経営と現場との乖離が生まれる原因とは?解決策もあわせて紹介

現場との乖離とは、企業において経営層と現場との間にある意識や情報のズレを指します。この乖離の主な要因としては、組織拡大によるコミュニケーション不足、経営と現場を繋ぐ中間管理職の機能不全などの視座の違いが挙げられます。本記事では、これらの乖離が生まれる背景と、それが企業に及ぼす悪影響、そしてその解消に向けた具体的な解決策について深く掘り下げて解説します。
01経営と現場との乖離が生まれる理由
企業が成長・変化する中で、経営層と現場との間には意識や情報のずれが生じやすくなります。コミュニケーションの不足や中間管理職の機能不全、視座の違い、心理的安全性の欠如、現場まかせの属人化などがその主な要因です。ここで詳しく解説します。
組織の拡大などによるコミュニケーション不全
Schoo for Businessの授業『"強い"会社とは?〜人が自ら動き出す環境をつくる〜』に登壇する松岡保昌先生は、組織がある一定の規模を超えると、経営トップが現場で起こっている全てのことを理解できないタイミングが到来することを解説しています。
トップが現場の細部まで把握している場合、多くのコミュニケーションがなくとも上意下達で適切な組織運営ができるケースもあるでしょう。一方、把握が難しくなった段階で「現場の情報が正確かつ迅速に上がる仕組み」がないと、経営と現場で「見ている景色が違う」状態に陥りやすくなります。こうした情報の滞りは、両者の認識ギャップを広げることにつながります。
中間管理職の機能不全
中間管理職は、経営方針に沿って現場を率いるとともに、現場で得られる情報を適切に経営に届ける結節点の役割を担っています。また、Schoo for Businessの授業『課長の役割と業務』に登壇する松本真也先生は、課長は以下のように広い役割を担うことを解説しています。
- ・目標管理、業務改善、人財管理、能力育成を通じたマネジメントの遂行
- ・リーダーシップの発揮による組織の変革
このような立場にある中間管理職が本来の役割を十分に果たせない場合、現場の課題や不都合な情報は経営層に上がりにくくなります。また、中間管理職が経営戦略を正しく理解できていないと、優先順位や現場への指示、育成の方向性にズレが生じる可能性が高まります。その結果、現場では施策の背景や狙いが不明確になり、戦略実行が停滞する一因となるのです。
経営と現場の視座の違い
経営層は日頃から長期的な戦略や全体最適を重視する一方、現場は目の前の業務や短期的成果に意識を向けがちです。この環境と視点の違いにより、経営の施策が現場にとって「自分ごと化」されず、現場の努力が経営の期待と噛み合わなくなることがあります。
Schoo for Businessの授業『戦略実行へのプロセス ‐ 作る&伝える』に登壇する河村亨先生は、経営から現場に向けたコミュニケーションが誤解される理由の一つとして、メンタルモデルを挙げています。メンタルモデルとは、過去の経験に照らし合わせて物事を理解しようとする認知の枠組みのことです。これにより、伝えられた戦略を自身の経験や前提で補完して解釈してしまい、意図と異なる理解が生まれることがあるのです。
心理的安全性の欠如
心理的安全性とは、チームのメンバーが対人リスク(批判・非難・拒絶)を恐れずに発言できる状態を指す言葉です。心理的安全性が低く、従業員が「問題を指摘すると評価が下がる」と感じる環境では、現場の課題や改善点は表に出にくくなります。このような風通しの悪い環境では、経営層は現場の実態を把握しにくいまま意思決定を行いがちです。一方で現場は課題に気づいているため、経営の方針に納得しにくくなります。その結果、現場と経営の認識のギャップがさらに広がる要因となります。
業務属人化や「現場まかせ」
現場力が高い組織は、環境変化に対して臨機応変に適応できるというメリットがあります。一方で、経営と現場の権限の棲み分け(意思決定範囲や判断基準)が設計されていないと、権限委譲が「丸投げ」に近い形となり、経営層の関与が必要以上に薄まって現場まかせが進みやすくなります。現場の独自判断が積み重なれば、組織全体の方向性と乖離し、全体最適が損なわれる要因となり得ます。
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02現場との乖離がもたらす企業への悪影響
経営と現場がかみ合わない状態が続くと、組織全体の効率や成長に深刻な影響を及ぼします。情報伝達の不全や戦略実行のズレはもちろん、従業員のエンゲージメントを低下させ、結果として競争力を失うリスクを招きます。ここで詳しく解説します。
戦略と実行のズレ
経営と現場の乖離による悪影響の一つは、戦略と実行のズレです。いかに優れた戦略であったとしても、実際にそれを実行する従業員が内容を理解していない、または各々で異なる理解をしている状況では、それを実現することは困難です。この状況が継続すると、業績にも悪影響が及ぶ可能性が高まります。さらに現場では戦略と実行のズレに自覚的でない場合もあるため、パフォーマンスの悪化に対する不満や企業に対する不信感を生む要因にもなり得ます。
従業員のエンゲージメント低下
