ポジティブ心理学とは?定義から活用する方法までわかりやすく解説

「強み」や「幸福感」「生きがい」に科学的な光を当てる心理学の一分野です。従来の臨床心理学が心の不調の治療を主眼としていたのに対し、ポジティブ心理学はすべての人がより充実した状態(ウェルビーイング)へ向かうための条件を探求します。本記事では、ポジティブ心理学の定義やPERMAモデルの概要をはじめ、職場での活用方法として注目される心理的資本やジョブクラフティングの実践まで解説します。
01ポジティブ心理学とは?
ポジティブ心理学とは、人々がより良く、充実した人生を送るために必要な要素を科学的に探求する心理学の一分野です。具体的には、ポジティブな感情、レジリエンス(困難を乗り越える力)、強みや才能、自己効力感、人生の意味などに注目し、それらを活かして幸福感や自己実現を高めることを目指します。弱みを克服するだけでなく、強みを自覚して、意図的に活用することも重視します。
ポジティブな感情の活用というと、精神論や自己啓発と重なるイメージを想起することもあります。一方ポジティブ心理学では、「ポジティブな感情を持つことで、生理的な反応がどのように変わるか」や、「ポジティブ感情と健康指標との関連」といったテーマを、科学的な視点から検証します。
ポジティブ心理学の特徴
ポジティブ心理学の特徴は、従来の心理学が焦点を当てていた「心の病の克服」や「問題の解決」から一歩進み、心の健康な人々も含めて、すべての人がよりよく生きるにはどうすればよいかを探求する点です。そのため、心の健康状態を問わず、幅広い人が対象となります。
またポジティブ心理学は、従来の心理的な課題を抱えた人への支援の中で蓄積されてきた知見も踏まえながら、人が幸せに生きるために必要な条件や理論を探究します。現代社会では、物質的に豊かな社会が実現された一方、生きる意義を見出すことに課題を感じる人も少なくありません。このような現代的な課題に向き合う学問であるという点も、一つの特色と言えるでしょう。
▶︎参考:宇野カオリ「ポジティブ心理学の挑戦」『日本労働研究雑誌』No. 705, 2019年, 51-58頁
ポジティブ心理学と関係の深い言葉
ポジティブ心理学と密接に関係しているキーワードとして代表的なのが「ウェルビーイング」と「ワークエンゲージメント」です。ウェルビーイングとは、心身の健康や人生の満足感などを含んだ広い概念で、特に「意味のある人生」や「人生の目的」に注目します。一方、ワークエンゲージメントは、仕事への熱意・没頭・活力を感じながら働く心理状態を指します。仕事に意義を見出し、自発的に関与することで得られる充実感やモチベーションは、ポジティブ心理学が目指す「人がよりよく生きる姿」を象徴しています。
02ポジティブ心理学の5つの柱「PERMAモデル」とは
ポジティブ心理学の体系化において重要なモデルとして、PERMAモデルがあります。これは、ウェルビーイングの構成要素として、マーティン・セリグマン氏が考案したモデルです。ポジティブ感情、没頭、人間関係、意味・意義、達成感という5つの視点から、幸福のあり方を捉えるこのモデルは、日常生活や職場の実践にも活用されています。
Positive Emotion(ポジティブ感情)
喜び、感謝、楽しみ、愛情、ひらめきなどのポジティブな感情を感じることが、PERMAモデルの一要素です。ポジティブ感情は、幸せや満足感を育み、ストレス耐性を高めたり、人間関係を円滑にしたりする効果が期待できます。過去に対する満足、現在の喜び、未来への希望といった時間軸にわたる感情を含めて扱われることもあります。
Engagement(没頭)
没頭とは、ある活動に深く集中し、時間を忘れるような状態のことを指します。これはチクセントミハイが提唱した「フロー体験」と重なる概念で、挑戦とスキルが適度に釣り合い、自己意識を忘れて没入できる場面です。仕事、趣味、学びなど、自分が得意・関心ある活動に没頭することは、幸福感や満足感の源泉になります。
Relationship(人間関係)
人間関係とは、親密さ、信頼、他者とのつながりを指します。健康で良好な関係を築けていると、悩みを共有できたり感謝し合えたりして、心理的支えや幸福感が高まります。PERMAモデルの根底には、個人の幸福は自己完結するものではなく、社会的な関係性を通じて育まれるという視点があります。
Meaning(意味・意義)
意味・意義とは、自分の人生や行動に価値を見出すことを意味します。たとえば「世の中に貢献したい」「誰かの役に立ちたい」と感じる目的を持って行動することがこれに該当します。意味を持つ行動は、単なる快楽ではなく深い充足感をもたらし、困難に直面しても折れにくい心理的な支えになると考えられています。
Accomplishment(達成感)
達成感とは、適切な目標を設定し、それを達成することで得られる満足感や誇りです。小さな成功体験を積み重ねることは自己効力感を育み、モチベーションの向上につながります。PERMAモデルにおいては、成果そのものだけでなく、その過程での成長や学びも重要視されます。
