公開日:2022/10/24
更新日:2024/03/18

人事考課制度とは?人事評価との違い・目的・効果的に運用するポイントを解説

人事考課制度とは?人事評価との違い・目的・効果的に運用するポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

 

01人事考課制度とは

人事考課制度とは、組織内で従業員の業績や能力を評価し、それに基づいて昇進や報酬の決定、キャリア開発などの人事決定を行う制度のことを指します。この制度は、従業員のパフォーマンスを客観的に評価し、組織の目標達成や成長に向けた方向性を示すために利用されます。人事考課制度の設計には、評価基準や評価方法、評価者の選定、評価結果のフィードバックや改善プロセスなどが含まれます。適切に設計された人事考課制度は、組織と従業員の両方にとって公平で透明性のある評価を提供し、業績向上やモチベーションの向上に貢献します。

 

02人事評価制度との違い

人事考課と人事評価は、基本的に同じ意味で使われることが多いです。ただし厳密には、人事考課は「成績の査定」というニュアンスが強い一方で、人事評価には、360度評価のように直接的に成績の優劣を決める以外の評価も含まれます。すなわち、両社を比較した場合には人事評価の方が広義になるといえるでしょう。

それぞれの言葉の意味を簡単にまとめると以下のようになります。

  • 人事考課
  • ・一定の基準に基づき、成績の査定として評価される。
  • ・従業員の待遇面(賃金や昇進等)を決めるための評価となる。

  • 人事評価
  • ・従業員の能力・業績面や人柄に対する総合的な評価。
  • ・直属の上司だけでなく、同僚や後輩からの評価も含まれることがある。
  • ・待遇面を決めるためのものではない。

人事考課は待遇に影響する重要な判断材料となるため、一定の基準に基づき客観的な評価を直属の上司が行います。また、人事評価・考課に関する情報は、経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」において個人情報保護法上の個人情報とされます。

 

03人事考課制度の目的

人事考課制度の目的は、以下の3点です。

  • ・公平な評価を行い、社員間の不公平感をなくす
  • ・従業員のモチベーションをアップさせる
  • ・部下に的確なフィードバックを行い、人材を育成する

例えば、会社への貢献度が高い社員には多くの報酬を与え、逆に貢献度が低い社員には昇給のスピードを遅くする等、待遇に違いを設けることができます。このように待遇の違いを決めるのを、上司が主観で評価した結果で決めてしまうと従業員のモチベーションが低下してしまいます。そのため、人事考課制度では一定の基準を基に部下を評価します。また、事前に評価の基準を定めているため、部下に対してフィードバックを行う際に、「この項目ができていなかった」のように、的確に足りない部分について伝えることができます。総じて、このような目的を達成するために、人事考課制度を利用する企業が多いです。

 

04従業員の評価は大きく分けて2つの軸で見える化する

従業員の評価をする際は「業務遂行能力・成績」と「態度・意欲」の2つの軸で評価します。「業務遂行能力・成績」は結果の部分、「態度・意欲」は過程の部分に対する評価とも言えます。1つの軸でのみ評価すると、偏った人材ばかりが評価される組織となってしまいます。それぞれの評価軸について、詳しく見ていきましょう。

評価軸1.業務遂行能力・成績

考課の対象となる期間内に、どの程度目標を達成できたのかを評価します。売上額や新規契約件数等を目標として設定しておき、考課期間後に達成率はどの程度だったかを評価します。定量的な指標となり、誰から見ても基準が明確となるので、公平に判断しやすい評価軸となります。ただし、出ている結果のみでの判断となるので、社会情勢によって特定の商品の販売がしづらくなった時や特定の業界への販売が難しい時には、評価軸2の項目でその結果がでるまでの過程について評価する部分を増やす等配慮が必要です。

