管理職不足の影響とは?理由や対策方法を解説

日本では少子高齢化が進行しており、人手不足に直面する企業も少なくありません。こうした環境下で、企業の組織運営に大きな影響を及ぼし得るのが、管理職のなり手不足です。経営と現場の結節点となる管理職が不足すると、既存管理職の負担増加だけでなく、組織の生産性低下や離職リスクの上昇を招く可能性もあります。本記事では、管理職不足の背景を深掘りし、組織の変革に必要な具体的な対策を解説します。
- 01.管理職不足の現状
- 02.管理職不足の理由
- 03.管理職不足が与える影響
- 04.管理職不足を解消するための対策
- 05.管理職が学ぶべきスキル
- 06.管理職のスキル向上に役立つSchoo for Business
- 07.まとめ
01管理職不足の現状
企業が経営戦略を実現する上で、経営と現場の結節点となるリーダー人材や管理職は、重要な役割を担っています。一方、帝国データバンクが公表した「リーダー人材不足に関する企業の意識調査」では、有効回答企業のうち67.8%が、リーダー人材(管理職相当以上)の不足を感じていることが明らかになっています。同調査では、少子高齢化を背景とした人手不足に加え、現場負荷の増加によって次世代リーダーの育成に十分な時間を確保しにくい状況も示されています。こうした要素は一過性のものではなく、多くの企業に共通する構造的な課題でもあるため、管理職不足は企業にとって重要な経営課題の一つといえます。
▶︎参考:帝国データバンク|リーダー人材不足に関する企業の意識調査(2025)
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02管理職不足の理由
管理職不足の理由には、主に以下の3つがあります。
- ・管理職を取り巻く環境の悪化
- ・価値観の変化・多様化
- ・候補者のスキル不足
管理職を取り巻く環境の悪化
近年、経営環境の変化や業務量・役割の増加を背景に、管理職には成果創出と現場マネジメントの両立が求められています。一方で、ハラスメント対応やコンプライアンス対応、ダイバーシティ対応、働き方改革への対応といった新しい組織課題にも向き合う必要があり、管理職の業務は複雑化しています。パーソル総合研究所の「中間管理職の就業負担に関する定量調査」では、業務量の増加や新しい組織課題への対応増などが、管理職の負担感に影響を与える要因として示されています。
▶︎関連記事:管理職は「罰ゲーム」?人手不足の背景と原因、その解消方法について解説
価値観の変化・多様化
自己決定や個人の生活を重視する価値観が広がるなかで、「出世=幸せ」という画一的な見方は薄れつつあります。例えば東晶貿易株式会社が実施した20代の出世欲に関するアンケート調査(2022)では、「将来役職者になりたいと考えていますか」という質問に対し、「はい」と回答したのは22.4%でした。こうした結果は、若年層のキャリア観が必ずしも昇進一辺倒ではないことを示す一例といえます。将来的には、管理職候補者の確保や次世代リーダー育成に影響を及ぼす可能性があります。
候補者のスキル不足
管理職は、現場での業務遂行だけではなく、経営戦略の理解や組織マネジメントなど、多様なスキルが求められる立場です。Cegosが実施した国際調査「First-time managers 2025 International Barometer」(2025年5月公表)では、回答者の42%が新任管理職の採用や候補者の見極めに難しさを感じていると示されています。さらに68%は、従業員が管理職に必要な行動スキルを常に備えているわけではないと回答しました。また厚生労働省の「平成30年版労働経済白書」でも、管理職の登用・育成にあたって感じている主な課題として「管理職候補者の能力・資質にムラがある」が挙げられています。
03管理職不足が与える影響
管理職は組織運営において大きな影響力を持つ存在です。不足すると、組織の生産性低下や人材育成の停滞といった課題につながる可能性があります。以下では、管理職不足が与える影響について解説します。
組織の生産性の低下
管理職が不足すると、既存の管理職一人当たりが見る範囲が広がり、マネジメント業務に充てられる時間が減る傾向があります。部下への指導やフィードバックの密度が下がり、組織全体の業務効率や成果が低下する可能性があります。意思決定の質、優先順位付け、部門間の調整といった非定型業務に手が回らなくなると、企業の競争力や成果に対する下押し圧力が強まる可能性があります。
人材育成の停滞
管理職の重要な役割の一つが、部下指導を通じた人材育成です。管理職の余力が乏しくなると、短期的な成果を創出するための現場業務やトラブル対応に時間や労力が優先的に割かれやすくなり、結果として人材育成が停滞することがあります。こうした状況が続くと、部下のスキルギャップが埋まりにくくなり、管理職がプレイング業務の割合を減らせないまま、育成の停滞が管理職の負担をさらに高める悪循環が生じる可能性もあります。
既存管理職の負担増加
管理職のなり手が不足することは、既存の管理職への業務と責任の集中を招き、負荷の増大につながり得ます。厚生労働省「平成30年版労働経済白書」でも、管理職の主な悩みとして「職場の又は自分の業務量が多すぎる」ことが挙げられており、管理職は立場上、負荷を抱えやすい構造があることがうかがえます。こうした状況に管理職不足が重なると、責任や負担を分散しにくくなり、既存管理職の業務過多や心理的負担をさらに高める要因となり得ます。
