人材育成に関する理論19選をタイプ別解説!重要性やポイントについても紹介

人材育成理論とは、企業が従業員の能力を向上させ、組織の目標達成を支援するための体系的な考え方やアプローチです。経験学習理論やPM理論、X理論・Y理論など、さまざまな理論が実務に活用されており、社員の成長と組織成果の両立に役立ちます。本記事では、代表的な人材育成理論をタイプ別に解説し、実践での活用ポイントや注意点も紹介します。
- 01.人材育成の理論とは
- 02.人材育成・学習に関する理論
- 03.組織学習に関する理論
- 04.リーダーシップ・マネジメントに関する理論
- 05.スキルモデル、能力に関する理論
- 06.人材育成に使える心理効果
- 07.人材育成理論の実践におけるポイント
- 08.人材育成に役立つSchoo for Business
- 09.まとめ
01人材育成の理論とは
人材育成の理論とは、個人の成長と組織の発展を両立させるための体系的な考え方や手法の総称です。理論にもさまざまな種類があり、人材育成・学習に関するもの、組織学習に関するものなど、いくつかの系統があります。さらに、理論を実務に落とし込むうえでは、能力評価・研修評価のフレームワークや、学習効果を高める心理学的知見(例:自己決定理論)といった関連概念も有効です。これらを合わせて活用することで、より効果的な人材育成の実現が期待できます。
人材育成理論の重要性
理論を体系的に学ぶことなく育成施策を進めると、起こりがちな「つまづき」があります。たとえば、「上司の成功体験をそのまま部下に押しつけてしまう」「研修を実施しても成果との因果が説明できず、予算の継続が難しくなる」「そもそも何を改善すべきかが曖昧なまま施策が走る」といったケースは、多くの現場で見られる傾向ではないでしょうか。
理論を知ることで、こうした属人化や根拠の不在に対処しやすくなります。人事担当者が経営陣や社員へ施策の意図を説明する際にも、「コルブの経験学習モデルに基づき、内省の時間を研修に組み込んだ」といった形で判断軸を示すことが可能になります。また、組織の目的や個人の発達段階に応じて最適な手法を選び分ける視座が得られるため、限られた時間やリソースのなかでも研修効果を高めやすくなるでしょう。
ただし、理論はあくまで「考える枠組み」であり、自社の文脈に合わせた解釈と応用が求められる点には留意が必要です。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

02人材育成・学習に関する理論
人材育成・学習に関する理論は、社員の成長を支え、組織成果へつなげるための知見を体系化したものです。業務経験、内省、観察、評価など多様な切り口から「人はどのように学ぶのか」を整理することで、効果的な育成や研修設計に役立てられます。ここでは、代表的な理論をそれぞれの特徴とあわせて解説します。
ロミンガーの法則(70:20:10の法則)
ロミンガーの法則(70:20:10の法則)は、個人の能力開発において、7割が業務上の経験、2割が人との関わり、1割が研修や読書などの自己啓発で得られるという考え方です。この法則は、米国の人事コンサルタント会社ロミンガー社が経営幹部のリーダーシップに有効な要素を調査・分析して提唱されました。
Schoo for Businessの授業『仕事の成果につながる学び方』に登壇する吉田裕子先生は、ロミンガーの法則を背景に、自己啓発の学びは仕事と絡めることで相乗効果が期待できることを解説しています。
▶︎関連記事:ロミンガーの法則とは?「70:20:10」の法則の内容を徹底解説
経験学習モデル
コルブの経験学習モデルは、人が経験を通じて学ぶ仕組みを「具体的経験」「省察的観察」「抽象的概念化」「積極的実験」という4つのステップで体系化した理論です。まず具体的な経験をし、それを多角的に振り返り(省察的観察)、得た教訓を内面化し(抽象的概念化)、次に行動で試す(積極的実験)ことで学びが定着します。
Schoo for Businessの授業『ビジネスパーソンの「学習設計マニュアル」』に登壇する鈴木克明先生は、理論をもとに、ただ経験をするだけでは十分に学べないことを解説しています。同じ経験をしても学びの差が生まれるのは、行動を客観的に振り返り、改善点を見出し、別の場面で試すといったサイクルを回せているかどうかが影響します。
