登場人物

かいせつ先輩

ずっと卒業しない先輩。なんでもわかりやすく解説するのが趣味。


猫田くん

好奇心は強い方だが、面倒くさがりですぐ人に聞いちゃう人。聞き方は失礼だが、なぜか憎めない。


 

今の会社を辞めて、自分で事業を始めたい。そんな人には起業という選択肢があるけど、起業するためのステップや心構えなど、知らないことがたくさんあるよね。

そこでオススメしたい授業が、「これから起業をするあなたへ、伝えたいこと」。

本授業では、実際に起業を経験した先生が起業の際に知っておくべきポイントを解説してくれたよ。これから起業したいと考えている人や、起業して間もない人の参考になる内容だから、チェックしてみてね。

 

「起業」をするためのステップとは

猫田くん

起業って難しそうだけど、どういうステップを踏めばできるの?

 

かいせつ先輩

起業すること自体は、そこまで難しくはないんだ。なぜ起業したいのかを考えたうえで事業内容を決めて、資金を集めて、手続きを済ませれば事業を始めることができるよ。

ただ、起業するのは難しくなくても、起業を成功させるのは難しいといわれているんだ。新しく誕生した会社の約3割が、最初の1年で廃業するというデータもある。だからこそ、最初の1年でつまずかないようにする心構えが必要だね。

起業準備から実際に起業するまで、そして起業してからの紆余曲折については、起業を経験した先生があとで詳しく解説してくれるよ。


 

これから起業をするあなたへ、伝えたいこと

かいせつ先輩

ここからは授業内で先生が話してくれた、起業してからの具体的なステップをチェックしていくよ。株式会社エニグモの代表取締役の田中禎人先生(2013年4月放送時点。現在は退任)が起業準備を始めてからの10年間を振り返りながら、うまくいったことや失敗したことを解説してくれたんだ。起業のヒントになる話が盛りだくさんだから、参考にしてみてね!

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田中先生:まず、2002年にさかのぼります。僕は広告代理店でマーケティングプランナーをやっていたんですが、30歳前には起業したいとずっと思っていて。

28歳になって、そろそろ起業を考えないとまずいなと思い、毎日ビジネスアイディアを考えていました。そのなかで1番成功確率が高いんじゃないかと思えたのが、今展開しているBUYMAというサービスです。

インターネットの知識や経験がないので知識があるパートナーが必要だと思い、広告代理店の同僚である須田に声をかけました。

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そこでのポイントです。まず、ビジネスアイディアを出すプロセスですが、ポッと思いつきません。人によるかもしれませんが、僕はとことん考えてやっと思いつきます。あるとき天から降ってきたとよく聞きますが、そうじゃないんじゃないかというのが僕の経験です。たまに「起業したいけどビジネスアイディアが思いつかないんです」という方もいらっしゃいますが、もっともっと考えれば出てくるよと僕は思います。

あとは、パートナー選びですね。共同代表ということで、よく「喧嘩しないんですか?」と聞かれるんですが、僕たちは喧嘩したことないんです。共同代表という仕組みがどうというのではなく、相手が合うかどうか、相手次第だと思うんですよね。何のために起業するかとか、どういう会社にしたいかとか、価値観や仕事の仕方、人との付き合い方、ノリ、覚悟など。そういうのが合っていれば、共同代表としてもチームとしてもうまくいくんじゃないかと思います。

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そして2003年の1年間は、すぐに起業せずビジネスプランを作成し、サービスモデルを精緻化していきました。あとは自分たちがお金なかったので、お金集めをしていましたね。

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ポイントとして1番上に気合い、かけ声大事って書いたんですが、起業する方がやったら良いんじゃないかと思うことです。我々はいつもプレゼンしに行く前、ビルに入る前に「よし!世界変えるぜ!」って言ってから入っていったんです。なかなか起業ってスムーズにいかないんですが、そうやって自分たちの意志を確認したり気合い入れたりすることが結構良かったと思っているので、やってみると良いんじゃないかと思います。

