4/27(Sat)

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キャリアとは?意味と設計の方法について

<目次>
1:キャリアの定義
2:転職時に見られるキャリアのポイント
3:キャリアデザインを取り巻く環境
4:キャリアに向き合う考え方
5:キャリア設計の方法・広げ方
6:まとめ
 

キャリアの定義

厚生労働省によればキャリアの定義とは「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すもので、職業生涯や職務経歴などと訳されます」(※)。「キャリア」の語源はラテン語のCarariaで、荷馬車や四輪の荷車の通り道、轍(わだち)を意味しています。これが転じて、人のたどる行路やその足跡・経路・遍歴を意味するようになったと言われています。つまり、キャリアという言葉は、単なる職歴だけではなく、その人の生涯の意味も含んでいるのです。

※参照:厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」

 

転職時に見られるキャリアのポイント

転職時に見られるキャリアのポイント

キャリアはその人の生涯を含んだ意味を持つことから、職務経歴書や履歴書にまとめられた仕事の経験は転職時に重要な役割を担うことは言うまでもありません。そのため、人事や採用担当者は次のようなポイントをチェックして転職希望者を評価している傾向があります。

 

キャリアに主体性はあるか

大抵の面接で「転職理由」を聞かれるのは、主体的にキャリアを築こうとしているか確認するためです。キャリアに主体性がある人は仕事に熱心で何らかの目的意識を持って仕事に取り組んでいる人だと言えるので、人事や採用担当者は中長期的な事業成長のため、そんな人を企業の一員として迎えたいと考えます。

 

専門的なスキルが身についているか

日本に根付いている「新卒一括採用」「年功序列」のように終身雇用を前提として人材を育てていくメンバーシップ型雇用に対して、必要な職務に適したスキルや経験を持った人を採用するジョブ型雇用を行う際に重視されるポイントです。

 

キャリアデザインを取り巻く環境

キャリアデザインとは、何の職でどのようなスキルを積みたいのか自主的に考え、キャリアを設計することを意味します。職は社会的なニーズによって生まれるため、現在私たちを取り巻く環境や、それが今後どのように変化していく見通しなのかを把握しておくことは重要です。ここではまず、キャリアデザインを考える上で抑えておきたい環境の変化や観点をご紹介します。

 

「VUCA時代」と呼ばれる不確実な環境

VUCA時代

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を用いた造語です。本来は変化する敵組織に合わせて柔軟に戦略を立てて戦うことを指す、軍事用語として使われていましたが、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)をきっかけに社会やビジネスにおいて未来の予測が難しくなる意としても使われるようになりました。

社会やビジネスにおけるVUCAの時代とは、IT技術の台頭によって既存の事業プロセスが効率化された影響で、デジタル技術を活用してサービスや事業を変革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)が求められるようになった現代に生じている複雑で変動的な社会やビジネスのことを指します。

 

テクノロジーの発展によるニーズの変化

テクノロジーの発展(第4次産業革命)により、従来は感覚的に行われていた業務がデジタル技術を活用してより正確に行えるようになる、デジタルシフトが起こりました。デジタルシフトによって、変化したのは業務の効率や再現性だけではなく、市場や消費者を取り巻く環境も大きく変化しています。

例えば、位置情報や検索履歴などのデータがIoTやビッグデータの活用によって分析・利用され、個人の好みや行動に合った情報やサービスが提供されるようになりました。またAIやロボット技術によって3Dプリンターによる創作などの複雑な作業も可能になっています。これらのテクノロジーの発展がデジタル技術によって社会を変革するDXやVUCA時代の潮流へと繋がっているのです。

上記でご紹介したテクノロジーの発展は人材のニーズにも影響を与えており、経済産業省は「社会環境・ビジネス環境の変化に対応するために、企業・組織を中心に社会全体のDXが加速する中で、人生100年時代を生き抜くためには、組織・年代・職種を問わず、働き手一人ひとりが自身の責任で学び続けることが重要」として2022年3月に『DXリテラシー標準』(※)を発表しています。