▶︎関連記事:経験学習モデルとは?学習における重要性と構成要素を解説
成人発達理論
成人発達理論(成人の意味づけの発達を扱う理論群)は、成人期以降も人の「ものの見方・意味づけの枠組み」が発達しうることを、段階モデルとして整理した考え方です。なかでもロバート・キーガンらの構成発達理論は1980年代以降に体系化され、成人が環境や他者との関係のなかで捉え方を更新していくプロセスを説明しています。
主な発達段階として、周囲の期待に応える「環境順応型知性」、自分や組織より大きな目的のために行動する「自己主導型知性」、そして地球システム全体に当事者意識を持つ「自己変容型知性」があります。これらの段階が上がることは「人としての器の拡大」と捉えられます。
また成人発達理論は、自律型組織を作るための理論である「ティール組織」の背景理論の一つとなっています。Schoo for Businessの授業『自律的組織を目指した組織開発において必要なこと』では、講師の松田光憲先生が、理論の解説と株式会社オズビジョンでの取り組み事例を紹介していますので、関心のある方はぜひご覧ください(※画像は第1回授業から引用)。
▶︎参考:The future of management is teal
社会的学習理論
社会的学習理論(モデリング理論)は、アルバート・バンデューラ氏によって1970年代に確立された、「自分自身が直接経験していなくても、他者の行動を観察・模倣する(モデリング)ことで学習が可能である」と説く理論です。それまでは直接経験と罰や報酬による強化を中心に学びの仕組みを説明する枠組みが主流だったところ、観察学習と認知過程の視点を加えました。
理論では、社会的学習が成立するには、以下の要素が必要だとされています。- ・注意(Attention):手本となる行動に注目する
- ・保持(Retention):観察した内容を記憶に留める
- ・再現(Reproduction):実際に自分でやってみる
- ・強化と動機づけ(Motivation):結果を見て行動を調整する
メリルのID第一原理
メリルのID第一原理は、インストラクショナルデザイン研究者M・デイビッド・メリル氏が提唱した原理です。効果的な学習を実現するための5つの要素として、以下を提示しています。
- ・課題(Real World Task):現実的な課題の提示から始める
- ・活性化(Activation):既有の知識や経験を想起させる
- ・例示(Demonstration):具体的な事例やモデルを示す
- ・応用(Application):学んだことを実際に試す、実践的練習
- ・統合(Integration):学びを日常や業務に結びつける
Schoo for Businessの授業『ビジネスパーソンの「学習設計マニュアル」』で鈴木克明先生は、この理論を用いた研修では「教える前にまずやってもらう」ことが、ポイントであると解説しています。提示された課題に対して、自分ならどうするかを過去の経験や既存の知識をもとに考えます。これによって頭が活性化してから、講師によるお手本の提示(例示)の移ることで、学習者は自身の不足点を踏まえてポイントを押さえた学習が可能になります。
カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、米国の研究者であるドナルド・L・カークパトリック氏が提唱した研修の4段階評価法です。研修効果を「反応(受講者の満足度・有用性)」、「学習(知識・スキルの習得度)」、「行動(業務での行動変容)」、「結果(組織への業績影響)」の4段階で測定します。一般に、上位レベルになるほど事業成果に近い指標を扱える一方で、測定指標の設計やデータ取得の難易度も上がりやすくなります。
Schoo for Businessの授業『ビジネスパーソンの「学習設計マニュアル」』で講師の鈴木先生は、研修においてスキルの習得度をテストしていない場合、まず押さえる必要があるのは「レベル2」の項目である、と解説しています。
03組織学習に関する理論
組織学習に関する理論は、個人の経験や知識を組織全体に共有・活用し、新たな知見を創造する仕組みを示します。知識の循環や変換プロセスを理解することで、持続的な成長や革新を生み出す土台を築けます。
