9/24(Sun)
2019年8月30日 11:49 更新
かいせつ先輩
そこでオススメしたい授業が、IT起業家が創り出す「未来」のアイデアは、どこから生まれるのか?〜クーリエ・ジャポンが聞く。
本授業では、クーリエ・ジャポン編集長と副編集長が、起業に至るまでの経緯や起業してからの苦労話を3人のIT起業家に聞いているよ。起業のためのアイデアを生み出すヒントが得られるから、これから起業したいと考えている人はぜひ役立ててね。
起業のアイデアを生み出す方法とは
猫田くん
起業のためにアイデアを生み出す必要があるのはわかるけど、アイデアってどうやって生み出すの?
かいせつ先輩
起業のアイデアを生み出す方法は、たくさんあるよ。自分の好きなことや得意なことをもとに考えたり、自分が感じた課題を解決するための事業を考えたり。自分の実体験だけでなく、時代の流れを考慮したり本やイベントなどから情報を得たりするのも有効な方法だよ。
実際に先輩起業家たちがどんなふうに起業のアイデアを生み出したのか、気になるよね。このあと3人のIT起業家たちの実例を紹介するから、確認してみてね。
【クーリエ・ジャポンが聞く】IT起業家が創り出す「未来」のアイデアは、どこから生まれるのか?
かいせつ先輩
ここからは、授業で先生方が話してくれた、起業する際のアイデアの出し方や起業の体験談を紹介するよ!
オンラインからギフトを贈れるソーシャルギフトサービスを運営するギフティ、誰もが教室やワークショップを開催できるスキル共有のマーケットプレイスを提供するストリートアカデミー株式会社、そして個人向け資産管理サービスや中小企業向けクラウド会計サービスを提供している株式会社マネーフォワード。代表3名の話から起業のヒントが見つかるはずだから、チェックしてみてね!
クーリエ・ジャポン編集部:起業に憧れることはあっても、核になるアイディアがないと起業はできないと思います。先生方は、起業に至るアイディアをどう思いついたのでしょうか?
辻先生:僕は前職が証券会社で、ネット証券の出現で世界中からプロダクトが手に入るようになったんですが、それをうまく使いこなせなくて損をしたり悩んだりされているユーザーの方がよくいらっしゃいました。
そういう方々の役に立つ、ユーザーサイドに完全に立ったサービスがあると、お金の課題が解決できるんじゃないかと思って考え出したのがきっかけですね。
藤本先生:私はもともと学びが大好きで、大学院に2回行ったり料理教室に行ったりしたんですが、日本では1歩踏み出せないがゆえに本当にやりたいことに就いていない人が多いんじゃないかと思いまして。
新しいことを始める背中を押したいなという思いがありました。もう1つ、マッチングサービスの原体験としては、私の妻がケーキ教室をやっていたんですね。そしてとある場所ではすごく集客できたんですが、別の場所では全然できなくて辞めてしまったという経験がありました。
集客導線がないから背中を押されない人が結構いるのではないかと思って、もしかしたらこれが学びたいということの解決策になるのではないかと思い、個人の「教える」のマッチングで学びを自由にしようと考えました。
太田先生:私の場合は、自分が欲しかったというのがきっかけになっています。大学時代にアカペラのサークルに入っていたんですが、メンバーが多くて毎週の練習で誰かしらの誕生日があったので、みんなでバースデーソングを歌って祝っていました。
ただみんな卒業して社会人になってからは、誕生日にわざわざ会うのも難しいし、かといって住所も知らないからプレゼントも贈れない。こんなときにメッセージ以上の気持ちを伝えられる手段がないというのが、個人的に解決したいところでした。
そこでコーヒー1杯が手軽に贈れたら良いんじゃないかなという考えが、自然と自分のなかから出てきた感じですね。
クーリエ・ジャポン編集部:なるほど。実際にアイディアを思いつくところまでは多くの方が経験あると思うんですね。でも、それを実現するのが難しいと思うんですよ。アイディアが出てから、実際にどのような行動を取られたのかをお聞きしたいです。
辻先生:おっしゃる通りアイディアはみなさん思いつくので、そこからどうやって実現するかが1番難しいところだと思います。僕たちはとりあえずアイディアをノートに書くんですが、書いているだけではわからなくて、モノを作らないとわからないんですよね。
なのでサービスを作ってみようと。いわゆるプロトタイプと呼ばれるものを、初期メンバー6人くらいで作りましたね。作ったサービスは知り合いに使ってもらって、だんだん使われなくなっていったら使えないサービスということなので、そこで学びがありましたね。
藤本先生:私は個人的興味で始めたので最初チームがなくて、もともと金融業界にいたのでインターネットのこともよく知らなかったんですよね。まずIT系の受託会社にいる友達に「こういうサイトを作ってもらったらいくらかかるか」と聞いたら、4〜500万円かかると言われまして。
それは厳しいと思って、クラウドソーシングを利用して海外の方に安価で発注できると知ったので、40万円くらいで制作を依頼しました。出来上がったサイトを見せて仲間を募ろうとしたら、今度はプログラミング言語が日本ではあまり流通していないものだと知って、やっぱり作らないとダメだと思い、大学生のアルバイトを見つけて自分もプログラミングを学んでサイトを強引に作りました。
太田先生:僕もプロトタイプを作りたかったんですが、サービスを作る知識がそこまでなかったので、まず原始的にアンケートを作りました。たとえばこういうシーンでこういうギフトを贈れるサービスがあったら使いますか?というシンプルな質問を用意して、まず自分が感じたニーズが他の人にも共通するのかを調べましたね。100人くらいに聞いたんですが、8割くらいがそういうサービスがあったら使うと答えてくれたので、それがモチベーションになりました。
クーリエ・ジャポン編集部:何かを立ち上げるうえで、仲間ってすごく大事じゃないですか。どういうところを見れば、信頼できる仲間かどうかわかるんでしょうか?