あとはやっぱり1人より2人で起業する方がうまくいくんじゃないかと思いますね。起業のプロセスで大変なことはたくさんあるんですが、それを話せる相手がいるし、プレゼンするときにも1人より2人の方が説得力も存在感もある。あとはお金を友人や知人から集めるのであれば、1人より2人の方が数が多いので集めやすい。

資金調達ですが、VCからお金を集めようとしても最初は難しいです。我々も10社くらいにメールを出しましたが、ほとんど反応がなく結局出資はしていただかなかった。基本的に何もコネクションとかなければ、難しいですね。あとはモノ(商品・サービス)がないと、なかなか出資しにくいです。友達や家族はそれまでの自分たちを理解して、モノがなくても出資してくれやすい。

ただし、あまり1人の方から大量に出資いただくよりは、小口でやった方が良いと思います。やっぱり友達や家族から大金を出資していただくと、最初は事業がうまくいかないので気まずくなることがあるので、避けた方が良いです。あとは大金を出すと口を出したくなるというのは自然な流れなので、なるべく小口にした方が良いと思います。

最後の持ち分を維持するというところは、我々の場合は思いが先行してとにかくサービスを出したいと考えてお金が必要だったので、我々と同じ株価だから出資してと友人に頼んだんです。でも、それで持分比率が下がって後々苦労したので、株価を変えてうまくやるのが良いと思います。

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そして、2004年にいよいよエニグモを設立してBUYMAをローンチするはずだったんですが、発注した会社が出した下請けの会社が夜逃げしちゃって、全部ナシになっちゃったんです。半年くらい待っていたんですがナシになったので、もう1回やり直しになりました。その間に我々会社も辞めていたので、その間にフリーで広告の企画の仕事とかしていました。あとは会社を辞めたので、極貧生活を送っていましたね。

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このときの経験から、値切りすぎるのは良くないと学びました。最初に発注したとき、かなり値段交渉したんですよね。BUYMAってすごく複雑な仕組みなんですが、おそらくその値段交渉によって、その仕組みを作れない会社に発注先が出しちゃったんじゃないかと思うんです。値切りすぎて、ちゃんと作るお金がないというのが原因の1つじゃないかと思っています。あまり価格を下げると質に影響するし、最悪我々みたいに完成しないこともあり得ます。

2つ目の作り込みすぎないというところは、もう1回作り直すとなったときに、また半年かかるのかと。もっとシンプルにして内容削ぎ落として、もっと早く作れないかという議論をしたんですが、せっかく会社を辞めてやるからには、自分たちがこれだと思うものを出したいということで、何も簡略化せずに作ったんですね。その結果必要のない機能もあったので、作り込みすぎてお金と時間を無駄にしたというのがあります。どういう使い方がされるかというのは当たるとは限らないので、調整が必要になるから最初は作り込みすぎない方が良いと思います。

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そしてその半年後にやっとBUYMAが立ち上がるんですが、オープンした日からVCの会社からどんどん連絡が来て、結局何社からか1億円ちょっと調達しました。「これからやるので話聞いてください」と言ったときはあまり相手にされなかったんですが、モノを作ると一気に相手にしてくれるのが面白いなと思いましたね。

でも立ち上げて、全くうまくいかなかったんです。全然自分たちが想像していた売上とか会員数には到達しなくて。機能やコンテンツを入れるなど、とにかく色々したけどうまくいかないという時期がありました。うまくいかないとみんな口数も少なくなるし笑顔もなくなるし、たまには険悪になる。これはまずいと思って、収益を立てられるサービスを立ち上げようとして、プレブロを作りました。これが爆当たりですぐ売れ始めて、エニグモ大丈夫そうだと光が見えました。

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そこで思ったのが、やっぱりCtoCは難しい。場を提供してどう使ってもらいたいか考えるんですが、なかなか自分たちが想定したとおりにはいきませんね。あと、合議制より責任です。起業したときってみんながすごく自分事なので、みんなで決めたがると思うんですよ。すべてのことをみんなで決めようとするから、なかなか意見もまとまらないしスピードも落ちる。これはまずいということで、話し合いはみんなで参加しつつ、最終的には代表が決めることにしました。