SECIモデル
SECIモデルは、経営学者の野中郁次郎と竹内弘高が提唱した、組織的な知識創造のプロセスモデルです。個人が蓄積している言語化されていない知識や経験(暗黙知)を、文章や図表など共有可能な形(形式知)に転換し、組織全体で活用するサイクルを示します。プロセスは以下の4段階で構成されます。
- ・共同化(Socialization):体験の共有を通じて暗黙知を伝達する段階
- ・表出化(Externalization):暗黙知を言語や図表に変換する段階
- ・連結化(Combination):複数の形式知を組み合わせて新たな知識を生む段階
- ・内面化(Internalization):形式知を自ら実践し再び暗黙知として体得する段階です。
▶︎関連記事:SECIモデルとは|4つのプロセスや課題・解決策をわかりやすく解説
組織学習理論
組織学習理論とは、個人の学習ではなく、組織全体として知識を獲得し、行動様式を変容させていくプロセスを体系的に整理した理論です。それまでも研究領域として発展していましたが、1990年にピーター・センゲ氏の著書『学習する組織』が出版されたことで、より広く知られるようになりました。同氏は、組織学習を推進する要素として以下を挙げています。
- ・システム思考:物事の一部だけでなく、全体のつながり(構造)を把握する
- ・自己マスタリー:個人が自分のビジョンを持ち、主体的に学び続ける
- ・メンタル・モデル:組織に染み付いた「固定観念」を自覚し、取り払う
- ・共有ビジョン:全員が心から共鳴できる「目指すべき姿」を持つ
- ・チーム学習:対話(ダイアログ)を通じて、個人の力を超えた知恵を生み出す
04リーダーシップ・マネジメントに関する理論
リーダーシップ・マネジメントに関する理論は、組織やチームを導くための多様な考え方や手法を体系化したものです。状況や部下の特性に応じて最適な関わり方を選び、成果と人材成長を両立させる指針を提供します。
PM理論
PM理論は、社会心理学者の三隅二不二氏が提唱したリーダーシップ理論です。リーダーシップをP機能(Performance function:目標達成機能)とM機能(Maintenance function:集団維持機能)の2つの側面で捉え、両機能の高低によってリーダーをPM型・Pm型・pM型・pm型の4タイプに分類します。
PM理論において、P機能とM機能双方がバランスよく発揮できることが、理想的なリーダー像です。一方、人には得意不得意があるため、意識しなければどちらかに偏ることも少なくありません。Schoo for Businessの授業『リーダーシップの全体像 -リーダーシップとは何か?-』に登壇する安部哲也先生は、自身はP型が強いのかM型が強いのかを自覚することで、不足する方を意識的に補い、バランスのよいリーダーシップが発揮できることを解説しています。
▶︎関連記事:PM理論とは?4タイプのリーダー像やPM型リーダーを育成する方法を解説
SL理論
SL理論は、ポール・ハーシィとケン・ブランチャードが提唱した「状況に対応したリーダーシップ(Situational Leadership)」の理論です。部下を成熟度(能力と意欲)に応じて分類し、それぞれでリーダーシップスタイルを使い分けることで、育成効率を高めやすくなると考えます。リーダーシップスタイルの種類と、それに適した部下の分類は以下の通りです。
| スタイル | 特徴 | 適した部下分類 |
| S1:指示型 (Telling) | 具体的な指示を出し、細かく進捗管理 | D1:意欲はあるが能力が低い |
| S2:説得型 (Selling) | 指示は出すが、理由を説明し、質問や意見も促す | D2:能力が少し上がったが、壁に当たり意欲が揺れやすい |
| S3:参加型 (Participating) | 指示は最小限、意思決定をサポート | D3:能力は高いが、自信が持てず意欲にムラがある |
| S4:委任型 (Delegating) | 責任と権限を大幅に譲り、事後報告を求める | D4:能力も意欲も高く、自律的に動ける |
▶︎関連記事:SL理論とは?定義から育成や指導への活かし方まで詳しく解説