実際にIT業界だけではなく、医療や物流などのさまざまな業界にエンジニアやデータサイエンティストをはじめとしたIT人材が募集されている場合があり、DXを軸に業種や職種を越境できる人材が求められていると言えるでしょう。

※参照:経済産業省『DXリテラシー標準ver.1.0』

 

個人の価値観の変化

テクノロジーの発展によって業務の効率化や生産性の向上を求められるようになったことや、労働人口の減少が進行する中で女性の労働参加が進んでいることで、昨今では男女を問わずワーク・ ライフ・バランスを重視した働き方が当たり前になってきています。

また新型コロナウイルスの流行によって取り入れられたテレワークで不要になった通勤時間を自分の夢を実現するための準備やスキルアップのための時間として活用してパラレルキャリアを築く人も少なくありません。

このようなテクノロジーの発展や少子高齢化・労働人口の減少などの背景から働き方が変化したことによって、企業側にも仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められています。

 

雇用環境の変化

急速なIT化・デジタルシフトやグローバル化が進んでいる現代では予測不可能な事態に臨機応変に対応できる、多角的な視点を持つ人材が求められています。これは企業がグローバル市場での競争を勝ち抜くために必要な基本的要素であり、これを実現するために企業が人材を雇用する形態にも変化が生まれています。その一例が「ジョブ型雇用」です。

ジョブ型雇用とは、組織に一括採用される「メンバーシップ型雇用」の対比となる雇用形態で、仕事内容にマッチした人材を雇用する形態を指します。日本ではすでに日立製作所や富士通などが取り入れている雇用形態であり、企業にとってはIT関連職など専門性の高い職種を確保することや競争が激化する市場で変化しやすい需要に合わせてビジネスを行いやすいメリットがあります。

VUCA時代に突入したことにより、市場や人材のニーズが変化したことで企業が人材を雇用する基準にも影響があることが分かりました。一方で、IT化やデジタルシフトの影響によって不確実で複雑な時代が訪れたことにより、変化が求められるようになったのは企業だけではありません。メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に雇用環境が変化したことによって、労働者に求められるキャリアに対する考え方も次のように変わっています。

 

キャリアに向き合う考え方

キャリアに向き合う考え方

ここではVUCAの時代に求められるキャリアの向き合い方について、3つの方法をSchooの授業を交えながらご紹介します。

 

1,キャリアに対する主体性:キャリアオーナーシップ

キャリアオーナーシップとは、自らのキャリアについて主体的・能動的に考えて行動することです。経済産業省産業の『「人生100年時代」の企業の在り方 ~従業員のキャリア自律の促進~』(2017)によれば、医療技術の向上により平均寿命が100歳前後まで延びると言われている「人生100年時代」においても、生涯を通じて市場から求められる人材になるためにキャリアオーナーシップの醸成が必要だと言われています。

つまり、VUCAの時代を生涯を通して生き延びるためにも、企業に頼らず活躍できる人材になることが求められているのです。実際に経団連も2019年にはゼネラリストではなくスペシャリストを求めるジョブ型雇用を推奨すると発表(※1)しており、キャリアオーナーシップはすべての労働者に必要な考え方であると言えます。

キャリアオーナーシップを持つ人は、主体性を向上させ、学び続けることでVUCAの時代や人生100年時代においてもキャリアを自分の経験やスキルで切りひらいていくことが可能だと言われています。その一方で、企業や組織は、多様な人材が活躍する場を提供するプラットフォームとなることで労働者とともに成長できると考えられています。つまり、変化のスピードが激しく、複雑化する社会では、企業と労働者が一丸となって市場の変化に対して柔軟に対応していくことで両者が共に成長できる仕組みが必要になっているのです。

※1:採用と大学教育の未来に関する産学協議会

 

2.自分自身が資産:タレンティズム(才能主義)

タレンティズム(talentism、才能主義)とは、成功の源泉は金銭(資本)ではなく起業家精神や個々人の才能であると考え、インクルージョンや環境保全の視点から人々の幸福を再考する経済を指します。