辻先生:はじめは何もない状態で、こういうサービスがあるとこんな課題を解決できてハッピーになるんだというのを言うんですが、モノがないので絵に描いた餅で、全然説得力がないんですよね。
なので僕という人を知っている知り合いを巻き込んで、徐々に仲間を募って行きましたね。当時の自分も今ほど明確にビジョンを持っているわけではないので、仲間と議論を重ねながら固めていくというのがありました。
太田先生:僕の場合は創業メンバーが僕を含めて3人いたんですが、1人は新卒で入った会社の同期で、彼がシステム面を見て僕が全体のビジネスを見ていました。そしてデザイナーがいなくて、知り合いにも全くいなかったのでどうしようと思っていたら、たまたまtwitterでwebデザイナーが集まって夕食会をやるという謎の会が開かれると知って、そこに行きました。
そこでアイディアを話したときに1番良い反応をしてくれた方がいて、ピンときたというかビジョンへの反応が合ったので、後日メールをしたら一緒にやりましょうとなってメンバーに加わった感じですね。
クーリエ・ジャポン編集部:なるほど。そのうち会社を辞めてサービスに専念しようというタイミングがくると思うんですね。そのときに色々な恐怖があると思うんですが、どのように決断されましたか?
太田先生:僕はインキュベーションに応募をして、そこで採用してもらえたのが大きな自信になりましたね。
そこにもいろいろなメンターの方がいて、もちろんダメ出しもたくさんされたんですが、「これには可能性がある」と言っていただくこともあって、それが自信になって踏み切ることができたという形です。
藤本先生:私の場合興味本位で始めたので、サービスがローンチしている、チームがいる、ファイナンシングを受けているなどの条件が1年以内に揃わないと辞めると奥さんに話していました。そのうち半年間は1人だったんですね。
サービスはリリースしたんですが、チームはなかなか作れなくて、現CTOが自ら私のところに来てくれなければ、チームはなかったかもしれません。彼にお給料を払うためにファイナンシングを取りにいこうということで、エンジニアのリソースとして投資をいただくことで、チームとしての事業が始まった形でした。
辻先生:僕は36歳で起業したので、周りから見たら「なんで?」って感じでした。もともとこのサービスは前の会社でやりたかったんですが、なかなか環境が難しくて。
でもやりたかったので、会社を辞めて自分でやろうと決めたんです。ボトムラインを3年と決めて、3年でダメだったらバイトでもなんでもやろうと思いました。この日本で食いっぱぐれることはないじゃないですか。だから最終的に「死にはしない」という感じで起業しましたね。
クーリエ・ジャポン編集部:ありがとうございます。パート2は組織についてですが、それぞれが目指す良い組織の定義みたいなものをお聞きしたいです。
太田先生:トータルフットボールというオランダのサッカーみたいなイメージがすごく強いです。
フォワードだからフォワードしかやりません、ディフェンダーだからディフェンスしかやりませんというのではなく、ベンチャーって大企業に比べるとリソースが限られているので、自分の責任範囲しかやらないというよりは、自分の仕事をやりつつ周りのメンバーが苦しんでいたら手助けをしてあげるといった、チームで勝つというのが理想の組織ですね。
エンジニアが軸足だけどデザインが強いとか、軸となるものを1つ持ちながら他も少しずつできるという人材がたくさんいる組織が理想です。
藤本先生:私も似ているんですが、スキルよりマインドセットの方が重要だと思っていて。よく組織論で「自燃・可燃・難燃・不燃」という人間の型があると言われますが、ベンチャーの場合はいちいち言っていると進まないので、自燃型の人が望ましくて、その次に可燃型の人がくる。
本当にやりたい人、この事業が楽しいと思える人が集まる方が重要なのかなと思います。不確定要素が多いので、スキルで雇ってもワークしないこともあるので。
辻先生:基本的にベンチャーに来るのは自走できる方が多いので、僕たちの場合はチームを細かく分けてそれぞれが自分たちの考えですべて回せるようにしています。
昔はピラミッド型の組織だったと思うんですが、今は崩壊していると思っていて。個人個人がアメーバみたいにつながって個人が力を発揮できる組織というかチームが理想だと思いますね。