タックマンモデルは、心理学者のブルース・タックマンが提唱した、チームが形成から解散に至るまでの段階を、以下の5つのステップで説明するモデルです。
- ・形成期:チームが形成される
- ・混乱期:衝突が発生する
- ・統一期:共通の規範が形成される
- ・機能期:チームとして成果を出す
- ・散会期:プロジェクトの終了等でチームが解散する
Schoo for Businessの授業『部門間の連携不全を紐解く。』に登壇する清水久三子先生は、人数の大小に関わらず、どんなチームでも「混乱期」は訪れる可能性があることを解説しています。そのためチームビルディングに取り組む上では、はじめから上手くいくという前提に立たないことが大切です。衝突が起きても「やはり来た。混乱期に入ったんだ」と捉えることで、過度に悲観せず、冷静に受け止めやすくなります。
▶︎関連記事:タックマンモデルとは?チームを上手く機能させるための方法を解説
X理論・Y理論
X理論・Y理論は、アメリカの経営学者ダグラス・マクレガー氏が提唱した、人間観に関する2つの対照的な仮説です。X理論は「人間は本来仕事を好まず、命令や強制がなければ動かない」という前提に立ち、Y理論は「条件次第で人は自ら進んで責任を引き受け、創造性を発揮する」という前提に立ちます。
マクレガー自身はY理論的な環境づくりの重要性を強調しましたが、実務においてはどちらか一方に偏ることなく、部下の状況に応じた使い分けが求められる場面があります。たとえば、業務手順を覚えている段階の新人に対しては、一定の管理とフィードバック(X理論的な要素)が必要になることもありますし、自律的に動ける社員に対して過度な管理を行えばモチベーションを損なう恐れがあります。
▶︎関連記事:x理論/y理論 どっち? マクレガーの理論をわかりやすく解説
キャリアアンカー理論
キャリアアンカー理論は、組織心理学者のエドガー・H・シャイン氏が提唱した理論です。アンカーとは船のイカリのことであり、そこから転じて「個人がキャリアを選択・形成する上で最も重要視し、譲ることのできない価値観や欲求」を指します。また、これら価値観・欲求は「専門能力」「経営管理能力」「自律・独立」「安定・安全」「起業的創造性」「奉仕・使命」「純粋な挑戦」「ライフスタイル」の8つに分類されます。
理論では、職業人生が長くなるにつれてキャリアアンカーは絞られてくるものだと考えられています。一方でSchoo for Businessの授業『譲れないキャリアの指針を見つけるに登壇する廣川進先生は、エドガー・H・シャインが理論を提唱した時代と比較して環境の変化スピードが早まっていることを背景に、柔軟に考えることの重要性も補足しています。アンカーを一つに絞らず、第二・第三のアンカーも押さえながらさまざまな選択肢を取れるようにしておくことが、セカンドキャリアを考える際などに役立つ可能性があるためです。
05スキルモデル、能力に関する理論
スキルモデルや能力に関する理論は、個人の知識・行動・思考を体系的に整理し、育成・評価・配置の基準とする考え方です。「何を伸ばすべきか」を可視化することで、育成施策の焦点を明確にし、人材の成長と組織成果を結びつける指針として活用されています。
コンピテンシーモデル
コンピテンシーモデルとは、ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性(コンピテンシー)を抽出・定義し、それを人材育成や評価の基準とする考え方です。その背景には、ハーバード大学のデイビッド・C・マクレランド氏が1973年の論文で、学歴やIQなどの従来指標だけでは職務成果を十分に説明できない場合があるとして、成果に結びつく「コンピテンス(competence)」を測る重要性を提起したことが挙げられます。
単なる知識や経験年数ではなく、成果を生む行動様式や思考特性に着目することで、組織が求める人材像を明確化し、採用・配置・研修・評価に一貫性を持たせやすくなります。一方、コンピテンシーの定義が抽象的すぎると形式的なチェックリストになりやすく、環境変化に応じて定期的に見直さないと実態と乖離するリスクがある点にも留意が必要です。
▶︎参考:Testing for competence rather than for "intelligence.