評価軸2.態度・意欲

勤務態度や意欲は、成績の部分とは違い数値化できないため、上司によって評価軸が大きくずれる可能性があります。それを防ぐために、具体的にどの部分をどの程度の達成度で評価するのかを明確に最初に決めておく必要があります。例えば、「業務の際に、社内外の関係者と積極的に折衝し、自ら解決を図ることができるか?」等、なるべく具体的に明文化し、社内規定に記載しておく必要があります。明文化せずに、あいまいな基準しか記載していないと、上司が主観で部下を評価してしまうようになってしまうかもしれません。

評価軸3.勤怠実績

勤怠実績も人事考課の対象とされており、遅刻・早退・欠勤回数等が多ければ減点されます。勤怠実績は減点方式での評価対象とされるのが一般的です。

 

05効果的な人事考課制度を構築する際に重要な3つのポイント

人事考課制度は従業員の待遇面を決める大切な指標となります。 そのため、構築する際にはあらかじめ内容を明確に社内規定に明記する、従業員に周知する方法に気を遣う等、注意すべきポイントがあります。

1.評価項目や方法を明確にする

人事考課において上司の主観による判断とされないように、あらかじめ細かく評価項目を設定しておきましょう。また、性別や年齢、見た目、雇用形態や勤続年数等、個人の努力で変えられない部分での評価をされないようにする必要があります。この「個人の努力で変えられない部分で評価しないこと」については、とても重要な部分となるため、社内規定に記載しておくだけでなく、管理職研修や業務の際に事前に評価者となる人に教育しておく必要があります。この点を管理職が十分理解していないと「新人のくせに、努力が足りていない」「中途社員だから、現場を理解できていない」「美人だから営業成績がいいだけ」等の発言を行い、ハラスメントとなる可能性もあります。

2.従業員に明確な目的や方法を周知する

従業員に対しても、人事考課制度について周知する必要があります。評価方法や考課対象となる期間がいつなのか、評価項目に何が設定されているのか、誰が評価者となるのか等を従業員に十分に理解してもらう必要があるためです。周知の方法は社内ネットに掲示する等、従業員が見たいときに自分でいつでもアクセスできるような形で周知するのが望ましいです。

3.評価対象期間のみを適切に評価する

考課の対象となる期間内の実績でのみ評価することが重要です。「今年は優れた実績を収めたが、前年の営業成績が悪すぎたから平均的な評価に留める」、「前年の達成率が優れていたため、今年達成できていない分も大目に見る」等、評価の対象となる期間が不明確だと、社員のモチベーションの低下や不和に繋がります。あくまで考課期間内の実績に基づいた評価を実施してください。

 

06効果的な人事考課制度の構築により期待できること3つ

人事考課制度には、評価をもとにそれぞれの従業員に適切な待遇を反映させるだけでなく、従業員のモチベーショアップや人材の育成等の組織の成長につながる様々な効果が期待できます。

1.従業員のモチベーションが上がる

「グループで協力して仕事に取り組めたか」「新規顧客獲得のための営業活動を行えたか」等の判断基準としてわかりやすい指標を人事考課とすると、「この項目で評価されるからもっと頑張ろう」と従業員のモチベーションがアップします。指標がわかるので、自己研鑽にも取り組みやすくなり、主体性のある従業員が成長しやすい環境を構築できるでしょう。

2.人材を効果的に活用できる

人事考課の結果に基づき、給与・賞与額の決定や、昇進、人員配置をする対象者の人選が可能となります。一定の基準をもとに評価しているため、待遇面での社員間の不公平感をなくせるでしょう。また、従業員の過去の実績や評価の内容を蓄積しておくことで、効果的な人員配置が可能となります。顧客との折衝能力がある社員、事務処理能力が高い社員等、それぞれの社員のスキルを見える化できるため、必要な人員を必要な場所に配置できます。従業員のこれまでの実績と能力がわかれば、人事異動のミスマッチを防止にもつながります。

