公開日:2022/01/24
更新日:2024/06/18

ITスキル標準(ITSS)とは? 実務に活かせるスキルについて解説する

ITスキル標準(ITSS)とは? 実務に活かせるスキルについて解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

ITエンジニアのスキルを表す基準にITスキル標準(以下、ITSS)があります。このITSSとは、どういった内容なのでしょうか。本記事では、ITSSについての解説と目指したい資格について解説しています。本記事を参考にITエンジニアのスキル基準を設けより具体的な評価基準を作成していきましょう。

 

01ITスキル標準(ITSS)とは

ITスキル標準(ITSS)とは、どういった内容なのでしょうか。ITSSとは、「IT Skill Standard」の略称です。通称「ITスキル標準」とも呼ばれIT人材に対するスキル体系を表すものです。これは、経済産業省が高度IT人材育成を目的として作られ、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練を行う際の基準にもなっています。ITSSでは、IT領域でサービスを提供する人材のスキルを明らかにしており、これに基づいた評価基準を設けている企業も少なくありません。ITSSは、2000年代前後に政府が実施した国家戦略の一貫として利用され各企業に普及しています。

出典:参照:情報処理推進機構「ITスキル標準とは?」

ITSSと類似用語との違い

ITSSと類似している用語について解説していきます。ここで紹介している用語は、ITSSと類似しているだけではなく、比較して利用される用語でもあります。その違いについては、意味を正しく理解し用語の使い分けを行って利用していきましょう。

UISS(情報システムユーザースキル標準)

UISS(情報システムユーザースキル標準)とは、英語表記の「Users’Information Systems Skill Standards」を略して「UISS」とも呼びます。UISSとは、一般企業などが経営や日常業務を行うにあたって、組織として備えるべき情報システムやそれを扱う人材の対応関係を体系的に整理したモデルを指します。ITSSとの違いは、主な対象がベンダーではなくユーザーであることです。UISSの特徴は、システム企画担当者が行うタスクを約400の小項目で定義し、各タスクについて「レベル4:指導できる」から「レベル1:指導の下でできる」までの4段階で評価するように設定していくことです。

参照:情報処理推進機構「ITSS+(プラス)・ITスキル標準(ITSS)・情報システムユーザースキル標準(UISS)関連情報」

ETSS(組込みスキル標準)との違い

ETSS(組込みスキル標準)とは、経済産業省によって定義されたエンジニアのスキル基準を指します。組み込み系ソフトウェアの開発に必要な技術を体系化し、共通の基準として定めています。ETSSは、IT分野における国際競争力を高めることや、必要とされる知識が網羅されスキルの可視化を行うことで人材の育成や有効活用がしやすくなることが目的として定められました。ETSSでは「スキル基準」「キャリア基準」「教育研修基準」の3部構成で作成されています。ETSSは対象をシステムエンジニアのみに特化しているのに対している点がITSSとは異なります。

参照:情報処理推進機構「組込みスキル標準(ETSS Series)」

CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)との違い

CCSF(共通キャリア・スキルフレームワークス)はITスキル標準(ITSS)、組込みスキル標準(ETSS)、情報システムユーザースキル標準(UISS)の各スキル標準の参照が可能なモデルとして作成されています。各スキル標準を導入、活用する企業において企業のビジネスモデルや従業員構成をもとに体系だった管理が難しいという課題に対応して構築されたのがCCSFです。

参照:情報処理推進機構「共通キャリア・スキルフレームワーク」

 

02ITスキル標準が必要とされる背景

ITスキル標準が必要とされるようになった背景には、技術の変化や人材育成の基準が重要視されるようになったことが挙げられます。ここでは、それぞれの背景について詳しく解説します。

IT技術の多様化と変化に対応するため

現代のIT業界は技術の多様化と急速な変化が特徴であり、企業や組織はこれに迅速に対応する必要があります。新しいプログラミング言語やフレームワーク、クラウドコンピューティング、AI、IoTなどの技術は、次々と登場し、それらを適切に取り入れることが競争力の維持に繋がります。ITスキル標準は、このような技術の多様化と変化に対応するために、必要なスキルセットを明確化し、従業員が最新の技術を習得し続けるための指針を提供します。

人材育成において客観的な基準が求められるようになった

人材育成においては、従業員のスキルレベルを客観的に評価し、適切なトレーニングやキャリアパスを設定することが重要です。ITスキル標準は、各スキルの習得度合いや熟練度を明確に示すことができるため、教育計画の策定や進捗管理に役立ちます。また、客観的な基準があることで、従業員は自身のスキル向上のための具体的な目標を持つことができ、モチベーションの向上にも繋がります。さらに、企業は適材適所の人材配置が可能となり、組織全体の生産性と効率性を高めることができます。

 

03ITSSの7段階レベル

ITSSでは、7つの段階でスキルをレベル分けしています。次に、この7段階のレベルについて解説していきます。このレベルが、エンジニアのスキルを測る物差しとなります。それぞれのレベルを知ることで、どの程度の能力を備えているかについて見極めたり、カテゴリわけに活用していきましょう。