エンゲージメント低下と組織文化の悪化
管理職不足は、マネジメントの品質低下を通じて、エンゲージメント低下などの組織的な課題の発生にもつながり得ます。業務アサインや仕事への意義付けはマネジメント業務の一環であることからも、上司と部下の関係性は、ワークエンゲージメントに大きな影響を与え得る要素と言えるでしょう。
離職リスクの高まり
管理職は部下に対して大きな影響力を持つ立場であることから、管理職不足は最終的に職場の離職リスクの高まりにつながる可能性もあります。管理職に時間的余裕がなくなると、部下への支援や成長機会の提供が十分に行われにくくなります。部下とのコミュニケーションが希薄になると、信頼関係を築きにくくなるだけでなく、部下が成長実感を持ちづらくなることも想定されます。
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04管理職不足を解消するための対策
管理職不足を解消するための対策には、主に以下の8つがあります。
- ・管理職の役割・業務の見える化と整理
- ・自社の管理職に必要なスキルの明確化
- ・体系的なスキル獲得機会の提供
- ・管理職の処遇の見直し
- ・シェアドリーダーシップを活用する
- ・ダイバーシティ経営の推進
- ・採用から登用までの一貫したキャリア形成支援
- ・既存管理職のエンゲージメント強化
管理職の役割・業務の見える化と整理
管理職不足に対応するために大切な取り組みの一つが、管理職の役割と業務を見える化し、過剰な負荷を構造的に減らすことです。具体的には、管理職が担っている業務を棚卸しし、業績管理・部下育成・横断調整・ハラスメント対応・コンプライアンス対応など、種類別に分解します。廃止・縮小できる業務、メンバーへの権限委譲が可能な業務、ITツールや外部リソースで代替・補完できる業務を精査し、組織的な視点で取り組むことが重要です。
自社の管理職に必要なスキルの明確化
組織として管理職不足に対応するには、自社の管理職に必要なスキルを棚卸しし、明確化することが大切です。どんなスキルが必要なのかを整理したうえで、現状の非管理職のスキルとのギャップを把握すれば、次世代リーダーの効果的な育成につなげられます。また、スキルセットを明示することは、従業員が自律的にキャリア形成していく上で有益な情報となり得ます。
体系的なスキル獲得機会の提供
現場のプレイヤーは個人としての成果を求められますが、管理職はマネジメント対象となる組織単位で成果をあげることが求められる役割です。Schoo for Businessの授業『プレイヤーからマネジャーになったら』に登壇する葛西健一郎先生は、マネジャーの役割として「限りある人的資源を適切に配置し、組織パフォーマンスを高める」「部下育成を通じて、メンバー一人ひとりのパフォーマンス最大化を図る」という2つの観点を紹介しています。管理職に対して必要なスキルを理解・習得する機会を組織的に提供することが重要です。
管理職の処遇の見直し
管理職は担う責任が大きく、構造的に業務負荷も高まりやすいことから、それに見合った処遇を受けられているという納得感がない場合、管理職として働く意欲に影響する可能性があります。マイナビ社の「管理職の悩みと実態調査」(2025)では、「管理職としての働きと、給料は見合っていると思いますか」という質問に対し「いいえ(見合っていない)」と回答した人の割合は全体で61.4%でした。業務負荷や責任の重さに対して納得感が持てるよう、処遇を見直すことも検討すべき施策の一つです。
シェアドリーダーシップを活用する
管理職不足に対応するには、管理職に集まりやすい負荷を分散するという視点が重要です。Schoo for Businessの授業『職場を元気にするシェアド・リーダーシップ』に登壇する石川淳先生は、シェアドリーダーシップを「リーダーとメンバーの概念定義が曖昧で、必要な際に必要なメンバーがリーダーシップを発揮していく、といったグループ状態およびそのグループでのリーダーシップ」と解説しています。不確実性の高い環境に対して、メンバーそれぞれが自分の強みを活かしてアイデアを出し合える環境をつくることは、管理職への負荷集中を緩和するだけでなく、チームの創造性を高めることにもつながり得ます。
ダイバーシティ経営の推進
リーダーシップの分散と並行して、登用の母集団そのものを広げるアプローチも有効な手段の一つです。経済産業省のレポート(2025年2月公表)では、日本企業における管理職に占める女性の割合は、諸外国に大きな遅れをとっている状況であることが紹介されています。女性の管理職登用を進めていくことは、管理職不足に対する打ち手の一つになり得ます。そのためには、登用基準の透明化、長時間労働を前提としない役職設計、ロールモデルの可視化、産休・育休後の復帰キャリア設計の整備など、多様な人材が活躍するための土台形成が重要です。
採用から登用までの一貫したキャリア形成支援
管理職候補者不足を解消するためには、採用から配置・育成、登用までを一貫して捉えたキャリア形成支援が重要です。若手社員や中堅社員に対して、キャリア面談や、成長につながるジョブアサインなどのキャリア形成支援を行うことは、管理職を目指す自信を高めるうえでも有効な手段になり得ます。
既存管理職のエンゲージメント強化