カッツモデル
カッツモデルは、ロバート・L・カッツ氏が提唱したマネジメント層に必要な三つのスキル領域を示す理論です。第一に「テクニカルスキル」は専門知識や手法を活用する能力、第二に「ヒューマンスキル」は部下や関係者と良好な関係を築き協働を促す対人能力、第三に「コンセプチュアルスキル」は組織全体を俯瞰し複雑な問題を概念的に捉えて戦略立案や意思決定に活かす能力です。管理職がキャリア段階に応じてこれらをバランス良く伸ばすことで、組織成果の最大化と円滑なマネジメントが可能になります。
06人材育成に使える心理効果
人材育成に使える心理効果は、部下のモチベーションや行動変容を科学的に高めるための有効なヒントです。期待のかけ方や環境の整え方を工夫することで、自発的な成長と成果向上を促せます。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、「周囲からの期待が大きいと、成果も高くなる」という心理的効果です。上司が部下の能力を信じて期待をかけることで、部下のモチベーションが向上し、結果としてパフォーマンスの改善や成果に繋がるとされます。人材育成においては、OJT(On-the-Job Training)など上司が部下を個別指導する際にこの効果を意識することが重要です。具体的な行動例としては、日頃から部下の潜在能力を信じて肯定的な言葉をかけ、達成可能なストレッチ目標を設定するなど、積極的に期待を表明することで、部下の自発的な成長を促すことが挙げられます。
▶︎関連記事:ピグマリオン効果とは?定義からマネジメントでの活用法まで詳しく解説
ゴーレム効果
ゴーレム効果は、「周囲からの期待が小さいと、成果も低くなりやすい」という心理的効果であり、ピグマリオン効果とは真逆の現象です。例えば上司が部下に対しネガティブな期待を抱いたり、無関心であったりすると、部下のモチベーション低下を招き、成長が阻害されるリスクがあります。
そのため人材育成に関わる人は、このゴーレム効果を無意識に発生させないように気をつける必要があります。ゴーレム効果は「この人は飲み込みが遅い」「やる気がない」といった内面的な印象や決めつけから派生することが多いため、まずは相手の成長を信じて期待するマインドセットが重要です。また、ネガティブフィードバックばかりを伝えていると、ゴーレム効果が加速する恐れがあるため、フィードバック時は相手への期待の言葉も添えることなどが有効です。
▶︎関連記事:ゴーレム効果とは?職場に与える影響から対処法まで詳しく解説
ナッジ理論
ナッジ理論(nudge)は「ひじで軽く突く」「背中を押す」という意味を持ち、行動経済学や経済心理学に基づき、人々の行動変容を強制することなく自発的に促す手法です。この理論では、選択の余地を残しつつ、より良い選択を自然と選ぶような「ちょっとした工夫」(ナッジ)を施します。行動した本人は誘導された自覚がなく、自発的に決断したと感じるため、不快感を覚えることがありません。人々が冷静な判断のもと、望ましい選択をできるよう環境を整えることがナッジの重要なポイントです。
Schoo for Businessの授業『ハーバードで学んだ私たちの心理的安全性』に登壇する荒井弥栄先生は、日々のコミュニケーションにナッジの要素を取り入れることで、チームの心理的安全性を高めることができると解説しています。例えば、リーダーが自身の誤りを率直に認め共有することは、メンバーの発信に対する恐れやためらいを低減させ、心理的安全性を高めるための「ナッジ」の一つです。
▶︎関連記事:ナッジとは?従業員サポートに役立つテクニックを紹介
自己決定理論
自己決定理論は、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した動機づけに関する理論です。動機を「内発的動機づけ(行動そのものの楽しさや興味から生じる)」と「外発的動機づけ(報酬や評価など外的要因から生じる)」に大別し、内発的動機づけのほうが持続的な行動に結びつきやすいとしています。この理論で重要なのは、人間には「自律性」「有能感」「関係性」という3つの基本的な心理欲求があるとする点です。これらが満たされる環境ほど内発的動機づけが促進されやすいと考えられています。
Schoo for Businessの授業『15分で学ぶ 元 Google シニアマネージャーが教えるマネジメントの授業』に登壇する多田翼先生は、第2回授業において、内発的動機づけに基づいて部下に自ら動いてもらうためのポイントとして次の3つの要素を紹介しています。
