キャリアプラトーとは?陥る原因と抜け出すための対策を徹底解説

キャリアプラトーとは、キャリアの停滞を意味する言葉です。これは、組織内での昇進・昇格の可能性が行き詰まることや、長期間同じ仕事を担当することで新たな挑戦や学びが欠け、仕事がマンネリ化するといった状態を指します。企業はキャリアプラトーを放置すると、従業員のモチベーションの低下や離職につながるため早めの対策が重要です。本記事では、その原因と企業が取れる対策を詳しく説明します。
01キャリアプラトーの意味と種類
以下では、キャリアプラトーの意味や種類について紹介します。
キャリアプラトーとは?
キャリア・プラトーは、キャリアの停滞を意味する言葉です。もともと英単語の「プラトー(plateau)」は「高原」や「台地」を指しますが、これらが標高は高いが起伏が少なく、広い平らな土地であることから、上昇や下降がない「停滞」のメタファーとして使われています。またこの場合のキャリアとは、個人の職業的な地位や、取り組む業務内容自体を意味します。具体的には、「組織内で昇進・昇格の可能性が行き詰まる状態」や「仕事内容に新たな挑戦や学びが欠けている状態」です。
キャリアプラトーの種類
一口にキャリアの停滞と言っても、その内容は発生要因などによってさまざまです。一つの分類として、その停滞が主観的なものか、客観的なものかが挙げられます。
- 客観的プラトー:職位の在任期間や社員等級の滞留期間など、外から観察可能な指標に基づいた停滞状態。
- 主観的プラトー:本人が自身のキャリアが行き詰まっていると認識する意識の状態で、個人のモチベーションに直接影響する。
- 階層プラトー(昇進プラトー):現在の職位以上の昇進・昇格の可能性が将来的に非常に低い状態。
- 内容プラトー:長期間同じ仕事を担当することで、新たな挑戦や学びが欠けている状態、仕事のマンネリ化を意味する。
- ダブルプラトー:階層プラトーと内容プラトーの両方に同時に陥っている状態。
▶︎参考:谷田部光一 (2018). 日本企業における中高年社員の活性化とその課題. 『政経研究』, 54(4), 419–451.
階層プラトー
「階層プラトー」とは、組織内で現在以上の職位や等級への昇進・昇格の可能性が将来的に非常に低くなる状態を指します。これは、管理職ポストの不足や組織のフラット化、社員の高齢化などが原因で生じ、客観的な停滞状態として捉えられます。
内容プラトー
「内容プラトー」は、長期間同じ仕事を担当することで、新たな挑戦や学びが欠け、仕事がマンネリ化する状態を指します。また、重要で責任ある業務が与えられない状況もこれに含まれ、働く人のモチベーション低下に繋がることがあります。
ダブルプラトー
「ダブルプラトー」とは、昇進の停滞を示す階層プラトーと、仕事内容の停滞を示す内容プラトーの、両方に同時に陥っている状態を指します。この2つの停滞が重なることで、それぞれが単独で生じる状態よりも、働く人へのマイナスの影響がより大きくなるとされます。
02キャリアプラトーが発生する原因と企業ができる対策
キャリアプラトーが発生する原因には、主に以下の6つがあります。
- ・組織構造や昇進後のポスト不足
- ・同じ業務を長く続けている
- ・配属や業務とのミスマッチ
- ・挑戦を嫌う組織文化
- ・ライフイベントなどプライベートの変化
- ・キャリアプランの不在
ここでは、それぞれの原因の詳細と、企業ができる対策も紹介します。
▶︎参考:今城 志保・藤村 直子・本合 暁(2010)「キャリア停滞と仕事の意欲低下」リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所.