タレンティズムと関係が深い言葉に2020年1月に実施された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のテーマにもなった「ステークホルダー主義」があります。ステークホルダー主義とは、資本主義に変わる経済の形とも言われており、従業員や取引先、地域社会など幅広いステークホルダー(利害関係者)に支えられた、持続可能な新しい経済社会を推し進める考えです。

ステークホルダー主義が注目される背景には第一次〜第三次産業革命で金銭(資本)が最重要視されていた状況に対して、第四次産業でIoTやビッグデータ、AIによる技術革新によって複雑化した社会の課題を抽出し、それを解決するためには多様な才能が重要視されると言われている点や、ESG(Environment:環境、 Social:社会、Governance:ガバナンス)投資が盛んになってきている中で新型コロナウイルス感染症の流行で社会格差が浮き彫りになったことが挙げられています。

持続可能な新しい経済社会を実現するための問題を解決するにはさまざまな立場からの意見が必要になるため、ステークホルダー主義を推し進める上では個々人の才能を活かした経済の形(=タレンティズム)は必要不可欠だと言われており、注目を集めているのです。

 

3.変化への対応:プロティアンキャリア

プロティアンキャリア

プロティアン(Protean)とは、思いのままに姿を変えられる神プロテウスが語源となった言葉で「変幻自在な」「多方面の」の意味を持ちます。この言葉を用いたプロティアン・キャリアとは、社会や経済などの変化に対応しながら、自らの働き方や能力を柔軟に変えていける変幻自在なキャリアのことです。

プロティアンキャリアには「アイデンティティ(同一性)」と「アダプタビリティ(適応能力)」二つの特性があります。「アイデンティティ」は社会人として自分にどのような能力があり、どのような人物であるか理解して自分らしく働き、それを市場や組織から求められている状態を示しており、「アダプタビリティ」とは自分らしく働くために必要な変化への適応スキルのことです。

従来のキャリアには組織からの評価や尊敬が必要でした。一方プロティアンキャリアではVUCAの時代や人生100年時代で自律したキャリアが求められるようになったことと同じように、自分の能力を活かす意味としての「自分らしさ」や自尊心の必要性を説いています。

また、従来のキャリアはあくまで組織に依存していたのに対して、プロティアンキャリアの場合はキャリアの所有者は個人であるという「個人資本」の考えが土台となっている点にも大きな違いがあります。つまり終身雇用が崩壊し、これまで常識だと思われていたキャリア観がどんどん崩されている現代の「お守り」とも言えるキャリア術、それが「プロティアン・キャリア」だと言えるでしょう。

以下の授業では環境の変化に応じて自分自身を変化させ、柔軟なキャリア形成を行っていく「プロティアン・キャリア」の考え方を軸に、不安の時代に折れずに幸せに生きていくためのキャリア術を学びます。これからのキャリアを設計するための指標を見つけたい方はぜひ受講してみてくださいね。

教えてタナケン先生 幸せに生きるための最新キャリア術

教えてタナケン先生 幸せに生きるための最新キャリア術

先生プロフィール

田中 研之輔

田中 研之輔(たなか・けんのすけ)
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。ソフトバンクアカデミアにも外部一期生として在籍。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)他多数

 

キャリア設計の方法・広げ方

現代は技術革新のスパンや環境の変化のスピードが早いために、組織に依存せず、変幻自在で自律型のキャリアを築く必要があることが分かりました。それでは、時代の流れに合わせて実際にキャリアの幅を広げるためにはどのようなことをする必要があるのでしょうか?

 

1.キャリア資産を棚卸する

キャリア資産

キャリア設計の第一歩として役立つ方法には自分のキャリアを資本として捉えて整理する方法が挙げられます。ここではSchooの授業から、純資産と資本(純資産と負債)のバランスを示したBS(バランスシート/貸借対照表)の型を用いて、自分のキャリアの棚卸に利用する考え方をご紹介します。キャリアの棚卸に利用する項目はBSのうち「資産」と「純資産」です。

資産のうち、時間は仕事で自由に使える時間を指し、体力は仕事で使える体力を指します。また金融資産は自己投資などに使える資産を示します。さらに経験資産は自分が仕事の中で経験として蓄積しているもの、技術資産は仕事の中で出来ることを示します。また純資産の社会関係資本は自分が属しているコミュニティを指し、のれんは資産として可視化されていないが、学歴や印象などの相手からの期待値に関係することを指します。

