研修は意味がない?そう言われる理由や解決策を紹介

企業にとって研修は、個人のスキルや知識を高め、生産性向上に貢献する重要な手段です。しかし、その設計や実施方法によっては「意味がない」と受け止められることもあります。具体的には、目的やゴールの曖昧さ、内容と受講者レベルの不一致、受け身になりやすい研修設計などです。本記事では、こうした課題を整理したうえで、研修で得た学びを現場で活かすための具体的な方法を紹介します。
- 01.研修が意味ないと言われる理由
- 02.研修は本当に意味がないのか?
- 03.意味ない研修をなくすための解決策
- 04.人事業務に役立つSchoo for Business
- 05.まとめ
01研修が意味ないと言われる理由
研修は、企業における人材育成の主要な手段の一つです。内閣府経済社会総合研究所の分析では、Off-JT(勤め先の指示で、仕事に役立てるための訓練を受けたこと)の受講について、2年後の時間あたり賃金率に対する効果が示されています。具体的には、Off-JT受講による効果は、賃金増加率で4.2%とされています。一方で、研修に参加をしても効果が実感できず、「研修をしても意味がない」といった言葉が聞かれることもあります。このような状況に陥る理由は、大きく分けて「目的が不明確であること」と「学びを現場で活かせていないこと」の2つがあります。
▶︎参考:戸田淳仁. (2019). 企業内部の能力形成とその効果-OJTとOFF-JTの相乗効果に関する分析-. 経済分析, 199, 68-98.
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

目的が不明確
研修の目的やゴールが不明確な場合、受講者はその必要性や参加意義を理解しづらく、結果として「意味がない」と感じやすくなります。例えば、コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修であっても、資料の読み合わせに終始し、受講後にどのような行動変容を期待しているのかが示されていなければ、受講者は「なぜ集合研修で実施するのか」「インプットした知識をどのように業務で活かすのか」を理解しにくくなります。また、「毎年恒例だから」という理由だけで実施される年次別研修も、対象者に求める役割や到達目標が明確に示されていなければ、参加者が意義を感じにくい例の一つです。
学びを現場で活かせていない
研修で得た学びを現場で活かせないことも、研修が意味ないと言われる主要な理由の一つです。一口に「学びを活かせない」と言っても、それにはさまざまな要因が考えられます。
- ・「参加することが目的」になっている
- ・定着支援が不十分
- ・受講者の課題認識が不十分
- ・参加者レベルと内容の不一致
- ・プログラムや講師の質が低い
「参加することが目的」になっている
研修の目的が設計上は明確であっても、受講者に十分伝わっていなければ、参加者は「研修に参加すること」自体を目的化してしまうことがあります。その場合、学んだ内容を現場でどう活かすかまで意識が向きにくくなり、結果として研修の意味を感じにくくなります。法令等の関係で受講が必須となっている研修や、特定の年次になると必ず参加する研修では、受講を完了することに意識が向きやすくなる場合があります。
定着支援が不十分
一般に、知識やスキルは、アウトプットや実践、その過程で得た気づきを通じて定着しやすくなります。そのため、研修が単発の施策で終わり、研修後の定着支援が不十分な場合、研修で学んだスキルが現場で活かされにくくなります。実践機会の提供だけでなく、上司や人事、同僚などからのサポートをあらかじめ設計しておくことが重要です。
受講者の課題認識が不十分
受講者自身がその学習の必要性について納得していないと、「研修に意味ない」と感じやすくなります。特に業務外で行われる研修は、業務で忙しくしている中、時間をやりくりして参加することも少なくありません。研修の意義について十分理解していないと、真剣に取り組む姿勢が生まれにくくなります。また、「自分はすでにスキルがある」と受講者が思い込んでいる場合も、課題認識が不足し、効果が薄れる原因となります。
参加者レベルと内容の不一致
提供している研修の難易度が対象者に対して高すぎたり低すぎたりすることも、研修効果を阻害し、意味がないと思われやすくなります。そのため、研修対象者を選定するときは、対象者の持つ課題や属性にあまり大きなばらつきが出ないようにすることも、重要な観点です。例えば、管理職研修を実施するにあたっても、新任管理職とマネジメント経験が長い部長とでは、向き合う課題や悩みも異なるでしょう。
プログラムや講師の質が低い
研修の目的が明確で、事後の定着支援の仕組みがあったとしても、肝心のプログラムやそれを伝える講師の質が十分でない場合、研修の効果は発揮されにくくなります。例えば、自社ではあまり想定されないケーススタディや、業界特性の異なる事例ばかりを扱っても、期待する効果は得られにくいでしょう。また、法改正や技術変化が頻繁に起こる領域の研修では、教材が最新の状況に対応していないことも、質の低さにつながる一例です。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

02研修は本当に意味がないのか?