- ・理解:部下の強み・弱み、仕事への原動力などをしっかり理解すること
- ・信頼:まずは上司から信頼して、任せること
- ・感謝:感謝を自分の言葉で伝えること
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

07人材育成理論の実践におけるポイント
人材育成理論を実践するには、各理論の本質を正しく理解し、目的に合う手法を選ぶことが重要です。具体的課題を明確にし、内省や効果測定を組み込むことで、理論を成果に結びつけられます。
各理論の本質と注意点を理解する
人材育成理論を実践する上で、その本質と注意点を正確に理解することが不可欠です。不正確な理解で実践しても期待する効果は得られず、かえって逆効果になる可能性もあります。
前提として、どの理論も万能では無く、理論が効果を発揮するための前提条件や制約が存在することも多いです。たとえばSL理論では、部下のステージを正確に見定めることができなければ、適切なリーダーシップスタイルを適用することは困難です。実践に移す前に、理論の限界や注意点を把握し、課題に適合しているかや実際の運用ができるかを検討することが大切です。
単独で判断せず、他の育成担当者と「自分の理論の使い方は偏っていないか」を相互にチェックし合うことも効果的でしょう。
アプローチするべき課題を明確にする
人材育成理論の実践において「目的を見失わない」ことはとても大切です。理論はあくまでも手段です。漠然と取り入れるのではなく、「リーダーシップを強化したい」「知識を組織全体で共有したい」といったアプローチすべき具体的な課題を明確にしましょう。
課題を明確化せずに取り組む場合に陥りやすいのが、さまざまな理論を複数、表面的に取り入れる「理論のつまみ食い」です。人材育成理論は組織や人が関わる分、実行・運用の設計に手間がかかります。広く薄く手を広げてしまうと、効果を測る指標が定まらないまま改善サイクルを回し切れず、「なんとなく上手くいかない」と早期に打ち切ることにもつながりかねません。 まず課題を明確にしたうえで、取り組むべき理論の優先度を決め、責任者・運用頻度・評価方法まで設計して、腰を据えて運用することが重要です。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

08人材育成に役立つSchoo for Business
Schoo for Businessでは約9,000本以上の授業を取り揃えており、様々な種類の研修にも対応しています。また、自律学習の支援ツールとしても活用いただいており、「主体的に学び、成長する人材」の育成を目的にして、ご導入いただくことが多いです。
人材育成におすすめの講座
Schooでは9,000本以上の動画をすべて自社で作成します。ここでは、人材育成・研修に関するSchooの講座を紹介します。人材育成や研修に関わる方であれば、10日間限定でSchooの全授業と研修管理ツールをお試しいただけるデモアカウントを発行可能ですので、気になるものがあれば、お気軽にお問い合わせください。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎
人材育成理論を体系的に学びたい方に最適な講座です。人事担当者やマネジャーはもちろん、将来のキャリア形成や組織貢献を目指すビジネスパーソンにもおすすめ。『図解 人材マネジメント入門』著者の坪谷邦生氏が、人事評価や働きがい、キャリア形成など人材マネジメントの基本概念と実践ポイントを解説し、組織に働きかける視座や実践的な知見を身につけられます。
-
株式会社壺中天 代表取締役
年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺』(2018)、『図解 人材マネジメント入門』(2020)など。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎を詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎
社会人として効果的に学び続けたい人におすすめの講座です。学校教育型の「勉強」と異なる、大人ならではの「学び方」を身につけ、自分に合った学習を設計する力を養えます。インストラクショナルデザインの第一人者・鈴木克明教授が、社会人の学習理論や実践方法を解説し、人事・研修担当者にも役立つ知見が得られます。
-
熊本大学教授システム学研究センター 教授