経営と現場の乖離は、従業員のエンゲージメントにも影響する可能性があります。ワークエンゲージメントとは、仕事に対して活力や熱意を持って向き合えている心理状態を示す概念です。またワークエンゲージメントにおける代表的な測定尺度(UWES)では、これを「活力(Vigor)」「没頭(Absorption)」「献身(Dedication)」の3指標で測定します。
経営と現場の乖離が大きな職場では、従業員は「自身の努力が評価に反映されにくい」、「経営は現場を理解していない」という感覚を覚えやすくなります。これは、会社への帰属意識や貢献意欲を低下させ、仕事への主体性を失わせる一因となり得ます。
組織の停滞と競争力低下
現場からの改善提案や新しいアイデアが経営層に届かない環境では、組織のイノベーションが停滞しやすくなります。現場の知見は実務に根ざした貴重な資産であり、それを吸い上げられない組織は変化に取り残されやすくなってしまうのです。結果として、業務改善が進まず、持続的な成長の機会を逃すリスクが高まります。
03現場との乖離を解消するための解決策
経営と現場のギャップを埋めるには、双方向の信頼と理解を前提とした仕組みづくりが欠かせません。ビジョンや戦略を浸透させつつ、現場への権限委譲や中間管理職の機能強化を進めることが重要です。ここで具体的な解決策を解説します。
ビジョンや戦略の浸透
ビジョンや経営戦略を現場のメンバーが適切に理解して実行に落とし込むには、経営と現場の目線の違いを乗り越えるための工夫が必要です。Schoo for Businessの授業『戦略実行へのプロセス ‐ 作る&伝える』では、その具体的なポイントとして「自己決定」と「フレームワーク」の2点を解説しています。
自己決定とは、何らかの形で戦略の決定に従業員を巻き込むことです。一方、前提の共有が不十分な状態で思考を促すと、目線のズレが解消しにくくなる恐れがあります。そのため考えるための土台として共通のフレームワークを渡すことで、同じ結論にたどり着きやすくすることが大切です。従業員が自ら頭を動かし意思決定することで、戦略を深く理解すると同時に戦略の「自分ごと化」も進みます。
現場への決定権の委任
現場メンバーの視座を高めるには、経営層が現場の判断を尊重し、一定の決定権を委任することが有効なアプローチの一つです。ただし、「とにかく任せる」という曖昧な委任は、現場ごとに判断がばらつき品質低下を招くリスクがあります。そのため委任の設計は、「金額」「顧客対応」「業務フロー」といった軸で、委任範囲と責任の所在を明確にすることが現実的です。まず小さな範囲から試行し、現場と振り返りを繰り返しながら段階的に委任範囲を広げることで、組織全体の柔軟性と実行力が高まる傾向があります。
中間管理職の役割強化
中間管理職は経営と現場をつなぐ橋渡し役として重要な存在です。しかし、その機能が不十分だと情報が正しく伝わらず、乖離が拡大します。そのため、中間管理職に対しては現場の声を適切に上層部へ伝え、戦略を現場へ深く浸透させるための研修やサポートが不可欠です。具体的にターゲットとなるスキルは、現場の個別事象から本質的な課題を見抜く「コンセプチュアルスキル」や、収益構造・投資対効果といった視点で判断をするための「ビジネス数値リテラシー」などが挙げられます。
経営層が「現場」を正しく理解する
経営と現場の乖離を解消するには、現場が経営の視点を深く理解するだけでなく、経営側が現場を正しく理解しようとする動きも大切です。経営層が現場を理解するためには、定量的なレポートからだけでなく、実際に現場に足を運び観察することが重要です。従業員と直接コミュニケーションをとり、時には一緒に業務を振り返ることで、現場の課題や工夫を肌感覚で把握できます。こうした行動は現場との信頼関係を築き、経営戦略を実態に即したものにする基盤となります。
現場における「課題設定力」の強化
現場が抱える課題を経営に訴えても、その重要性が十分に伝わらず、結果として対応の優先度が下がることがあります。要因の一つは、現場の課題を「何が問題か」だけでなく、「それがKPI・リスク・機会として経営にどう影響するか」まで翻訳して示しきれない点にあります。そのため、現場における課題設定力(※事象を分解し、因果と論点を整理して解くべき問いに落とす力)を高めることは、経営と現場の目線を揃える打ち手となり得ます。
目の前の事象を、経営観点で捉えて課題として再定義するには、思考のトレーニングが必要です。例えば「人手不足で忙殺されている」という状況は、あくまで事象です。なぜリソースが逼迫しているのか、オペレーション上のどこに時間がかかるのか、解消のためには人を採用する以外に方法はあるのかなど、様々な視点で事象を掘り下げることが大切です。一朝一夕で高まるスキルではないため、研修やOJTを活用した計画的な育成が求められます。
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04強い組織づくりに役立つSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
現場との乖離の解消におすすめの講座
この章では、オンライン研修サービスSchooの講座から、課題解決や組織を動かすためのスキルについて学べる講座を紹介します。
課題設定力の磨き方