あとは、知っている市場はやっぱり強いですね。我々にとってBUYMAってすべてが手探りだったんですが、プレブロみたいに広告主に対して広告サービスを売っていくというのは広告代理店で土地勘があったので、非常にやりやすかったし説得力もありました。

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そして2006年に入り、プレブロは絶好調でBUYMAは相変わらず苦戦していました。プレブロがうまくいきはじめたので、会員数を増やしていこうと予算を割いてマーケティングとか採用に費やしました。毎月3〜4人くらい入ってくる状態が続きましたね。ただ、BUYMAが収益に貢献していないので、事業部の温度差が生まれてくるんですよね。

ポイントとしては、ベタ踏みすればfirst mover advantageは取れるんじゃないかと。1番最初に市場に入ればリーダー的ポジションが取りやすいと思うんですけど、ベタ踏みをするタイミングを見逃さなければリーディングサービスでいられるのかなと思いますね。あとは、複数事業部の調整は難しいところです。自分はこのときプレブロを担当していたんですけど、やっぱり会社全体を見ないといけないので、組織全体としてどう整合性を取るかというのを考え始めました。経営者の仕事はそういうことなんだろうと思った時期でしたね。

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その次の2年間で、イケイケだったプレブロがだんだん弱まってきて、我々としてもBUYMAに一本化しようと決めて、広告事業は縮小しました。そして当時米国にサービスを作ろうとして海外展開していたんですが、撤退しようと決めました。

ここでのポイントは、売上は営業のかけ算ではないことです。営業のかけ算で売上は想定できないし、してはいけないんだと。あと、人には適正があるというのもわかりましたね。結構ポテンシャル採用みたいな感じで営業を採用していたんですが、向き不向きが非常に強いと感じました。適正に気づいてあげて適切なところに配置するのが大切ですね。

あとは、売却はタイミングがすべてです。プレブロが好調だったとき、「売ってください」というお声がけが結構あったんですが、全部断っていたんです。でももう少し先を見ていれば、今売った方が良いんじゃないかという判断もあったかもしれない。実際、縮小するとなったときに売却という選択肢も考えてお話したことがあったんですが、時すでに遅しで。興味がない、もしくは価格が低いということがありました。

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そして2010〜11年なんですけど、広告事業を撤退してBUYMA一本でやり始めました。このときに戦略転換をして、それまではCtoCを売りにしていたんですが、とにかくみなさんに使っていただける良い買い物体験が提供できるショッピングサイトにしようと。そしていよいよ上場準備を始めました。

そのときのポイントとしては、競合がいるとやりやすいなと思いましたね。それまでは競合はいないと思ってきたんですが、自分たちはどこよりも良い買い物体験ができるショッピングサイトを目指すんだって決めたら、一気にどこが競合かはっきりしました。それで何をすべきかが明確になりましたね。そして2012年にやっと東証マザーズに上場しました。これで創業時にお金を出してくれた方々への約束がやっと果たせたなと、感慨深かったですね。

起業をしたいと考えている方にメッセージを送るとしたら、「やるならやれ」と言いたいです。人生は短いので、迷っているうちに終わってしまいます。やりたいと思ったら、やった方が良いです。

 

Q&A!みんな気になる、あの疑問に先生が回答

 かいせつ先輩

ここでは、授業を受けた方の質問とそれに対する回答を紹介していくよ!

Q1:スタートアップのメンバー採用の際に気をつけていたことはありますか?

A1:「同じものが見えているかどうか」は重視しました。例えば自分たちが描いている5〜10年後のBUYMA像が、その人も見えているかどうか。それが僕らにとっては大事でしたね。

 

Q2:今のI T業界において、IT経験がない人間が起業するうえで必要なものは何でしょうか?

A2:今のIT業界においてかはわかりませんが、チームって大事だと思うんですね。自分に経験がないのであれば、それを補う経験や知識がある人と組むのが良いと思います。

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