1959年生まれ。Ph.D.(フロリダ州立大学教授システム学専攻)。ibstpi®フェロー・元理事(2007-2015)、日本教育工学会監事・第8代会長(2017-2021)、教育システム情報学会顧問、日本教育メディア学会理事・第7期会長(2012-2015)、日本医療教授システム学会副代表理事、日本イーラーニングコンソシアム名誉会員など。主著に「学習設計マニュアル(共編著)」、「研修設計マニュアル」、「教材設計マニュアル」、「教育工学を始めよう(共訳・解説)」、「インストラクショナルデザインの原理(共監訳)」、「学習意欲をデザインする(監訳)」、「インストラクショナルデザインとテクノロジ(共監訳)」などがある。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎を詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎
企業の人事担当者や組織課題に悩む方におすすめの講座です。急成長するサイバーエージェントがどのように優秀な人材を育成し、挑戦的な組織文化を醸成し、独自の採用戦略を実践してきたのかを、実例を交えた3部構成(育成・組織文化・採用)で学べます。人材育成理論や実践ノウハウを具体的に知りたい方に最適です。
-
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括
上智大学文学部英文学科卒。 株式会社伊勢丹(株式会社三越伊勢丹ホ ールディングス)に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事したのち、1999年株式会社サイバーエージェントに入社。 インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は取締役として採用・育成・活性化・適材適所の取り組みに加えて、 「最強のNo.2」「クリエイティブ人事」「強みを活かす」など複数の著作出版や アメーバブログ「デキタン」、フェースブックページ「ソヤマン(曽山哲人)」をはじめとしてソーシャルメディアでの発信なども行っている。
ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎を詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
若手育成に成功している組織は何をしているか~人事のためのリモート下における人材育成のポイント
リモート環境下での新人・若手育成に課題を感じる人事担当者におすすめの講座です。在宅勤務で起こりがちなコミュニケーション不足や早期離職リスクに対応するため、OJTの工夫、モチベーション維持、マネジメント手法の転換など、具体的事例を通じてリモート時代に効果的な組織づくりと人材育成のポイントを学べます。
-
株式会社ガイアックス 管理本部長
山口県出身。立教大学経営学部2017年卒業。株式会社ガイアックス新卒入社後、同社で採用担当から危機管理、セキュリティ、労務等、投資先対応など徐々に管掌範囲を広げ、2021年に人事総務部長に、2023年に管理本部長に就任。社外活動では、新卒1〜3年目の頃はいくつかの社外コミュニティの運営に注力し、現在はスタートアップ企業やNPOなど複数社で、アドバイザーや監査役等を務める。
若手育成に成功している組織は何をしているか~人事のためのリモート下における人材育成のポイントを詳しく見る
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
09まとめ
本記事では、人材育成に関する19の理論をタイプ別に解説しました。経験学習モデルやロミンガーの法則、成人発達理論といった学習理論は「人はどう学ぶか」の枠組みを、SECIモデルや組織学習理論は「知識をどう組織に蓄積するか」の視点を提供してくれます。PM理論やSL理論はリーダーシップの引き出しを広げ、コンピテンシーモデルやカッツモデルはスキル要件を可視化する際の土台となります。さらに、ピグマリオン効果やナッジ理論、自己決定理論といった心理学の知見は、育成の場面設計を豊かにしてくれるでしょう。
ただし、理論は「万能の処方箋」ではなく、「考えるための道具」です。まずは自社が抱える育成課題を特定し、それに対応する理論を1つ選んで小さく試してみるところから始めることをおすすめします。研修設計や1on1の進め方に理論の視点を一つ加えるだけでも、育成の質は変わり得ます。本記事が、自社に合った育成施策を見つける一助となれば幸いです。