研修は、従業員のスキルや知識を高め、生産性向上やパフォーマンス改善につなげる一つの手段です。組織の人材育成における方法としては代表的なものであり、組織における研修の効果については、国内外で複数の研究が行われています。
研修効果について
研修の効果の具体的内容について、従業員が知識を理解した状態になることから、従業員の満足度の向上、実際の行動変容、業績の変化まで、さまざまな効果が想定されます。ここでは、研修の効果を測る指標としてよく使われる「カークパトリックの4段階評価」に沿って、各段階における研修効果の大きさを検証した研究を紹介します。
Winfred Arthur Jr.らは、組織研修の有効性を検討するために、1960年から2000年までの関連文献を調査し、最終的に得られた162のソースと397の独立したデータセットを対象にメタ分析を行いました。その結果、カークパトリックの4段階評価に対応する基準である「反応」「学習」「行動」「結果」のすべてにおいて、中程度から大きい効果量が示されています。具体的には、反応基準でd=0.60、学習基準でd=0.63、行動基準でd=0.62、結果基準でd=0.62でした。一方で、行動変容や業績成果に近づくほど、効果量が相対的に小さくなる傾向も見られており、学びを実践する際の難しさを示唆していると考えられます。
▶︎参考:Winfred Arthur Jr. et al. (2003) "Effectiveness of Training in Organizations: A Meta-Analysis of Design and Evaluation Features." Journal of Applied Psychology, 88(2), 234-245.
▶︎関連記事:カークパトリックモデルとは|4段階による研修の効果測定方法を紹介
現代の企業が直面する課題と研修の重要性
現代の日本では、少子高齢化や生産年齢人口の減少といった社会構造の変化が進んでいます。そのため、経済成長や社会の活力を維持する観点から、成長分野への投資に加え、企業における一人ひとりの生産性向上が重視されています。こうした背景のもとで注目されているのが、人材を企業価値の源泉として捉え、戦略的に投資する「人的資本投資」や、新しい職務・業務内容の変化に対応するために必要なスキルを獲得する「リスキリング」です。上で紹介した研究の結果を踏まえると、研修は、従業員が新しい知識やスキルを獲得し、個人の生産性向上や組織成果の向上につなげるための重要な施策の一つに位置づけられると考えられます。
03意味ない研修をなくすための解決策
意味のない研修をなくすためには、主に以下の解決策が有効です。
- ・研修の目的と必要性の伝達
- ・実利を感じる実践的な内容を取り入れる
- ・現場での実践を見据えた設計をする
- ・受講者の上司と連携する
- ・受講者同士のコミュニケーション設計
- ・受講環境を整える
- ・研修後の交流を設計する
- ・受講者の成長意欲を刺激する
- ・組織の学習風土を醸成する
研修の目的と必要性の伝達
研修が「意味がない」と思われるのを避けるには、受講者自身が学習の必要性を認識することが極めて重要です。特に企業研修では、従業員が日々の業務と調整しながら研修に参加することも少なくありません。Schoo for Businessの授業『企業研修の進め方 設計と効果測定のコツ』に登壇する深田浩嗣先生は、初期設計時の基本方針として以下のプロセスを紹介しています。
- ・①人材育成方針、役割期待の確認
- ・②経営陣や職場上長、研修対象者本人へのヒアリング
- ・③パフォーマンスゴール(行動変容目標)の設計
- ・④トレーニングゴール(研修目標)の設計
このように、企業の人材育成方針や現場の期待、受講者本人の課題感を踏まえて研修の位置づけを整理し、最終的な研修目標を設計することで、受講者に対して、企業戦略や職場で求められる役割と結びつけて研修の意義を伝えやすくなります。
実利を感じる実践的な内容を取り入れる