3.早期退職を防ぐ

退職理由の本音として多い理由は「人間関係が悪かった」ですが、「給与が低かった」「評価・人事制度に不満があった」等の待遇面への不満です。人事考課制度に基づく公正な評価により、従業員の貢献度を待遇に反映することで待遇面を理由に退職する従業員を減らせるかもしれません。「きちんと努力すれば評価されるから頑張ろう」という前向きな従業員が増え、切磋琢磨すにより従業員同士の成長も期待できます。

 

07人事考課制度を運用する際に抑えておくべき4つのポイント

従業員の待遇に影響する人事考課制度は、適宜見直しが必要となります。また、社内に制度を浸透させるコツや悪用されないようにするポイントを解説します。制度の運用の際に、ぜひ参考にしてください。

時代の変化に合わせて見直しが必要

一度設定した人事制度を見直さずに長期間利用し続けると、時代の流れに追いつかず、業績が上がらなくなったり、従業員の定着率が悪くなったりする恐れがあります。日本の人事考課制度も、以前は年功序列の形が多くありました。しかし、時代の変化に伴い、徐々に成果主義が導入されるようになりました。コツコツ長く働いて着実に評価を得られる年功序列の仕組みのほうが合っている人もいる一方で、競争が激しく厳しかったとしても成果を上げることで待遇面に反映される成果主義の企業がいいという人も少しずつ増えています。一概にトレンドに合わせることが正解ではありませんので、自社がどのような人材を必要としているかを今一度、改めて考えてみると人事考課制度を見直すいいきっかけとなるかもしれません。

社内調整をしっかり行う

人事考課制度を見直した際や新しい評価方法を導入した際は、社内に浸透させ、従業員の十分な理解を得る必要があります。そのためにはトップ(経営層)のコミットメントがあった方がより効果的です。しっかりとした社内調整を事前に行い、トップから従業員にメッセージを出してもらう等、経営層を味方につけることがポイントとなります。 従業員全員に最初から理解してもらうのは難しいため、このようなポイントを抑えながら、少しずつ浸透させるようにしましょう。

悪用されないよう念入りに構築する

先述した構築する際に重要な3つのポイントを踏まえて制度を構築せず、曖昧な評価軸としてしまうと、悪用され、適切な評価が行われなくなってしまう可能性が高まります。評価者である上司が勝手な解釈をしたり、主観で評価ができなくなるように、「何を、どのように、どこまで、いつまでに」を明確に社内規定に明記しておくようにします。

若手・新入社員には今後の伸び代も評価する

若手社員や新入社員は、育成によって大きな成長が見込めます。経験を積ませないまま、厳しい評価をすると人材育成の妨げになります。失敗を恐れ、挑戦しない社風となってしまい、優秀な人材が育たない企業となってしまいます。若手社員や新入社員には業績による結果だけでなく、伸び代や努力の過程等をしっかりと評価してあげるようにしましょう。そうすることで、安心して業務に取り組むことができるようになり、将来優秀な人材となる社員を増やすことができます。

 

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人事評価に関するSchooの講座を紹介

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人事考課とフィードバックの方法

この授業では、主に係長、課長などのミドル向けマネジメントにかかわっている管理職の方を対象に人事考課や査定のフィードバックについて学びます。 管理職で組織をリードしなければいけないが、部下が主体性を発揮しない、一体感がうまれない、部下との間に壁を感じるなどの課題意識を持った人たち向けに、戦略や方針を実行する上で、その下地となるチームの土壌をどのように形づくっていくのか、成果を出していくための上司の在り方にフォーカスをしながら、組織に対するアプローチ方法について学んでいきたいと思います。 講師として登壇するのは、ご自身も総勢150人のメンバーマネジメントをするパーソルキャリア株式会社の柿内先生です。

 
  • パーソルキャリア株式会社/IT領域法人営業部 部長

    パーソルキャリア株式会社(旧:株式会社インテリジェンス)にてキャリアアドバイザーとして約2000名のエンジニアに転職支援サービスを提供。 2010年よりマネジャーとしてキャリアアドバイザー育成、面接力UP講座の講師、各企業の採用イベントでの講演等に従事。 現在は法人営業としてIT・インターネット業界の法人のお客様に向け、採用競争力向上に貢献すべく奮闘中。 所有資格:国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE.Inc認定 GCDF-japanキャリアカウンセラー