クーリエ・ジャポン編集部:なるほど。続いて、パート3にいきたいと思います。いままで たくさんの困難があったと思うんですが、1番大変だった時期あるいはこんな失敗をしてしまったという体験談があればお聞きしたいです。
辻先生:会社を辞めサービスをリリースして、ユーザーが10人くらいという状態が1〜2カ月続いたのが1番大変でしたね。
「成長がすべてを癒す」という言葉は本当にその通りだと思うんですけど、成長していないときが1番きつかったです。我慢して要因を分析して潰していくしかないんですけどね。
藤本先生:辻さんとほぼ同じですが、さらに輪をかけて悪かったのが私の場合はマッチングサービスなので、基本的には相手がいないと来ないんです。
先生を集めようとしても先生は生徒がいないと来ないし、最初にいた先生方は開催がランダムな方ばかりだったので生徒も予約しようがないという状態でした。鶏と卵を体感したのが辛かったですね。
結局、ビジョンに共感してくださる先生が自分の生徒を連れてきてサービスを使ってくださったというのが始まりでした。
太田先生:僕は特に初期のところなんですが、憧れている方の影響でインキュベーションに入って、その方からビジネスプランについて「こんなの流行んないよ」とバサッと切られたのがきつかったです。
いろいろなビジネスを見ている方なので、その方にダメって言われたときはどうしようと思いました。結局やってみるしかないと思って、その方を驚かせようと考えてやるようにしましたけどね。
クーリエ・ジャポン編集部:これから起業を目指す方にアドバイスをお願いします。
辻先生:今は環境が良いので、やりたいことをやるべきだと思います。リスクもちゃんと考えつつ、自分ができることを考えて、死にはしないのでやりたいことをやってみると良いと思いますね。
あとは、あまり自分でアイディアを抱え込まないこと。外に出すと仲間が集まってきてチームができて、自分がやりたいことを実現できると思います。
藤本先生:起業のコストはすごく下がっていると感じていて、半年くらいは全くコストをかけずにモノづくりができる世の中になっています。だから、まずは始めてみること。
モノを作る、サービスを作る、人を巻き込むというのが思ったより簡単になってきているので、会社員の途中でも始められると思うので、あまり恐れずにやってみることをおすすめします。
太田先生:私は創業当初に聞いた「Make meaning」という言葉がすごく印象に残っています。売上が立っているかではなく、世の中の役に立っているかというのを考えてやらないといけない。
事業をやっていくと売上を追求していきたい気持ちも出てきますが、そうすると事業の軸が変わってしまうこともあるので。世の中の役に立つアイディアを実現できているかというのを最も重視してやっていくのが良いと思います。
かいせつ先輩
ここでは、授業を受けた方の質問とそれに対する回答を紹介していくよ!
Q1:アイディアが複数ある場合は優先順位をつける必要があると思いますが、その際に最も重視すべき基準は何ですか?
A1:太田先生:僕が思うのは、複数のアイディアのなかで自分の心が1番動くもの、自然と自分がやりたいと思えるものに着手するのが理想だと思います。
ほかのアイディアの方がビジネスチャンスが大きくても、今後たくさんある壁を突破していくために必要なのは自分がそれを実現したいという気持ちなので。
辻先生:それにプラスオンすると、やりたいことというのはもちろんですが、大きなマクロの動きを見ている方は大きく成功されているなと思います。
藤本先生:自分の強みというのも大事だと思いますね。
僕はインターネットの知識はありませんでしたが、オフラインへのこだわりは強く持っていました。自分の強みというのは自信にもつながりますので、持っておいた方が良いと思います。
Q2:アイディアを生み出すために意識的にしていることがあれば教えてください。
A2:辻先生:とにかく紙に書きますね。紙に書くのがアウトプットで、インプットはfacebook で発信されている方の投稿を読んだり、ひたすらいろいろなサービスを触ったり、ユーザーさんの声を聞きに行ったりしていますね。
インプットをたくさんするとアウトプットしたくなるので、両方のバランスを大事にしています。
太田先生:僕は自分のなかに生まれる違和感にすごく注目していて。生活しているなかで違和感を覚えることは、自分がイメージしていることと差が出ている状態なので、その差分が何なのか分析すると意外とビジネスチャンスになったりするのかなと思います。