03ポジティブでいることのメリット
ここまでポジティブ心理学の概要について見てきましたが、前向きな心理状態を保つことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、Schoo for Businessの授業『ちょっと前向きな「ライトポジティブ」の目指し方』で紹介される、以下の3点について解説します。
- ・行動レパートリーが広がる
- ・ストレス耐性がアップする
- ・健康が増進する
行動レパートリーが広がる
ポジティブな感情は、思考の柔軟性を高め、新たなアイデアや行動の選択肢を生み出します。例えば仕事において、希望ではない部署に配属された、上司と馬が合わないなど、環境に対して不満を感じるシーンも珍しくありません。ここで前向きな考え方ができると、その環境でしか得られない経験に価値を見出したり、上司とのコミュニケーションの方法を工夫したりと、現状に対して主体的に問題解決する工夫が生まれやすくなります。
ストレス耐性がアップする
前向きな感情は、ストレスにも関係すると言われています。例えば、アメリカの社会心理学者であるフレドリクソンらは、研究においてポジティブな感情がストレスによる心血管反応からの回復を早めることを発見しました。ストレスと上手く付き合うためには、対象の出来事に対する解釈や受け止め方をコントロールすることが大切です。ポジティブな感情は、このような視点の変化を助け、頭を切り替えることに役立ちます。
健康が増進する
ポジティブな感情によって行動が活発になり、ストレスにも強くなることは、結果として心身の健康の維持にも役立ち得ます。実際に、ポジティブ感情と健康の関係を扱った研究でも、高齢者の寿命延長に関連する可能性が示唆されています。
職場において健康を害する要因はさまざまであり、ポジティブな感情だけで全てを解決できるわけではありません。しかし、将来への漠然とした不安や仕事のプレッシャー、人間関係の摩擦によって生じるストレスは、出来事そのものだけでなく、その受け止め方にも影響されやすいものです。そのため、ポジティブな感情を育むことは、こうしたストレスへの対処を支え、不調のリスク低減につながる可能性があります。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

04ポジティブ心理学の職場での応用
ポジティブ心理学は、従業員のレジリエンスやモチベーションを高め、職場のパフォーマンス向上に寄与します。近年は、従業員の内面的な強みに働きかける心理的資本の育成や、仕事に主体性を持たせる取り組み、感謝を伝え合う文化づくりなどが注目されています。ここではその具体策を解説します。
「心理的資本」の強化トレーニング
「心理的資本」とは、ホープ(Hope/目標に向かう意志と道筋を見いだす力)、エフィカシー(Efficacy/自分ならやれるという自信)、レジリエンス(Resilience/困難から立ち直る力)、オプティミズム(Optimism/解釈を通じて明るい見通しを持てること)の4要素で成り立つ概念です。この心理的資本が増加することは、従業員満足度やウェルビーイングの向上に役立ちます。
また心理的資本は、トレーニングなどの介入によって高めることが可能だと考えられています。具体的には、研修を通じて効果的な目標設定について学んだり、ワークショップなどで他者とポジティブなフィードバックをしあったりすることが挙げられます。
ジョブクラフティングの導入
ジョブクラフティングとは、従業員が自身の仕事の進め方や意味づけを自発的に工夫し、仕事を自分らしく再構成する行動を指します。これにより、自分の強みや関心を活かした働き方が可能となり、仕事へのエンゲージメントや満足度が高まりやすくなります。職場での実践例としては、上司との1on1で業務の裁量や役割の持ち方を相談することや、チーム内で役割分担を見直すことなどが挙げられます。
相互感謝の促進
職場内での感謝の気持ちを伝え合う文化づくりは、エンゲージメントや人間関係の質を高める取り組みの一つです。たとえば、サンクスカードの活用はその一例で、従業員同士が日常的に感謝を表現する仕組みを導入することで、心理的安全性の向上やチームワークの強化が期待されます。感謝が可視化されることで、組織全体の雰囲気もポジティブなものへと変化していきます。
05エンゲージメント強化にも役立つSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
エンゲージメント強化に役立つ講座
ここでは、Schoo for Businessのラインナップから、エンゲージメント強化に役立つチームビルディングや習慣などについて学べる講座を紹介します。
キャリア自律とWILL - 会社は"個人"にどう向き合えばいい?