エントリーレベル(レベル1~2)

ITSSのスタートラインに位置するのが、エントリーレベル(レベル1~2)です。情報処理に関する基礎知識や技能を有しているレベルとなります。上位レベルからの指示を受けて業務を行うことや、課題発見が出来るレベルとなります。一般的に自己啓発でも取得できるレベルと言われており、情報処理に関わる業務におけるスタートラインとして、上位を目指す場合の登竜門ともされています。

ミドルレベル(レベル3~4)

ITプロフェッショナルとしての専門分野を確立した状態を意味するのがミドルレベル(レベル3~4)です。実務において能力を駆使して、独力で課題の発見や解決をすることができるレベルとなります。その他にも、経験の知識化や後進の育成できる人材であるとされています。継続的な自己啓発において、より高度なスキルへのレベルアップをはかっていくことが可能です。

ハイレベル(レベル5~7)

ハイレベルとは、エントリーレベルやミドルレベルと比較して格段に高度なスキルを保有している人材を表します。レベル5はハイエンドプレーヤーとして企業内で認められた存在。レベル6は、企業内外の人にハイエンドプレーヤーとして認識される存在。そして、レベル7は、ITプロフェッショナルとしての専門分野を確立しに、市場全体から見ても世界で通用するプレーヤーとして認められるレベルと定義されています。

 

04ITSSにおける11の職種

ITSSは11の職種にわかれています。この章では以下の11の職種について紹介します。

  • 1:マーケティング
  • 2:セールス
  • 3:コンサルタント
  • 4:ITアーキテクト
  • 5:プロジェクトマネジメント
  • 6:ITスペシャリスト
  • 7:アプリケーションスペシャリスト
  • 8:ソフトウェアデベロップメント
  • 9:カスタマーサービス
  • 10:ITサービスマネジメント
  • 11:エデュケーション

マーケティング

ITSSにおいて、マーケティングの専門分野はマーケティングマネジメントと販売チャネル戦略・マーケットコミュニケーションの3つに分類されています。市場調査や戦略策定を行うマーケティングマネジメント、どのチャネルで製品・サービスを売っていくかの販売チャネル戦略、どのようなコミュニケーションで顧客に届けるのかを決めるマーケットコミュニケーションがあります。

セールス

セールスの専門分野は、以下の3つに分類されています。 限定した顧客に対し、継続的な販売活動を行う訪問型コンサルティングセールス。 幅広い顧客に対して、製品やサービスの販売活動を行う訪問型製品セールス。 広告などを用いて不特定多数へリーチを伸ばし、販売活動を行うメディア利用型サービス。 いずれも、顧客の課題解決・理想実現を叶えるために、顧客とのリレーションが必要となる職種です。

コンサルタント

コンサルタントは顧客の事業戦略やパーパスの実現に対して、提言や助言を行う職種です。顧客に提案した内容が生み出した効果や、その結果による顧客エンゲージメントなどに責任を担います。コンサルタントの専門分野は、それぞれの産業が抱える課題に対して提案をするインダストリ、産業を問わず、業務に対しての提案をするビジネスファンクションの2つに分類されています。

ITアーキテクト

ITアーキテクトは、顧客の事業戦略を実現するために、アプリケーションに関連する技術を活用して、ITアーキテクチャの設計を行うことが主な役割です。アプリケーションアーキテクチャ・インテグレーションアーキテクチャ・インフラストラクチャアーキテクチャの3つに専門分野は分かれています。

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの提案から実行までを管掌し、スケジュールだけでなく納品物の品質などにも責任を持ちます。また、システム開発・ITアウトソーシング・ネットワークサービス・ソフトウェア製品開発の4つに専門分野は分かれています。

ITスペシャリスト

ITスペシャリストは、ソフトウェア・ハードウェア双方の専門技術を持ち合わせ、顧客にとって最適なシステム基盤の構築を実施する職種です。また、設計から導入までのプロセスはもちろんのこと、回復性や可用性といった非機能要件の責任も負います。専門分野は、プラットフォーム・ネットワーク・データベース・アプリケーション共通基盤・システム管理・セキュリティの6つに分類されています。

アプリケーションスペシャリスト

アプリケーションスペシャリストは、アプリケーションの開発技術を用いて、アプリケーションの設計から開発、導入、テストや保守までを実施する職種です。アプリケーションスペシャリストの専門分野は、業務システムと業務パッケージの2種類に分類されています。業務システムは業務システムの設計、開発、運用・保守。業務パッケージはパッケージのカスタマイズや機能追加が主な役割です。

ソフトウェア開発デベロップメント

ソフトウェア開発デベロップメントは、マーケティング戦略に基づいたソフトウェア製品の企画・設計・開発を担う職種です。ソフトウェアデベロップメントの専門分野は基本ソフト・ミドルソフト・応用ソフトの3つに分類されています。

カスタマーサービス

カスタマーサービスは、ハードウェア・ソフトウェア製品の修理・保守を担う職種です。カスタマーサービスの専門分野は、ハードウェア・ソフトウェア・ファシリティマネジメントの3つに分類されます。