研修で学んだ内容が、実際の業務改善や仕事上の課題解決につながるように設計することも、研修に意義を感じてもらううえで重要です。学んだ内容が業務に役立つと実感できることで、受講者の学習意欲が高まりやすくなるためです。研修内容を検討する際は、対象者の業務習熟度や受講時期を考慮することが重要です。例えば、新任管理職向けの研修であれば、着任直後には基本的な役割理解やメンバーとの関係構築を扱い、一定期間が経過した後には評価・育成やチームマネジメント上の課題解決を扱うなど、受講者が直面しやすい課題に合わせて内容を設計するとよいでしょう。
現場での実践を見据えた設計をする
Schoo for Businessの授業『社員研修のあるべき姿』に登壇する鈴木克明先生は、「経験から自分なりの理論を紡いでいくのが学習である」という基本的な考え方を示した上で、研修では現場での失敗を擬似的に体験できるように設計する、というポイントを紹介しています。コルブの経験学習理論では、社会人の能力の70%以上は現場の経験から獲得されるとされています。一方、業務における「失敗」は、顧客からのクレームなどさまざまな影響を及ぼすため、意図的に「失敗」の機会設計をするのは困難でもあります。そこで研修を活用し、参加者が課題に気づき、自らの頭で考えるためのきっかけを提供するのです。
受講者の上司と連携する
企業での人材育成は、OJT・Off-JT・自己啓発を組み合わせて行うことが一般的です。特に研修については、研修後に実践を通じて得た知識やスキルを体得していくことが必要であるため、OJTや現場での実践機会との接続がポイントとなります。受講者の育成や担当業務の割り振りを担う上司と連携することは、重要な要素の一つと言えるでしょう。
受講者同士のコミュニケーション設計
研修をより効果的なものにするためには、受講者同士が学びを共有し合う場を設計することも重要です。グループワークやグループディスカッションを通じて、受講者同士が互いの視点や知識を共有しながら課題解決に向き合うことで、自分だけでは気づきにくい考え方に触れることができます。その結果、受講者の視野が広がり、学びを深める一助となります。
受講環境を整える
研修を設計・運営する上で、受講環境の整備も重要な観点の一つです。受講環境には、会場の設備やレイアウトなどの物理的な環境と、リラックスして積極的に参加できる心理的な環境の両方が含まれます。これらの環境が整備されることで、受講者が緊張せずに積極的に研修に参加できる状態が確保されます。
研修後の交流を設計する
学びを進める上で、他者の視点を取り込み深める工夫は、研修の中だけではなく、研修後の交流設計においても可能です。例えば、研修参加者同士で情報交換をできる場を作ったり、互いに習得状況をサポートし合う体制を作ったりすることが効果的でしょう。このようなコミュニケーション設計は、学びを深めるだけではなく、現場での知識の実践に対するモチベーションを維持・向上させる上でも役立ちます。
受講者の成長意欲を刺激する
どれほど研修プログラムが充実していて、受講者の課題に合ったものであったとしても、受講者本人に「その課題を克服し、成長したい」という意欲がなければ、知識やスキルの定着を図ることは難しくなります。研修設計において、研修の目的や意義を伝えることは、受講者の意欲を高めるうえで重要です。ただし、それだけでは十分とは限りません。研修内容と本人のキャリアや日々の業務がどのように結びつくのかを日常的なコミュニケーションの中で確認し、成長を支援する仕組みを整えることが重要です。
組織の学習風土を醸成する
個々の従業員の学習意欲を高め、研修に主体的に向き合ってもらう観点では、組織全体で学びを後押しする風土を醸成することも重要です。職場において、新しい知識・技能を積極的に獲得しようとする雰囲気や、研修内容を実践することが職場メンバーから好意的に受け止められる風土があることは、受講者が学ぶ必要性を認識し、主体的に行動するうえで効果的です。例えば、従業員が学んだことを共有した際に、周囲が賞賛や感謝を伝えることが挙げられます。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

04人事業務に役立つSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
研修の企画・設計に役立つ講座
ここでは、オンライン研修サービスSchooの講座から、研修の企画・設計に役立つ講座を紹介します。