組織構造や昇進後のポスト不足
階層プラトーの代表的な要因の一つが、組織の階層構造と役職ポストの希少性です。多くの組織はピラミッド型の編成であるため、課長から部長、役員などと上位階層に行くほど、ポストの絶対数が減少します。たとえば新卒の一括採用によって複数の同期入社社員がいる場合、はじめは概ね同じようなスピードで昇進しますが、ある一定の年次になると役職がつく人・つかない人に分かれるケースも少なくありません。これは昇進機会の客観的な頭打ちによって生じる典型的な階層プラトーです。
対策
組織構造や昇進ポスト不足への対策としては、専門職制度を導入したり、専門職を管理職相当の職位体系として段階昇格させる設計をしたりすることが挙げられます。昨今では専門性が身につかないことを懸念する若年層も多いため、専門性を磨くというキャリアパスも用意することは若手の離職防止にもなるでしょう。また事業局面が合致する場合は、新規事業の立ち上げや事業部の分社化も、物理的なポスト数を増やすという観点から、階層プラトーの対策になります。
▶︎参考:企業内労働市場における転職と昇進の関係|日本労働研究雑誌 2018年6月号(No.695)
同じ業務を長く続けている
同じ業務を長く続けていることは、キャリア停滞の一種である「内容プラトー」につながります。たとえばジョブローテーションや異動が少ない組織制度、変化の少ない事業環境、新しい施策に抵抗が強い保守的な社風などは、内容プラトーを生みやすくするでしょう。代わり映えのない業務が続くと、新たな挑戦や学びが欠け、仕事への意欲が低下しやすくなります。その他、現在のやり方に安心感を感じて「コンフォートゾーン」に留まり、変化に消極的になることも一因となり得ます。
対策
同じ業務を長く続けることによる内容プラトーに対しては、企業として従業員の業務内容に新しさや挑戦性が加わる仕組みをつくることが対策になります。具体的には、ジョブローテーションや定期的な人事異動、社内公募制度などが挙げられます。また部門をまたぐ異動ほどの変化を与えられなくても、新しいプロジェクトを任せたり、新規性のある施策に取り組んだり、仕事で関わるメンバーに変化を加えたりすることでも、新たな挑戦や学びを促せるでしょう。
配属や業務とのミスマッチ
自身が業務適性を感じられず、強みを活かせない仕事を長く続けると、期待する成果が出しにくくなり、達成感や成長実感を得ることが困難になります。この状態が続くと、「何のために働いているのか分からない」「会社に役立っている実感がない」という仕事の有意味感の低下が進み、意欲が低下しやすくなります。その結果、自身のキャリアや将来に対して前向きな展望を持てなくなり、キャリアプラトーに陥る可能性があります。
対策
業務内容のミスマッチが生じている場合には、本人の適性を見極めたうえで、配置転換を検討できるとよいでしょう。その際には上司や人事部のみで決めるのではなく、キャリア面談や1on1を通じて、本人の認識や部署異動の要望をヒアリングすることも、ミスマッチを無くす上で重要です。また配置転換が難しい場合でも、社員に新たな挑戦や裁量権を付与したり、仕事への意義付けができるように支援したりすることで、やりがいを高められる可能性があります。
挑戦を嫌う組織文化
挑戦することに対して否定的で保守的な文化は、仕事のマンネリ化につながり、内容プラトーを起こしやすくします。業務改善のためのアイデアを発信したとしても、それが周囲に前向きに受け取られず、かえって足を引っ張られるような環境では、社員はどんどん受け身になっていきます。一般に、個人の内側から湧き上がる「内発的動機(モチベーション)」を高めるには、自発的な行動やそれに伴う有用感、周囲との協力関係が大切だとされています。挑戦を嫌う文化はその真反対にあり、動機づけを弱め、結果としてキャリアプラトーの要因になる可能性があるのです。
対策
組織文化は経営スタイルや組織構造、評価制度や行動規範など、さまざまなものが影響し合って醸成されます。そのため挑戦的な文化を醸成するには、まず経営や組織視点でのメッセージとして挑戦を重視することを明示したうえで、評価制度や意思決定の枠組みなどをそれに準じた内容に変化させていく必要があります。また抜擢人事などを行い、やる気のある従業員に裁量権を付与することも有効な対策になります。全社としての方針と制度を一致させて、従業員に本気度を伝えていくこと、失敗の事実よりも挑戦と学習を評価する心理的安全性を確保することがポイントです。
ライフイベントなどプライベートの変化
キャリアプラトーは、ライフイベントと組織文化の相互作用によって引き起こされる可能性もあります。とりわけ、時間あたりの生産性よりも「長時間労働」や「常時在席」を評価上重視する組織文化においては、育児や介護といった物理的に時間を割けない要因が発生した途端、昇進機会が狭まりやすくなります。また育児や介護の当事者に対し、周囲が「配慮のつもり」で挑戦的な業務の割り当てを控えると、新たな学びや成長機会が欠けた「内容プラトー」に陥る可能性もあるでしょう。
対策
育児や介護、または疾病などによる労働環境の変化は、誰にでも起こり得るものです。そのような外部環境変化によって生じるキャリアの停滞を防ぐには、企業が柔軟な働き方の選択肢を拡充し、長時間労働が評価される文化を見直すことが大切です。また、環境変化が起こったときに、どのようにキャリアを捉えるかは人それぞれです。そのため1on1面談を通じて、個別の制約や働き方を理解し、キャリアの方向性を共に考えることが重要です。また多様な人材が活躍できる環境を作るには、それら制度の利用者を公正に評価する仕組みが不可欠です。昇進要件の明確化、成果基準の明確化、管理職の評価バイアスを低減させる教育的措置(研修など)が求められます。
