研修効果を高める方法とは|効果測定に用いる指標を紹介

社員の人材育成のためにさまざまな内容の研修を用意しても、肝心の受講者自身がその内容を吸収し自分のものとして現場で力を発揮していかなければ、コストをかけて行った研修の意味がなくなってしまいます。実際、現場から「研修の効果がない」という耳の痛いことを言われている人材育成担当の方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、効果のある研修を実施するポイントをいくつかご紹介します。二度と「研修は効果がない」と言われないために必要なことをお伝えしていきます。
- 01.研修効果の測定方法
- 02.研修効果を高める方法
- 03.研修効果の最大化に取り組む企業事例
- 04.オンライン研修|Schoo for Business
- 05.まとめ
01研修効果の測定方法
研修効果の測定において、一般的に用いられる理論がカークパトリックモデルです。
カークパトリックモデルとは、ウィスコンシン大学の名誉教授ドナルド・ L・カークパトリックが1975年に提唱した教育の評価法のことで、4段階評価法とも呼ばれます。このカークパトリックモデルでは、以下のように研修の効果を反応、学習、行動、業績の4段階で表します。

レベル3の「行動」を、研修の効果測定指標とする企業がほとんどです。なぜなら、レベル4の「業績」は研修との因果関係を証明することが不可能に近く、研修の良し悪しを判断できるものではないためです。
また、レベル1やレベル2では研修が本当に意味があったのかを測定することができません。「受験勉強で学んだことが社会に出ると役に立たない」という言説があるように、学んだことが活かされなければ意味がないのです。
つまり、行動変容(研修で学んだことが現場で実践できているか)を研修効果の測定指標とし、研修自体のPDCAを回していくことが最良の方法と言えるでしょう。
02研修効果を高める方法
ロバート・ブリンカーホフ教授は、「効果の出ない研修プログラムの原因」を研究し、研修の成果に影響を与えるもののバランスをまとめました。それが『4:2:4の法則』です。

