更新日:2026/04/20

連鎖退職とは?起きる原因や悪影響、企業がすべき対策を詳しく解説

連鎖退職とは?起きる原因や悪影響、企業がすべき対策を詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

連鎖退職とは、特定の社員が退職したことをきっかけに、短期間に複数の社員が次々と辞めてしまう現象を指す言葉です。まるでドミノ倒しのように、一人の退職が連鎖的に次の退職者を生み出すことから、このように呼ばれます。生産年齢人口が減少する日本において、従業員の定着は事業の安定的な継続のために重要な要素です。本記事ではこの現象が起きる原因と、前兆を早期に察知し講じるべき具体的な対策を解説します。

 

01連鎖退職とは何か?

連鎖退職は、一人の退職が同僚の離職意向に伝播し、短期間に複数の退職者を生む現象です。経験則としてもイメージしやすい現象ですが、実際に米国の研究(2009年)でも、同じ職場の同僚が転職活動を活発化させると、残るメンバーも離職に踏み切りやすくなることが示されています。連鎖退職が進むと、生産性や業務品質の低下、組織内の不安の広がりなどが想定されます。

また、帝国データバンクの「人手不足倒産」調査(2025)では従業員退職が要因の倒産事例が増加していることが報告されています。日本では少子高齢化による生産年齢人口の減少が進んでおり、人材の確保は企業にとって経営の安定性を左右する要素です。こうした状況を踏まえると、連鎖退職は業績悪化や事業継続リスクの高まりにつながる可能性がある現象だといえるでしょう。

▶︎参考:Felps, W. et al.「Turnover Contagion: How Coworkers' Job Embeddedness and Job Search Behaviors Influence Quitting」Academy of Management Journal, Vol.52, No.3 (2009)
▶︎参考:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査」


 

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02連鎖退職が起きてしまう原因・背景とは?

連鎖退職が起きてしまう原因・背景には、主に以下の4つがあります。

  • ・そもそも人は身近な人の言動に影響を受ける
  • ・同僚の退職により業務負荷が上がる
  • ・組織の課題がクローズアップされやすくなる
  • ・退職を踏みとどまる理由が少ない

そもそも人は身近な人の言動に影響を受ける

連鎖退職の土台には、人が自分の判断を他者と比較して定めるという心理的な傾向があります。特に不確実性が高いときほど、参考情報として他人の言動を参照しがちです。転職という意思決定は、結果の不確実性が高い典型的な「曖昧な状況」です。同僚が転職活動をしたり実際に退職したりすると、それが一つの選択肢として認識され、自分も同様の行動をとる可能性が高まると考えられます。

同僚の退職により業務負荷が上がる

業務負荷の上昇は、ドミノ倒し型の連鎖退職を招きやすい代表的な要因の一つです。パーソル総合研究所が2024年11月に公表した「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」によれば、同僚の退職や産休・育休で欠員が生じた組織のうち、補充が「なかった/しなかった」が47.4%、「募集しているができていない」が29.6%で、合計77.0%の組織で欠員が補充されていません。欠員が補充されない場合、業務は既存メンバーへの追加割り振りという形で吸収されることが多くなります。

▶︎参考:パーソル総合研究所「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」(2024年11月)

組織の課題がクローズアップされやすくなる

組織への信頼が揺らぐことも、課題や不満に意識が向きやすくなることを通じて、連鎖退職を招き得ます。キーパーソンや社内で注目を集める社員の退職などが挙げられます。活躍している人材が退職することで、周囲は「この会社はダメなのではないか」と不安を覚え、組織の課題に対して目が向きやすくなります。一般に、組織に対する課題感や不満は多くの従業員が持ち得るものですが、キーパーソンの退職などが起きた場合には、従業員が離職を現実的な選択肢として捉えやすくなります。

退職を踏みとどまる理由が少ない

連鎖退職は、従業員を職場につなぎとめる要因が弱い状態で発生しやすいと考えられます。この「職場につなぎとめる要因」を概念化したのが、Terence R. Mitchell氏らが2001年に提唱した「ジョブ・エンベデッドネス」です。これは(1)個人のスキルや志向と仕事との適合性、(2)職場や地域社会とのつながり、(3)離職によって失われる物質的・心理的な利得の三点で構成され、これら要素が弱いほど、退職につながりやすくなります。

▶︎参考:Mitchell, T.R. et al.「Why People Stay: Using Job Embeddedness to Predict Voluntary Turnover」Academy of Management Journal, Vol.44, No.6 (2001)

 

03連鎖退職が及ぼす企業への影響

連鎖退職が及ぼす企業への影響には、主に以下の4つが挙げられます。

  • ・生産性の低下
  • ・サービス品質や満足度の低下
  • ・企業イメージの低下
  • ・採用コストの増加

生産性の低下

連鎖退職が進むと、業務の生産性が低下する可能性があります。経験豊富な担当者が抜けた領域では、残された従業員の一人当たり業務量が増え、ストレス負荷から作業効率が落ちやすくなります。新規採用で補充しても、知識・技術の習得には相応の期間が必要です。

サービス品質や満足度の低下

経験豊富な従業員やキーマンが連鎖的に退職すると、業務ノウハウが組織内に十分残らず、サービスの質や対応スピードが低下する可能性があります。特に顧客対応では、初動対応の遅れや難度の高いクレーム対応の質低下は顧客満足度に直接影響します。

企業イメージの低下

SNSやウェブサービスの発達により、働きやすさやマネジメントスタイルといった情報が、従業員や元従業員から発信されやすくなっています。連鎖退職が起きた場合、その状況が外部に伝わる可能性が高まります。また、人的資本経営の考え方が広がる現在、人材の定着状況は、外部ステークホルダーの評価に影響しうる要素です。

採用コストの増加

短期間で多くの欠員が出ると、企業は新規採用などを通じて必要リソースを確保する必要に迫られます。新規採用には一般的に、求人広告費・エージェント費・面接工数などのさまざまなコストがかかります。さらに、企業イメージの悪化が応募数の減少を招けば、採用活動が長期化してさらに費用がかさむ展開も想定されます。

 

04連鎖退職を防ぐ企業の対策とは?

