→5点
  • すごくそう思う→6点

計算式と診断結果は以下の通りです。

  • 1+7 の合計点が1番高い→ 「公明正大」タイプ
  • 2+8 の合計点が1番高い→ 「博学多才」タイプ
  • 3+9 の合計点が1番高い→ 「威風堂々」タイプ
  • 4+10 の合計点が1番高い→ 「外柔内剛」タイプ
  • 5+11 の合計点が1番高い→ 「用心堅固」タイプ
  • 6+12 の合計点が1番高い→ 「天真爛漫」タイプ

6つの怒りのタイプと特徴

前述の「アンガーマネジメント診断」での結果で出る怒りのタイプについてそれぞれ解説します。

公明正大タイプ

正義感が強く、曲がったことが許せないタイプです。マナー違反や社会の規範から外れたことに対して怒りを感じやすく、人をジャッジしようとしたり、常に正そうとしたりして、物事に介入しすぎる面があります。

博学多才タイプ

向上心が高く、完璧主義な点があるため、物事に白黒をつけないと気が済まないタイプです。はっきりしないことや人に対してストレスを溜めやすく、自分にも周りにも厳しくしてしまう傾向があります。

威風堂々タイプ

自尊心が高く、自分の価値観や考え方に対して誇りを持っています。そのため、軽んじられたり、ネガティブな評価を受けたり、自分の思いどおりにならないことがあると不満やストレスを抱えてしまいます。

外柔内剛タイプ

表向きの穏やかな印象とは裏腹に、自分の意思や決めたルールを重んじるため、ほかの意見や価値観には目を向けない傾向があります。我慢強い一面がありますが、度が過ぎたり自分のルールに反している出来事があるとストレスを感じることがあります。

用心堅固タイプ

とても慎重派で、人とも距離をとって、時間をかけて吟味し、交遊するタイプです。プライベートな領域に無断で他人が踏み込むとストレスや怒りを感じてしまいます。

天真爛漫タイプ

自分の考えや感情を素直に伝えることができ、しがらみなく自由に行動したいタイプです。 意思表示をはっきりできない人や思いどおりに行動できない人に対してイライラしがちで、他人によって行動が制限されるとストレスを感じてしまいます。

 

06アンガーマネジメントの実践方法

怒りをコントロールするためには、いくつかのテクニックがあります。ここでは、アンガーマネジメントの実践方法を解説します。他者と接する際の意識を変えることで、自分の怒りとうまく向き合いましょう。

タイムアウト(その場を離れる)

タイムアウトは、少しの間を置くというアンガーマネジメントの手法になります。一般的に普及しているアンガーマネジメントの手法で「6秒待つ」というものがありますが、このタイムアウトと同義です。 怒りが生じたとき、そのピークは6秒だといわれています。衝動的な怒りは、暴力や暴言に現れてしまい相手を傷つけてしまう恐れがあります。怒りを感じたら、まずは6秒待つことで衝動的な行動を制御することができるのです。怒りを感じた時は、深呼吸で心を落ち着かせたり、一旦その場を離れるといった行動をとると良いでしょう。

ストップシンキング(思考を止める)

怒りの感情を客観視できた際に、思考を止めて怒りの感情を制御する手法です。頭の中に自分が喜びを感じた瞬間や幸福を感じた出来事を常に用意しておいて、感情が乱されたタイミングで思考を止め、嬉しかった時のことや幸福を感じた瞬間を思い浮かべることで怒りの思考を停止させることができます。

スケールテクニック(レベルをつける)

怒りにレベルをつけるという手法がスケールテクニックです。怒りの感情を持ってしまった時に、過去に起きた怒りの事象と比較して、現在の怒りの感情がどれくらいのレベルかを数値化します。そうすることによって、突発的に感情に任せて発言することもなく、間を置くことができ、過去の事象と対比した際にレベルが低ければ怒ることではないという自分の中で結論になることもあるでしょう。

プレイロール(理想の人物を演じる)

自分自身が尊敬している上司や先輩を想定して、その人だったらどう思うか・対処するかを考え、現状と向き合う手法になります。ある意味で自分の思考を止めているので、先述したストップシンキングに近いアンガーマネジメントの手法と言えるかもしれません。

リフレーム(受け取り方を変える)

受け取り方のメガネを変えるという手法がリフレームです。人は誰しも自分のメガネ(フィルター)を通して物事を見ています。違うメガネをかけたら、この事象はどう見えるのかを考えてみるというのがリフレームの具体的な方法になります。

ポジティブフォーカス

ポジティブフォーカスは、感情が乱されたときに、人の良い側面に焦点を当てるというアンガーマネジメントの手法です。例えば、「あの人の発言は許せないけど、あの人は後輩に優しい側面を持っている」というように、人の良い部分や尊敬できる部分を思い浮かべて、怒りの感情を抑える手法です。

キープメンター

感情マネジメントをしていくには、怒りの感情を溜めないことが非常に重要です。つまり、感情を定期的に吐き出すことによって、怒りの感情にならないように調整するのがキープメンターです。例えば、ブログに感情が乱された出来事を書いたり、仲のいい先輩に相談したりといったように、怒りの感情が爆発する前に吐き出す手法をキープメンターと言います。