研修の成果には、「研修前の意識付け」が4割・「研修プログラム」が2割・「研修後のフォロー」が4割の影響を与えると、ロバート・ブリンカーホフ教授は提唱しています。つまり、研修そのものよりも、研修前に参加に対しての納得感を持せたり動機づけを行ったり、研修後に業務・実務に転用させる働きかけを行ったりする方が研修の効果を高めるということです。
この章では、研修効果を高めるために研修前・研修中・研修後でどのような取り組みをするべきか紹介します。
研修前
研修前にすべきことは、参加者の動機付けです。「この研修を受けてみたい!」・「この研修を受けることで自分は成長できる!」という感情に研修受講者を導くことで、研修効果を高めることができます。
研修の目的や実施する意味を伝える
研修の目的や実施する意味を伝えることで、「なぜ研修を受ける必要があるのか」を受講者に理解してもらいます。
経営者や管理職が先頭に立って、経営目標や人材戦略と連動して、研修の意味や必要性を語ると効果的です。
フィードバックで渇きを与える
「なぜ研修を受ける必要があるのか」は、ある意味で会社都合という側面もあります。そのため、受講者自身の内発的動機を引き出す試みも必要です。
内発的動機を引き出す鍵は、「渇き」です。「現在の状態」と「理想の状態」を明確にして、その差分を知ることで成長に対する「渇き」が生まれます。
「現在の状態」を他者からの視点で客観的に伝える方法が、フィードバックです。研修で学ぶ内容と連動したフィードバックをすることで、研修を自分事として捉えるようになります。
研修中
研修そのもの自体も重要で、講師や講義内容の質は当然ながら担保されていなければなりません。特に意識すべきことは、実践を意識した内容になっているかです。
実践に近いインプットを用意する
研修講師が現場のことを全くわかっておらず、机上の空論を語ってしまうことは避けなければなりません。また、誰が話すのかも受講者の納得度に影響を与えます。営業経験のない研修講師が語る営業研修と、誰もが知っている営業代行会社のトップセールスマンが語る営業研修では、後者の方が参加者の納得度が高いのは想像に難くないでしょう。
そのため、研修講師を現場で活躍するビジネスパーソンに依頼し、実務に即した内容にしてもらったり、eラーニングを活用しながら現場での実践者の講義を研修素材として利用したりするなどの取り組みをすると、研修効果を高めることができます。
現場での実践をイメージさせる
現場での活用イメージを膨らませながら、インプットを行うことで行動変容につなげやすくなります。
インプットの中にグループワークやロールプレイング、練習問題などを織り交ぜると、現場での実践をイメージしやすくなります。
研修後
研修後は、学んだことを実践するためのフォローが欠かせません。管理職を巻き込み、現場と人事が一体となって研修を経営に資するために動けるかが重要です。
現場での実践機会をつくる
研修で得た学びを実務で活かすためには、実践機会は必ず提供しなければなりません。例えば、議事録の取り方を研修で教えても、会議に参加させなかったら議事録を取る機会はなく、研修で学んだことを実際に使えるようになっているのかを誰も判断することができません。そのため、研修と実務での機会提供は基本的にセットで考えるべきことなのです。
実践経験を与えるためには、どうしても管理職の理解や協力が欠かせません。そのため、管理職を巻き込みながら、職場全体で人材を育成していくように人事部や経営が働きかけをしていく必要があります。
管理職から定期的に確認をしてもらう
研修で学んだことを実践できているか、定期的に管理職から声をかけてもらうことで、受講者の学びっぱなしを防ぐことができます。
管理職にチェック機能を委ねる際には、事前にどのような研修を行い、どのようなことを学ばせたのかを知らせておく必要があります。このコミュニケーションの質で、管理職が主体的に協力してくれるかに差が出ます。
03研修効果の最大化に取り組む企業事例
研修効果を最大化させるために、各社がどのような取り組みをしているのかを紹介します。
コニカミノルタジャパン
コニカミノルタジャパンでは、事前課題としてオンライン研修サービスのSchoo for Businessで知識のインプットを行っています。つまり、研修前の動機づけとして知識のインプットを課題として与え、何がわからないかを明らかにしてもらうという工夫をしているのです。その後は、3日間の集合研修で自分の想いを整理したり視座を高めたりして変革プランを練り、その後半年間は職場で実践するという形をとっています。
▶︎関連記事:導入事例|コニカミノルタジャパン
株式会社日立不動産
株式会社日立不動産では、研修後の実践フォローに注力しています。レポート提出に加えて、週次で研修についての振り返り会を実施して、学んだことの共有や共通言語の確認、実務への応用方法についてディスカッションを行うなど、継続的な学習と実践の反復で、知識が定着するようにしています。
▶︎関連記事:導入事例|株式会社日立不動産
株式会社BitStar

株式会社BitStarでは、管理職の育成を対話型のワークショップを用いながら行っています。まずマネジメントや管理職に必要なスキルに関する授業をオンラインで視聴してもらい、共通知識をインプットしてもらいます。そして、現場での実践を経た後に、改めて受講者を集めて対話型のワークショップを実施しています。
対話型のワークショップでは、意見交換を通じてマネジメント同士の横のつながりを作ってもらうことも目的としつつ、インプットした知識を実践してみた結果の振り返りも兼ねています。
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04オンライン研修|Schoo for Business