連鎖退職を防ぐ企業の対策には、主に以下の5つがあります。

  • ・働きやすい環境の整備
  • ・オフボーディングの強化
  • ・心理的安全性の高い職場づくり
  • ・リスクマネジメントの強化
  • ・ビジョン・未来を明確に示す

働きやすい環境の整備

連鎖退職を防ぐ一つの方法として、働きやすい環境を整備することがあげられます。具体的には、本人の強みを生かせるジョブアサインの見直し、上司との信頼関係構築、同僚同士の横のつながりを生むコミュニケーション施策、柔軟な勤務体系の整備などが挙げられます。これらはいずれも、ジョブ・エンベデッドネスの3要素を組織側から強化する施策にあたります。

オフボーディングの強化

退職者の発生による関係者の負荷の高まりが、連鎖的に退職を引き起こす事象を防ぐには、オフボーディングを強化することが大切です。具体的には、退職が決まった人の業務引き継ぎ・後任アサイン・関係者への共有を、計画的なプロセスとして設計します。退職決定から実際の退職日までのスケジュール、引き継ぎ文書のテンプレート、後任者と退職者の対話時間の確保などをルール化することで、退職の発生による混乱や負荷の高まりが抑えられやすくなるでしょう。

心理的安全性の高い職場づくり

マネジメントが普段から従業員の率直な意見を把握できる状態にしておくことは大切です。そのために重要なのが、組織の心理的安全性です。これは従業員が「人からどう思われるかを心配せずに、安心して率直な意見を発信できる環境」を指します。心理的安全性の高い職場では、従業員が不満や懸念を抱え込まず、オープンに議論できる環境の土台が構築されます。具体的な行動レベルでは、1on1での問いの設計、会議冒頭の短いチェックイン、反対意見が出たときの上司の受け止め方の所作などが起点になります。

リスクマネジメントの強化

退職が従業員の自由意思で行われる以上、企業がそれを完全にコントロールすることはできません。そのため、予期せぬ退職で現場が混乱をしないよう、あらかじめリスクに備えておくことが大切です。具体的な方法として、「業務の見える化」があります。担当業務、業務量、属人化している判断ポイントなどが事前に把握できていれば、退職の申し出があった段階で再分配の選択肢を検討でき、業務停滞を抑えやすくなります。

ビジョン・未来を明確に示す

ビジョン・未来を明確に示す

Schoo for Businessの授業『人手不足時代の人材定着術』に登壇する井上洋市朗先生は、人材定着に必要な二つの要素として「安定」と「成長」を挙げています。安定とは、安心して働き続けられることであり、成長とは自分のなりたい姿に近づくことです。会社の目指すビジョンや未来を明確に示すことは、社員にとって安定・成長どちらの観点でも重要です。環境変化が激しい不安定な時代だからこそ、企業が目指すビジョンを明確に語ることは、事業の継続性や成長性を予感させ、従業員の安心につながります。


 

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定着率向上に役立つ授業を紹介

ここでは、オンライン研修サービスSchooの講座から、定着率向上に役立つ授業を紹介します。

人手不足時代の人材定着術

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このコースではそんな従業員の離職原因を紐解きながら、その対策としてとるべきアクションについて学ぶことができます。特に若手社員の価値観の変化を感じつつも、講ずるべきアクションや人材マネジメントに課題がある方におすすめの授業です。

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なぜ若手社員はすぐ辞めるのか?

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この授業では新卒入社後3年以内に辞めた約300名の方にインタビューを行ってきた井上洋市朗さんが、若手社員が辞める本当の理由について解説します。組織の当たり前を問い直し、若手が辞めない職場づくりの具体策について学んでいきましょう。

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"強い"会社とは?〜人が自ら動き出す環境をつくる〜

「強い」会社とは?

この授業では、書籍『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』の著者・松岡保昌さんから、どのようにすることで「強い会社」をつくれるのかを学びます。自律的に社員が動く組織作りに関心がある方におすすめの内容です。

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    人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。リクルート、ファーストリテイリング執行役員人事総務部長、ソフトバンクブランド戦略室長などを歴任。著書『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』(日本実業出版社)

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06まとめ

連鎖退職とは、従業員の離職が他の従業員に伝播することで、従業員が相次いで退職する現象です。身近な人の言動の影響、業務負荷の急増、組織課題の顕在化、そして「ジョブ・エンベッドネス」の低さなどが、主な原因となります。もし連鎖退職が起きてしまうと、生産性やサービス品質の低下、企業イメージの悪化、採用コストの増加など、企業にさまざまな悪影響を与え得ます。そのため、働きやすい環境の整備、オフボーディング強化、心理的安全性、ビジョン提示などを通じた戦略的な早期対策が重要です。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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