このような項目に当てはめ、自分にはどんな資産があるかを洗い出してみましょう。得意なことやこれまでの経験と照らしてどこを伸ばしていくか、限られた時間という資産を何に投下するのかなどを考えることで、キャリアデザインのヒントが見つかるかもしれません。以下の授業では自主的にキャリアデザインを描いていく上で必要な自己分析を体験できます。

データで考えるキャリアデザイン〜自分の選択肢と可能性を広げる

データで考えるキャリアデザイン〜自分の選択肢と可能性を広げる

先生プロフィール

寺口 浩大

寺口 浩大(てらぐち・こうだい)
1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。就職活動中にリーマンショックを経験。メガバンクで企業再生やM&A関連の業務に従事したあと、IT広告、組織人事のコンサルティングなどの経験を経てワンキャリアに入社。現在は仕事選びの透明化と採用のDXを推進。「ONE CAREER PLUS」リリース後、キャリアの地図をつくるプロジェクトを推進。専門はパブリック・リレーションズ。

 

2.機会を活かしてキャリアを広げる

自身の進みたい道や興味がある分野がある場合でも、そこで実際の経験を積む最初の一歩にハードルを感じるケースもあるでしょう。最近では企業寿命が職業寿命より短くなる現象や、新型コロナウイルスの流行など、技術革新や環境要因による社会構造の変化が起きており、これらは新しい働き方を築き、キャリアを広げるチャンスにもなっています。ここではSchooの授業を参考にキャリアを広げるための方法をご紹介します。

< 社会人インターン >

社会構造や転職市場が変化する中で、業界や業種、時間や空間などをいかに越境したキャリアを描くかが重要になっている現代。そのキーポイントとなるのが「ディグ(Dig)るキャリア」です。ディグるキャリアとは、自分の経験を深く掘り起こすことで新たな業界や職種、新たなキャリアに挑戦することを指します。社会人インターンやキャリア採用の領域でディグるキャリアを実践する人も増えている傾向があります。

< キャリア採用・異業種転職 >

コロナ禍で転職市場のトレンドにも変化があり、コモディティ化を脱するために異業界や異職種の知見を求める企業も増えています。そのため今後は異業界や異業種への越境キャリアが必要不可欠になると言っても良いでしょう。また業界や業種だけではなく、自分の強みを活かしたり、夢を叶えるために時間や空間、人間(じんかん)を越えて働く方も増えていると言われています。

< リスキリング >

リクルートワークス研究所『リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』(2021)によれば、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を指します(※)。ここまでご紹介してきた「機会を活かしてキャリアを広げる方法」を詳しく知りたい方や、異業種や異職種に越境したキャリアを築きたいと考えている方は以下の授業を受講してみてくださいね。

※参照:『リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』(2021)

転職市場 最前線〜増える異業界×異職種へのキャリアチェンジはなぜ?

転職市場 最前線〜増える異業界×異職種へのキャリアチェンジはなぜ?

先生プロフィール

藤井 薫

藤井 薫(ふじい・かおる)
1988年リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。B-ing、TECH B-ing、Digital B-ing(現リクナビNEXT)Works、Tech総研の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・GMを歴任。2007年より、リクルートグループ固有のナレッジの共有・創発を推進するリクルート経営コンピタンス研究所 、グループ広報室に携わる。2014年より、リクルートワークス研究所Works編集兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長就任。リクナビNEXTジャーナル編集長。HR統括編集長、リクルート経営コンピタンス研究所 エバンジェリスト、デジタルハリウッド大学・明星大学情報学部非常勤講師。著書『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。

 

まとめ

未曾有のパンデミックにより、先行きが見えにくく、複雑化した社会を生き抜く難しさを痛感した方や自分の生活スタイルに合った働き方を探している方にとってキャリアの悩みは尽きないものです。記事でご紹介した授業の中で気になったものを受講して、自己分析や転職市場の理解に役立ててみてくださいね。

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