Schoo for Businessの授業『部下はどうしてすぐ辞めるのか?』に登壇する藤田耕司先生は、部下は自身のキャリアを考える上で、普段接している上司の姿をロールモデルとしやすいことを紹介しています。管理職のなり手不足を防ぐためには、上司がワークエンゲージメント高く、いきいきと働いている姿を見せることが重要です。仕事の裁量やキャリア開発の機会、周囲からの支援といった「仕事の資源」を充実させるとともに、過度な負荷が常態化しないよう支援することが組織的な観点では重要です。
05管理職が学ぶべきスキル
管理職が学ぶべきスキルには、主に以下の4つがあります。
- ・チームビルディング
- ・人材育成
- ・目標設定・進捗管理
- ・リーダーシップ
チームビルディング
管理職は組織を率いて成果を出す役割であるため、メンバー相互のコミュニケーションを促進し、組織としてのパフォーマンスを高めていく必要があります。Schoo for Businessの授業『いまのメンバーで仕事が面白くなるチームビルディング』に登壇する長尾彰氏は、ただ人が集まり与えられた役割やルールに従って動く「グループ」と、自分たちで関係性や協働のあり方をつくりながら動く「チーム」は異なるものとして説明しています。管理職には、組織の状態や成長ステージを見極めながら、その時々でチームの成長に必要な働きかけを行うスキルが求められます。
人材育成
管理職の主要な業務の一つが人材育成です。そのため、管理職には部下の個性や状況を理解したうえで、信頼関係を築き、効果的なフィードバックやコーチングを行う力が求められます。相手の状況に応じたフィードバックの使い分け、目標設定支援、1on1ミーティングの運用といった具体的な手法を学びながら、実践と振り返りを重ねることがポイントです。
目標設定・進捗管理
目標設定・進捗管理は、チーム全体の目標を明確に設定し、メンバーごとの進捗を適切に把握しながら成果に導くスキルです。SMARTやOKRなどのフレームワークを用いた目標設定と、定例での進捗確認の仕組み化が役立ちます。メンバーの業務負荷を把握しながら目標達成を支援する姿勢は、部下の育成不足を防ぐうえでも重要です。
リーダーシップ
リーダーシップとは、職場やチームの目標達成のために他者に及ぼす「影響力」そのものを指す言葉です。メンバーに影響力を発揮し、共通の目標に向けて行動できるよう働きかけていくことは、管理職にとって重要なスキルです。開発には、研修などによるインプットに加え、上司やメンターなどの支援のもとで実践し、振り返りを通じて行動として定着させていくことが効果的です。
06管理職のスキル向上に役立つSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
管理職のスキル向上に役立つ講座
ここでは、Schoo for Businessの講座から、管理職のスキル向上に役立つ講座を紹介します。
プレイヤーからマネジャーになったら
この授業では、「プレイヤー」と「マネジャー」の役割の違いや、プレイングマネジャーから脱却するためのポイントについて学ぶことができます。講師は、組織開発・人材開発に詳しい株式会社NEWONEの葛西健一郎さんです。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
"I"から"We"へ踏み出すチームビルディング
この授業では、価値観や意見の違いを乗り越え、チームで仕事を進めていく上で大切なマインドを学びます。「お互いに協力し合えるチームを作りたい」と思っている方や価値観や意見が異なるメンバーとの関わり方を模索している方におすすめの授業です。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
パフォーマンスをアップする「ポジティブフィードバック」
ポジティブフィードバックとは人や物・出来事の良い面を指摘するフィードバックの一種です。このコースでは、チームのモチベーションをアップさせ、パフォーマンスを改善させる手法について学ぶことができます。講師は、『人、組織が劇的に変わるポジティブフィードバック』の著者であるヴィランティ牧野祝子先生です。
パフォーマンスをアップする「ポジティブフィードバック」を詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
目標設定と管理への基礎理解
この授業では適切な目標設定やその具体的な手法、フレームワークについて学ぶことができます。講師は、人材開発領域にてプロコーチとして活躍される大坂谷勇輝先生です。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
チームをまとめて関係性を高めるマネジメント術
この授業では、現場で活躍しているマネジメント層が抱えている「コミュニケーション不足」や「信頼感の欠如」といったチームの関係性に関わる悩みを解消するための方法を学びます。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
07まとめ
少子高齢化が進む日本において、管理職不足は一部企業で顕在化している課題です。管理職不足の背景には、管理職業務の複雑化や難易度の高まり、キャリアに対する価値観の多様化など、さまざまな要因が絡み合っています。管理職不足が発生すると、既存管理職の負荷が高まり、結果として組織の生産性低下や離職リスクの上昇といった影響を及ぼす可能性があります。こうした課題に対応するには、業務の見える化と整理による構造的負担の軽減、処遇の見直しによる管理職として働く魅力の回復、そして体系的なスキル獲得機会の提供といった複合的な対策を通じて、管理職のあり方を見直していくことが重要です。