ITサービスマネジメント

ITサービスマネジメントは、システム全体を管轄する職種です。運用の適正化・リスク管理・安定稼動などに責任を持ちます。ITサービスマネジメントの専門分野は、運用管理・システム管理・オペレーションサービスデスクの4つに分類されています。

エデュケーション

エデュケーションは、研修カリキュラムの設計・運用などを実施し、専門技術に関する人材育成を担います。また、エデュケーションの専門分野は、研修企画とインストラクションの2つに分類されています。研修企画は、どのような研修を実施すべきかの策定やカリキュラムの作成などが主な役割です。一方で、インストラクションは研修の実施・評価などが主な役割となっています。

 

05ITSS導入で目指したい資格試験

次に、ITSS導入で目指したい資格試験についてもご紹介していきます。ITSSのレベルに合わせた資格取得として、IPAが実施している情報処理技術者試験があります。このIPAがIT人材を育成する上で促進している資格です

参照元:IPA 情報処理推進機構

ITパスポート試験(アイパス)=ITSSレベル1

情報処理技術者試験のうち、最も簡単なエントリーレベルの資格がITパスポート試験です。ITパスポートは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業大臣が実施する国家試験でITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる試験になります。

参照元:IPA ITパスポート試験

基本情報技術者試験=ITSSレベル2

基本情報技術者試験はITエンジニアの基礎資格と呼ばれる試験です。「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」が対象となります。その内容は、プログラム設計書を作成して開発から単体テストまで担当するなど、実践経験のある技術者向けの資格ですが、実務経験が必要ではありません。

応用情報技術者試験=ITSSレベル3

TSSレベル3への到達が認定される応用情報技術者試験は、より高度なスキルを保有していることが必要とされており、IT人材としての経験が数年の方が受験することが一般的です。経験と知識を保有している証明としての資格試験ですが、受験資格に実務経験が必要とされている訳ではありません。また、より深い知識を必要としているため、実務経験がある方の方が合格しやすいと言われていますが、学生などの受験も増加している傾向があります。

高度情報処理試験

ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、情報セキュリティスペシャリスト試験、ITサービスマネージャ試験などが、いわゆる高度試験と呼ばれるものです。これらの試験に合格するとITSSレベル4に認定されます。ここからは、より実務スキルが求められる試験となります。

 

06ITSSを企業に導入する際のポイント

次に、ITSSを企業に導入する際のポイントについて解説します。ITSSを導入するには、どのようなポイントを意識して実施した方がいいのでしょうか。ポイントをおさえて、ITSSの導入を計画するようにしていくためにはどうしたらいいのかを理解し、計画を立案していきましょう。

導入目的の明確化と理解の促進

まず最初に行うのは、導入の目的を明確にすることです。導入の目的が明確になってから、その目的について従業員への理解を促進する必要があります。導入の目的を明確にしなければ、その理解を促すことはできません。そこで、まずは目的を明確化し、その内容を周知すしていくことが必要になると理解しておきましょう。目的の理解が促進されると、よりその計画の実行がスムーズにできるようになります。こうした段階をおった対応が計画を成功させる方法になるため、理解促進をおこないましょう。

人材育成計画に盛り込む

ITSSは計画を立案しておくだけではなく、人材育成計画に盛り込み計画だった育成としていくことも必要です。人材育成については、短期的な計画ではなく、中長期的な視点での計画が必要になることを理解し盛り込むことが必要です。人材育成に盛り込むことで、体系だった育成を行うことが可能になります。こうした視点も意識した計画を立案していきましょう。

研修計画の立案と実施

次に、研修計画の立案とその実施を行います。人材育成計画に盛り込んだ内容を実践し、その効果についての評価(振り返り)を行うことで、必要に応じた軌道修正なども実施し、より内容をブラッシュアップしていきます。研修計画の立案や実施方法については、何度も振り返りを行うことで、より精度が向上するという視点を持ち、繰り返しPDCAを回すことが必要だと理解しておくことが必要です。


 

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07ITSS+(プラス)とは?

ITSS+は、第4次産業革命に必要とされるIT人材の育成を目的に策定された、新たなスキル標準です。ITSSが対象としている情報サービスの提供や、ユーザー企業の情報システム部門に従事している人のスキル強化を図る取組みに活用されることを想定して作成されています。

参照:情報処理推進機構|ITSS+とは

ITSS+の領域

ITSS+は、データサイエンス領域・アジャイル領域・IoTソリューション領域・セキュリティ領域に分かれています。また、ITSS+では、それぞれの経験や実績、活動の価値を踏まえて、共通レベル定義に照らしあわせ、総合的に判断されることを想定しています。

参照:共通レベル定義

 

08まとめ

本記事は、ITスキル標準をテーマに類似用語との違いやレベルについても解説しています。IT人材の育成を行う際の標準となるITスキル標準は、自社の人材育成においても大きな評価j軸として利用できる内容です。その内容は、IPAのHPにも明記されていますので、その内容も参考にし自社の人材を育成していきましょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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