アンガーログ

アンガーログは、怒りの記録をとっていくという手法です。怒りのログを記録していくと、自分が怒るパターン・傾向を掴むことができます。自分がどのようなことで怒りやすいかを分析することで、その事象が起こらないように事前に手を回しておくことが可能になります。また、自分が何で怒りやすいかを客観視できているので、その場面に遭遇してしまっても「このパターンか」と一旦落ち着くこともできるようになるでしょう。

アクトカーム

アクトカームは、怒らないと決めるという手法です。例えば、今日1日は絶対に怒らないと決めて、何が起こっても怒らないというのがアクトカームです。この手法は、絶対に怒らないという誓いを自分で守り通すことができれば、非常に強力な手法となります。特に怒りやすい人ほど、アクトカームを用いて耐性をつけていくと、自分の「〜あるべき」が緩和されていき、怒りにくいようになることもできます。

 

07アンガーマネジメントの研修方法

怒りのままに相手を注意しても、部下は素直に受けとることができないでしょう。 アンガーマネジメントができるようになることで、部下の育成や指導にも活かせます。そのため、アンガーマネジメントは企業の研修としても注目を集めています。ここでは、企業で実践できるアンガーマネジメントの研修について詳しく解説します。

座学

研修方法として、アンガーマネジメントの効果などを伝える座学が挙げられます。 怒りの感情が与えるデメリットやメリットを知らない方も多いのではないでしょうか。座学として、怒りの感情をコントロールする大切さを伝えることで、組織全体で「怒りをコントロールしていこう」といった風潮が生まれます。 アンガーマネジメントの大切さを共通認識としてもっておくことで、怒りのままに発言している人がいると互いに注意し合えるようになります。

ロールプレイングの実施

怒りをコントロールするといっても、どのように相手に対応したら良いか分からない方もいるでしょう。 相手を怒ることがなくなっても、トゲがあるような発言をしてしまったり、怒りが表情に出てしまう恐れがあります。ロールプレイングを実施し、実際の場面を想定することで、怒りをコントロールするイメージをつけましょう。 また、ロールプレイングの設定で相手の状況や背景が分かることで、実際に同じような状況が発生しても「相手はロールプレイングで実践したような状況に置かれているのかもしれない」と配慮した考えができるようになります。

怒り項目のチェック

自分が怒るときの状況を整理することで、どのような場合に怒りの感情が生まれるのか把握できるようになります。日本アンガーマネジメント協会によると、怒りのタイプは大きく6つに分かれるといわれています。

  • ・公明正大:正義感が強く、規則や社会規範から外れた行動に怒りを示す
  • ・博学多才:完璧主義であるため、優柔不断な人や些細なミスが目立つ人に怒りを示す
  • ・威風堂々:自尊心が高いため、周囲から低い評価や雑な扱いを受けることに怒りを示す
  • ・天真爛漫:考えを素直に表現できるため、意思表示がはっきりしない人に怒りを示す
  • ・外柔内剛:自分の意思を強くもつため、合わない考え方や価値観に怒りを示す
  • ・用心堅固:慎重で警戒心が強いため、自分の領域に踏み入れられると怒りを示す

怒りのタイプは無料で診断できるため、関心のある方は自分の怒りのタイプを確かめてみてはいかがでしょうか。

 
参考:無料アンガーマネジメント診断
 

08アンガーマネジメント講師に必要な資格とは

アンガーマネジメントは企業の研修でも実践されるほど、需要が高まっています。 アンガーマネジメントを講師として教えるためには、資格を取得する必要があります。アンガーマネジメントに関する資格は複数存在します。講座の受講や認定試験に合格することで取得が可能です。 ここでは、アンガーマネジメントの講師になるために必要な資格を解説します。

アンガーマネジメントファシリテーター

アンガーマネジメントファシリテーターとは、日本アンガーマネジメント協会が認定する怒りの感情に関する専門的な資格です。 資格を取得するには、同協会が主催するアンガーマネジメントファシリテーター養成講座を受講し、試験に合格する必要があります。アンガーマネジメントファシリテーターの資格があれば、怒りの専門家として講座やセミナーを開催したり、企業から協会に依頼があった研修に講師として応募することができます。

アンガーカウンセラー

アンガーカウンセラーは、日本メディカル心理セラピー協会(JAAMP)が認定する資格です。 アンガーマネジメントに関する基本的な知識を有していることが必要であり、独学でも取得可能です。アンガーカウンセラーは、怒りの専門家であると同時にカウンセリング技術の習得を重要視しているため「アンガーカウンセラー」として活躍できます。 一度でも心理学について学んだことがある人は、身につけやすい資格でしょう。

アンガーコントロール士

アンガーコントロール士とは、日本インストラクター技術協会(JIA)が認定する資格です。 怒りをコントロールするための基本知識を身につけ、アンガーコントロール士認定試験に合格すると、取得できるようになります。取得後は、アンガーマネジメントの専門家として、講師としての活動が始められます。


 

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・自己啓発への活用方法 など

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09まとめ

生活していると、あらゆる場面で怒りを感じてしまうことがあるでしょう。しかし、怒りの感情を表に出してしまうことは、自分にも周囲にも悪影響を及ぼしてしまいます。怒りの感情とうまく向き合い、コントロールできるようになりましょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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