この講座は、企業の「キャリア自律」方針と社員個人の「WILL(ありたい姿)」の関係性に疑問を持つ人事担当者や管理職を対象としています。副業やパラレルキャリアが当たり前になる現代において、会社が個人のWILLをどこまで引き出し、向き合うべきかという根本的な問いを掘り下げます。キャリア支援のあり方を再考したい方におすすめです。
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株式会社ローンディール WILL-ACTION Lab.所長
早稲田大学大学院にて機械工学を専攻後、富士ゼロックスにSEとして入社。SOL営業、新規事業開発、人材開発など企業内での越境を経験。約50社の大企業若手有志1000名を巻き込んだ任意団体「ONE JAPAN」の共同発起人/副代表として活動。2018年、ローンディールに最高顧客責任者(CCO)として参画し、2024年には「WILL-ACTION Lab.」を設立。2025年、代表取締役就任。国際コーチング連盟認定コーチ/中小企業診断士。著書『WILL「キャリアの羅針盤」の見つけ方』(ディスカヴァー)
キャリア自律とWILL - 会社は"個人"にどう向き合えばいい?を詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
成果を引き上げる「脳の使い方」習慣
チームで成果を上げたいリーダーや、周囲を巻き込んでプロジェクトを成功させたいビジネスパーソンを対象としています。脳科学の観点から、幸せややりがいを感じながらチームの生産性を高める「脳の使い方」を学びます。特に、脳の「島皮質(とうひしつ)」を鍛える「脳磨き」というトレーニングを通じて、「集合知性」を引き出す方法を解説します。
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脳科学者・医学博士 脳磨きの提唱者
京都大学卒業後、米国ウィスコンシン大学大学院で博士号取得。通産省 主任研究官、ノースウェスタン大学医学部 准教授を歴任。帰国後、最新の脳科学を活用して人が幸せになれる「脳磨き」を提唱する。「脳磨き」をベースにしたリーダー養成・チームビルディング・フィロソフィ浸透などの脳トレ研修・講演・コンサルティングを提供する。経営やリーダーシップなどの事象を最新脳科学研究で裏付けることの第一人者。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
チームビルディング-リーダーの振る舞いを学ぶ-
この講座は、新しくリーダーになった方やリーダーを目指す方を対象に、チームビルディングの原則に基づいたリーダーの振る舞いを学びます。チームには「同調期」「混沌期」「調和期」といった成長段階があり、各段階でリーダーに求められる的確な行動や働きかけ、逆にやってはいけないNG行動を具体的に解説します。
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組織開発ファシリテーター
日本福祉大学卒業後、東京学芸大学にて野外教育学を研究後、冒険教育研修会社、玩具メーカー、人事コンサルティング会社を経て独立。企業、団体、教育、スポーツの現場など、約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングを実施。現在は複数の法人で「エア社員」の肩書のもと、事業開発やサービス開発、社内外との横断プロジェクトを通じた組織づくりをファシリテーションする。著書に『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』など。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
折れない心を育てるレジリエンスの高め方
この講座は、仕事でストレスを溜めやすい方や、変化の多い環境で働く方、責任ある役職に就いている方などを対象としています。逆境や困難な状況に直面した際に、柔軟に対応し回復する力である「レジリエンス」を高める手法を学びます。折れない心を育て、自分らしく働くための具体的な方法を習得できます。
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(一社)日本ポジティブ心理学協会認定レジリエンス・トレーナー
外資系IT企業、ITベンチャーの創業メンバーとして、システムエンジニア、プロジェクトリーダ/マネージャ、社員育成の企画/運用などに従事。IT業界で10年間働いた後、農家修行などを経てIT業界へ戻る。コーチング、ポジティブ心理学、そしてレジリエンスを学び、現在はIT業界での仕事を続けながら、レジリエンス・トレーナー、ビジネスコーチとして活動している。
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06まとめ
ポジティブ心理学の活用は、個人の幸福感や生産性を高め、組織全体の活性化にもつながる有効なアプローチです。PERMAモデルに代表されるように、感情・没頭・人間関係・意味・達成といったさまざまな視点から人生の充実を捉え、実践につなげることができます。さらに、職場では心理的資本の育成やジョブクラフティング、感謝の文化づくりといった取り組みが、レジリエンスやエンゲージメントの向上に役立つ可能性があります。今後の人材育成や職場改革の一助として、ポジティブ心理学の活用はますます注目されるでしょう。