Schoo for Businessでは、約9,000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。階層別研修やDX研修なども実施でき、さらにアセスメント機能も標準で備わっています。また、自律学習の支援ツールとしても活用いただいており、「主体的に学び、成長する人材」の育成を目的にして、ご導入いただくことが多いです。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 9,000本 ※2023年3月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,500円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
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研修効果に関するSchooの講座例
Schooでは9,000本以上の動画をすべて自社で作成します。この章では、研修効果に関するSchooの講座を紹介します。研修担当者の方であれば、10日間限定でSchooの全授業をお試し視聴できるデモアカウントを発行可能ですので、気になるものがあれば、お気軽にお問い合わせください。
社員研修のあるべき姿
この授業では、社員研修の必要性や役割についてインストラクショナルデザイン(ID)を軸に学びます。研修担当者として「何のために社員研修を行うのか」「研修の役割と担当者としての立ち位置」など、研修の根本的な考え方をまず問い直すために、インストラクショナルデザイン(ID)をもとにした研修のあるべき姿について学んでいきましょう。
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熊本大学教授システム学研究センター 教授
1959年生まれ。Ph.D.(フロリダ州立大学教授システム学専攻)。ibstpi®フェロー・元理事(2007-2015)、日本教育工学会監事・第8代会長(2017-2021)、教育システム情報学会顧問、日本教育メディア学会理事・第7期会長(2012-2015)、日本医療教授システム学会副代表理事、日本イーラーニングコンソシアム名誉会員など。主著に「学習設計マニュアル(共編著)」、「研修設計マニュアル」、「教材設計マニュアル」、「教育工学を始めよう(共訳・解説)」、「インストラクショナルデザインの原理(共監訳)」、「学習意欲をデザインする(監訳)」、「インストラクショナルデザインとテクノロジ(共監訳)」などがある。
ビジネスパーソンの『学習設計マニュアル』
この授業では、学校教育の勉強とは異なるおとなの「学び方」について学びます。社会に出てからの「学び」は、学校教育での「勉強」とは言葉は似ていますが、まったく異なる行動です。そこで、「学び方」を学ぶことによって、今の自分に適した学習を設計できるように、インストラクショナルデザイン(ID)の研究者である熊本大学・鈴木克明教授からおとなの「学び方」について学んでいきましょう。
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熊本大学教授システム学研究センター 教授
1959年生まれ。Ph.D.(フロリダ州立大学教授システム学専攻)。ibstpi®フェロー・元理事(2007-2015)、日本教育工学会監事・第8代会長(2017-2021)、教育システム情報学会顧問、日本教育メディア学会理事・第7期会長(2012-2015)、日本医療教授システム学会副代表理事、日本イーラーニングコンソシアム名誉会員など。主著に「学習設計マニュアル(共編著)」、「研修設計マニュアル」、「教材設計マニュアル」、「教育工学を始めよう(共訳・解説)」、「インストラクショナルデザインの原理(共監訳)」、「学習意欲をデザインする(監訳)」、「インストラクショナルデザインとテクノロジ(共監訳)」などがある。
研修の組み立て方 ‐ 設計・実施・評価
この授業では、研修の設計から実施、評価までの一連の組み立て方について学びます。研修担当者のために研修の設計・実施・評価がデザインできるように、インストラクショナルデザイン(ID)をベースにヒューマンパフォーマンスインプルーブメント(HPI)、プロジェクトマネジメント(PM)の考え方を掛け合わせたビジネスインストラクショナルデザイン(BID)を基に研修の組み立て方について、講師2名のデモンストレーション形式で学んでいきます。
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サンライトヒューマンTDMC株式会社 代表取締役社長
熊本大学大学院 教授システム学専攻 非常勤講師。製薬業界での営業、トレーニング部門を経て、起業。HPIやIDを軸とした企業内教育のコンサルティングやインストラクショナルデザイナー、インストラクターを育成する資格講座の運営を行っている。IDの実践方法を提供してきた会社は100社、4,000名を超える。 主な著書:『魔法の人材教育(改訂版)』(幻冬舎、2017年)、『ビジネスインストラクショナルデザイン』(中央経済社、2019年)
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
導入実績

Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで幅広い企業にご導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
05まとめ
研修効果は、行動変容で測定するのが理想です。ただし、行動変容を測定するためには現場の協力が必要不可欠で、人事や経営が現場を巻き込み、組織全体で人材を育成しようという働きかけができるかどうかが重要です。
また、研修効果を高めるためには4:2:4の法則を押さえ、研修前後の動機付けや実践フォローを特に意識しましょう。人事の口数が不足している場合は、研修(インプット)は外部サービスに頼って、研修前後の部分に社内のリソースを充てるなど工夫をしましょう。