この授業は、正解がない事象に対して向き合うために必要な「課題設定力」を磨くノウハウを提供します。仕事の複雑化で課題の本質が見えにくい中、限りある時間で生産性を高めるには、解決策を考える前に的確な課題設定が重要であることを学習します。ロジカルシンキングやラテラルシンキングを通じて課題を整理し、施策の成功確率を上げる方法を理解することを学習ゴールとしています。
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株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。
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事業家視点を養う課題解決の教科書
会社の課題を自分事として捉え、解決に導くための経営視点とノウハウを学ぶコースです。経営陣に任せきりにせず、社内課題解決を通じて自身のレベルアップとキャリア形成を図りたいマネージャー、役員、経営者を目指す方に最適です。スタートアップ経営や大企業のイノベーションを支援してきた先生方が、自身の経験や知識に基づいたノウハウや技術を提供します。経営の理論や知識を習得し、会社の意思決定や自身のキャリアを深く考える力を養います。
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株式会社ユニコーンファームCEO/株式会社ベーシックCSO
これまで日本で4社、シリコンバレーで1社起業をした連続起業家。2017年発売以降115週連続でAmazon経営書売上1位になった「起業の科学 スタートアップサイエンス」の著者。2014年から2017年までシリコンバレーのVCのパートナーとしてグローバルの投資を行う。内閣府タスクフォース(価値デザイン社会審議会)メンバー、経産省主催TCP(ベンチャー支援プログラム)のメンター/審査員などを歴任。
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「上層部は現場を分かってくれない」は本当か
この授業は、上司と部下の間に生じがちなコミュニケーションのすれ違いや誤解の構造を紐解きます。エグゼクティブの「部下が動かない」という悩みや、部下の「上層部は現場を分かってくれない」という本音について、上司側の視点も交えて解説します。現場で役立つ「上司との付き合い方のコツ」や、自身が成長できる組織、信頼できる上司を見極めるための視点を提供し、より良い関係構築のヒントを探ります。
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国際エグゼクティブコーチ
株式会社グローバル・キャリアデザイン 代表取締役。東京生まれ。ミラノ在住。コロンビア大学、INSEAD(インシアード・欧州経営大学院)MBA卒業後、国内外10カ国で、外資系の戦略コンサルタント、多国籍企業のマーケティング、新規事業の立ち上げ等、様々なキャリアを積む。現在は、独立し、国際エグゼクティブコーチ、企業研修講師、コンサルタントとして活動。ポジティブフィードバックを活用したコーチングが好評を博し、法人、個人問わず、グループ面談やセミナーなどを提供。3児の母でもある。
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そのビジョンは組織を動かせるか?
この授業は、「ビジョンを作ったがしっくりこない、チームの反応もいまひとつ」という悩みを抱える上級管理職向けに、組織を動かすビジョンの作り方を学びます。特に、優れたビジョンを生み出すための「種」に着目し、ビジョンの定義、会社にとっての重要性、そして具体的な探索・創出・浸透のステップを深掘りします。
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ディープビジョン研究所 代表取締役 経営理念コンサルタント
20年近く広告代理店ADKでコピーライター、クリエイティブ・ディレクターとして数多くのブランド構築、広告キャンペーンを手掛ける。その後独立。さまざまな企業の理念策定・浸透、ブランド構築。およびビジネス書執筆などのほか企業向け研修・ワークショップも多数行っている。3冊目の著作『THE VISION』(朝日新聞出版)でビジョンのつくり方をひも解き、ロングセラーに。慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所 研究員。
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05まとめ
経営と現場の乖離を解消し、組織全体を強化するためには、双方向の信頼と理解に基づく多角的な取り組みが不可欠です。具体的には、経営のビジョンや戦略を現場に明確に浸透させると共に、現場への適切な決定権の委任を進めることで、主体性を育みます。同時に、中間管理職の橋渡し機能を強化し、経営層が積極的に現場の状況を正しく理解する姿勢が求められます。さらに、現場が単なる不満ではなく、経営に資する「課題」として意見を言語化できるよう、課題設定力の強化も重要です。これらの解決策を実践することで、組織内の連携が円滑になり、持続的な成長と競争力向上に繋がるでしょう。