企業研修の進め方 設計と効果測定のコツ
この授業は、企業研修の設計段階にも触れながら、正しい効果検証の考え方、方法について紹介します。授業の後半には企画した新しい研修手段や内容を意思決定層に提案する際のポイントについても解説していきます。
-
HRプランニング研究所 代表
2003年大学院修了後、外資系コンサルティングファームでSEとして勤務。その後、一貫して複数の大手上場企業で人事(HRBP)担当。2015年に「HRプランニング研究所」を立ち上げ、人事コンサルタントとして、企業を対象にメンタルヘルス施策やHRIS選定支援を行う。2023年から、厚生労働省(厚生労働科学研究 政策科学推進研究事業)研修効果測定委員として、人事専門家の知見を活かしている。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
研修の組み立て方 ‐ 設計・実施・評価
この授業では、研修の設計から実施、評価までの一連の組み立て方について学びます。研修担当者のために研修の設計・実施・評価がデザインできるように、インストラクショナルデザイン(ID)をベースにヒューマンパフォーマンスインプルーブメント(HPI)、プロジェクトマネジメント(PM)の考え方を掛け合わせたビジネスインストラクショナルデザイン(BID)を基に研修の組み立て方について学んでいきます。
-
サンライトヒューマンTDMC株式会社 代表取締役社長
熊本大学大学院 教授システム学専攻 非常勤講師。製薬業界での営業、トレーニング部門を経て、起業。HPIやIDを軸とした企業内教育のコンサルティングやインストラクショナルデザイナー、インストラクターを育成する資格講座の運営を行っている。主な著書:『ビジネスインストラクショナルデザイン』(中央経済社、2019年)
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
これでわかる研修の目的設定とSchooの使い方
この授業では、研修の目的の明確化と目標設定、その達成に向けたSchooの活用術について学びます。研修を初めて実施する、人事に着任して間もない方をはじめ自社の研修に変化をつけたいもしくはゼロベースで見直したいという方たちの「どうすればいいかわからない」と悩みにお答えするべく、研修設計のスタート時にまず見ていただきたい学習コンテンツとなっております。
-
サンライトヒューマンTDMC株式会社 代表取締役社長
熊本大学大学院 教授システム学専攻 非常勤講師。製薬業界での営業、トレーニング部門を経て、起業。HPIやIDを軸とした企業内教育のコンサルティングやインストラクショナルデザイナー、インストラクターを育成する資格講座の運営を行っている。主な著書:『ビジネスインストラクショナルデザイン』(中央経済社、2019年)
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
社員研修のあるべき姿
この授業では、社員研修の必要性や役割についてインストラクショナルデザイン(ID)を軸に学びます。研修担当者として「何のために社員研修を行うのか」「研修の役割と担当者としての立ち位置」など、研修の根本的な考え方をまず問い直すために、インストラクショナルデザイン(ID)をもとにした研修のあるべき姿について学んでいきましょう。
-
熊本大学教授システム学研究センター 教授
1959年生まれ。Ph.D.(フロリダ州立大学教授システム学専攻)。ibstpi®フェロー・元理事(2007-2015)、日本教育工学会監事・第8代会長(2017-2021)。主著に「学習設計マニュアル(共編著)」「研修設計マニュアル」「教材設計マニュアル」などがある。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
05まとめ
研修が「意味がない」とされる主な理由は、目的が不明確なまま実施されることや、学んだ知識・スキルが現場で実践・定着しないことにあります。研修効果を高め、「意味のない研修」をなくすには、学習の必要性を伝えること、実践的な内容を取り入れることに加え、研修後の交流機会の設計、成長意欲の刺激、組織の学習風土の醸成など、さまざまな観点から研修を設計することが重要です。