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目標設定と管理への基礎理解

この授業では適切な目標設定やその具体的な手法、フレームワークについて学びます。 講師には人材開発領域にてプロコーチとして活躍される大坂谷 勇輝氏(㈱MEXUS 代表コーチ/㈱LEBEN CAREER 代表取締役)を迎えし、全4回にわたり授業を届けます。

 
  • ㈱LEBEN CAREER CEO ㈱MEXUS CCO

    秋田県は男鹿市の生まれ。 大学卒業後、小売流通業界にて店舗運営責任者として従事。 前社退職後、東南アジアにて半年間のバックパッカー生活。 帰国後、製薬業界にて、人事戦略室、社長秘書室、人事総務業務に従事。 2014年に人材開発事業「LEBEN CAREER」を創業し、法人設立後は代表取締役に就任。 同社では「コーチングを受けたい・学びたい」というビジネスパーソン向けにコーチングサービスの『LCPコーチング』及び、コーチングスクール『LCPコーチングアカデミー』を運営。 株式会社MEXUSでは、CCOとしてパーソナルコーチングサービス『REEED』を企画運営。専門領域は、キャリア変革を目的とした行動変容的アプローチ。

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人事評価に”自社の基準”はあるか〜設計思想の考え方から運用まで考える

基準に沿って従業員を評価して生産性を上げ、その先に企業の業績アップを目指すことが目的である「人事評価制度」。終身雇用が崩壊し、働き方の多様性も広がる中で、多くの企業が従業員が納得する制度は何か、試行錯誤しているのではないでしょうか。本来であれば、各企業によってミッションやビジョンが異なり、従業員に求めるスタンスが異なってくることから企業ごとに評価制度のカラーがあってもおかしくありませんが、グレードの設計や賞与の分配といった各論ばかりに目がいきがちです。 本授業では、このような具体的な指標を設計する前に必要な、「自社ならではの評価制度」の考え方と、制度を運用していく時に意識しておきたいポイントについて学んでいきます。

 
  • 株式会社キャスター取締役CRO

    株式会社キャスター取締役CRO。(株)リクルートHRマーケティング入社。09年6月に当時5名の(株)リブセンスに転職し、ジョブセンスの事業責任者として入社から2年半で東証マザーズへ史上最年少社長の上場に貢献。その後、DeNAのEC事業本部で営業責任者ののち、新規事業、採用責任者を歴任し、2016年より現職。2019年7月より「bosyu」の新規事業責任者も兼任。

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09まとめ

人事考課制度とは、上司が部下の業務遂行能力や成績、態度等を一定の基準で評価し、その結果をもとに、部下の昇給や待遇を決定するものです。あらかじめ具体的かつ明確な判断基準となる人事考課制度をつくることで、公平な評価と適切な人員配置ができるようになります。見直しの際や新しい評価方法の導入の際は、手間がかかりますが、効果的な人事考課制度をつくることで従業員のモチベーションを上げたり、早期離職を防ぐこともできます。社員教育にも有効活用でき、長期的な目線でもとても大切な人事考課制度について、自社と従業員にとってよりよい人事考課制度とは何かぜひ、じっくり考えてみてください。

【無料】MBO・OKR・KPI~働きがいと成果を同時に実現する人材マネジメントの原則|ウェビナー見逃し配信中

MBO・OKR・KPI~働きがいと成果を同時に実現する人材マネジメントの原則
 

組織マネジメントや目標設計、人事評価についてのウェビナーアーカイブです。20年以上、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、書籍、人事塾などによって、企業の人事を支援している、株式会社壺中天の代表である坪谷氏をお招きし、働きがいと成果を同時に実現する人材マネジメントについてお話しを伺います。

  • 登壇者:坪谷 邦生 様
    株式会社壺中天 代表取締役

    立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。

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