キャリアプランの不在
従来の日本では相対的に長期雇用が一般的であり、勤め先の組織主導でキャリア形成していく傾向がありました。しかし昨今では、労働環境が大きく変わり、人々は自律的にキャリアを設計することが求められるようになりました。このような環境下では、キャリアプランが描けず主体的な学習・挑戦行動が弱いと、日々の仕事がマンネリ化しやすく、「内容プラトー」に陥るリスクが高まります。また企業側も本人意向をつかみにくく、新しいポジションに抜擢しにくくなるでしょう。この状態は昇進機会の損失や、それによる階層プラトーの発生にもつながります。
対策
社員が自分自身のキャリア観をもって仕事に取り組める状態にするには、研修や面談などのキャリア介入を通じてノウハウの提供や設計支援を行うことが効果的です。キャリアの悩みは年代別に色が異なる傾向があるため、それを反映したカリキュラム設計ができるとよいでしょう。またキャリアデザインには自己内省が欠かせません。過去の経験や将来への意向を言語化し、自分の強みや価値観を再認識するスキルを強化することもポイントです。そのうえで、直属の上司によるキャリア面談を定期的に実施し、本人意向を踏まえた業務アサインや意義付けができると、目の前の業務に前向きに取り組みやすくなります。
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4designs株式会社代表取締役社長
一般社団法人プロティアンキャリア協会代表理事。2000年に早稲田大学卒業、大手メーカーに就職後、経営コンサルティング会社を経て一部上場のIT企業、デジタル広告企業、ベンチャー企業での管理本部長や経営企画にて中期経営計画策定等の戦略策定並びに大手外資系PEファンドのMBO/IPOプロジェクト/大手グループERP導入プロジェクト、M&A案件等の数多くのプロジェクトを推進、早稲田大学大学院MBA。2019年7月に経営コンサルティング、キャリア支援事業を行う4designs株式会社を設立。2020年3月共同代表の法政大学キャリアデザイン学部田中研之輔教授と一般社団法人プロティアン・キャリア協会を設立。
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1級/国家資格キャリアコンサルタント
住友商事でシステム開発や導入研修に関わった後、グロービスでスクール運営、受講生カウンセリング、新拠点の立ち上げ等を担当。キッザニアの立ち上げに参画しスポンサー開発や営業推進、階層別評価研修制度の構築、キャリアパスの制度化、初の新卒採用、学生インターンシップの導入などを実現。その後ベンチャー企業等で、人材育成や組織開発アセスメントの開発に従事。現在は、サイボウズ(株)の人事本部でチームワークサポートとキャリア支援を担当。<複業>鎌倉女子大・非常勤講師、NPO法人若者就職支援協会・人材開発室長、<その他>キャリア、人材、組織をテーマにしたコミュニティ「キャリアック(キャリア・アクティベーション・ドック)」を主催、学び続けの場を提供している。
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㈱LEBEN CAREER CEO
秋田県は男鹿市の生まれ。 大学卒業後、小売流通業界にて店舗運営責任者として従事。 前社退職後、東南アジアにて半年間のバックパッカー生活。 帰国後、製薬業界にて、人事戦略室、社長秘書室、人事総務業務に従事。 2014年に人材開発事業「LEBEN CAREER」を創業し、法人設立後は代表取締役に就任。 同社では「コーチングを受けたい・学びたい」というビジネスパーソン向けにコーチングサービスの『LCPコーチング』及び、コーチングスクール『LCPコーチングアカデミー』を運営。 専門領域は、キャリア変革を目的とした行動変容的アプローチ。
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株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。 2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティング&SI事業の人材開発部門リーダーとして育成プログラムを設計導入。ベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。講師として、大前研一ビジネス・ブレークスルー、日本能率協会、日経BPセミナー、大手銀行系研修会社などに多数のプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。 著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。
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04まとめ
キャリアプラトーとは、キャリアの停滞を意味します。昇進が行き詰まったり仕事内容がマンネリ化したりすることで、モチベーションの低下や成長実感のなさを生む現象です。その原因はポスト不足や同じ業務のくり返し、ミスマッチや挑戦を嫌う風土、ライフイベントと組織文化の相互作用、キャリアプランの設計不足などさまざまです。企業はこうした停滞を防ぐために対策を講じる必要があります。たとえば専門職制度やジョブローテーションを導入したり、柔軟な働き方をできるようにしたりすることで、社員の成長実感とやる気を維持できます。本記事を参考にキャリアプラトー対策を進めてみてください。