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2023年2月10日 11:21 更新
人は本能的に周りの人と自分を比較して生活していると言われています。そして昨今、SNSの普及によって身の回りの友人だけでなく、インフルエンサーなど様々な人の情報が簡単に手に入るようになりました。そのため、これまで以上に自分と他人を比較するシーンが増え、不安や自尊感情の低下を感じる人も多いようです。
ここでは、自分を認めて生きやすくなりたいと考えている方、つまり自尊心を育みたいと考えている方に向けて自尊心の意味や自尊心を高める方法を解説します。
まず自尊心の意味を解説します。自尊心とは「自己に関する全体的な評価を指す概念」です。
そのため、自尊心が高い状態とは、具体的には「どのような自分もかけがえのない存在として、肯定的に受け止められる感覚」です。また自尊心は「顕在的自尊心」と「潜在的自尊心」に分けて以下のように定義されます。
■顕在的自尊心
思考や感情として自覚できる自尊心。自己に対する肯定的または否定的な態度で、アメリカの心理学者・ローゼンバーグが提唱した「自尊感情尺度(Rosenberg’s Self Esteem Scale: RSES)」によって数値で測定できる。
■潜在的自尊心
意識されることなく形成されている自尊心。非意図的に生じる自分に対する肯定的または否定的な態度。
顕在的自尊心は「平日の夜も勉強を続けて資格を取得した」ように、具体的な経験や出来事から認知しやすい特性があります。
一方、潜在的自尊心は自覚していない自尊心です。そのため、例えば「自分で自分を認められるほど努力したが、なぜか心から自信が持てない」など、顕在的自尊心は高くても、潜在的自尊心は高くないという状態があり得るでしょう。
※個別的自己評価が自尊心に及ぼす影響ー重要性と他者からの評価の調整効果ー
自尊心にはいくつかの類義語があります。そしてこれらの言葉の定義や関係性には心理学の研究において様々な議論があり、必ずしも統一の基準がある訳ではありません。
そのためここからは自尊心を高める方法を紹介する前段階として、「自分に抱く感情や感覚」を表す言葉と関係性を整理して紹介します。
プライドとは、自分の人格や思考に誇りを持つ感覚を意味する言葉で、自尊心とほぼ同義で用いられます。一方、自分に誇りを持つために「他者の干渉を排除する」ニュアンスを含むため、文脈によっては「高慢」や「意固地」の意味で用いられる場面もあるため、自尊心と同義か否かは文脈を読み解いて判断する必要があるでしょう。
自尊感情とは、自己に対する肯定的感情を意味する言葉です。
自分に対する意識である点で自尊心と似た意味合いを持ちますが、自尊心が自分の良い面だけでなく、悪い面も受け入れる状態・感覚であるのに対し、自尊感情は自分の良い面を評価する状態・感覚であり、他者との対比による優越感や自信を示す点で異なります。
自己肯定感とは、「自分の価値や存在を積極的に肯定できる感情」を意味する言葉です。自尊心は自分の肯定できる面・肯定しにくい面も合わせて受け止める感覚・感情を意味するため、自尊心の定義の中に自己肯定感も含まれると言えるでしょう。
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< 授業概要 >
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先生プロフィール
中島 輝(なかしま・てる)
ニューライフスタイルを提案する資格認定団体「トリエ」(旧国際コミュニティセラピスト協会、他5団体)を主催し120以上のオリジナル講座を開発。新しい生き方を探求する「輝塾」、好きを仕事にする起業塾「The・DIAMOND」を主宰
自信とは、自分の能力や価値、自身の考えや行動が正しいと自ら信じることを表す言葉です。仕事や家事などに必要な能力を信じることと言い換えられるでしょう。このことから「自信」は、能力に限らず自分の良い面を評価する感情である「自尊感情」に包括されていると言えます。
一方「自尊心が高い状態」は、前述の通り「自分の良い面も悪い面も受け入れる感情・感覚」です。自信には「能力や正しさを信じる」というニュアンスが含まれるため、その点が自尊心との違いになります。
そのため、自信をつけるよりも自尊心を高める方が、自分の悪い部分や他者からの評価に関係ない自分軸にも目を向ける必要があるため、より複雑な感情・感覚だと言えるでしょう。
自己評価とは、自己の行動に対する評価を意味する言葉です。そして前述したように、自尊心とは「自己に関する全体的な評価を指す概念」です。 つまり自己評価は自尊心を生む前のステップとも言えるため、自尊心と自己評価には密接な関係があります。
また、人がどのように自己評価をするかや、どうすれば評価が高まるかについては様々な議論があります。例えば、身近な他人との比較や過去の自分・期待されている理想の自分との比較など、評価軸をとっても様々な理論が展開されています。
いずれにしても、人は自己評価をする際に自分に都合よく考えてしまう傾向があると言われているため、適切な自己評価にはメタ認知のスキル(自己認知の仕方を認知するスキル)が重要です。
自己愛とは文字通り自分で自分を愛することであり、英語では「self love」や「narcissism(ナルシシズム)」と訳される言葉です。
前者の場合は「自分の幸福や興味を追求する姿勢・本能」を指し、後者の場合は「自己陶酔・うぬぼれ」という意味になるため使用される文脈によってニュアンスが変わってくる言葉でもあります。
「自分の存在を信頼する」点で自尊心と類似していると言えますが、その過程が異なります。自尊心はあくまで自己評価によって、自分の存在を肯定する感情・感覚です。一方、自己愛は操作的な行動や自慢によって得られる他者からの評価によって、自分の存在を信頼しようとするのです(※)。
※Narcissism: Symptoms and Signs
自己効力感とは「ある状況下で結果を出すために、自分が適切な行動の選択と遂行できると信じられる感情・状態」を意味する言葉です。
自己効力感の意味は自己肯定感(自分の価値や存在を積極的に肯定できる感情)と似ていますが、自己肯定感が「自分の存在自体」に対する感情・状態であるのに対し、自己効力感は「達成したい成果に対する選択と行動」が対象である点で異なります。また、自己肯定感の上位概念である自尊心の意味とも異なると言えるでしょう。
ここまで自尊心の意味と自尊心の類義語について、解説してきました。次では自分をかけがえのない存在として肯定できなくなってしまう(自尊心が低くなる)原因を3つ解説します。
成功体験が少ない状態は自尊心を低くする要素の1つです。自尊心の類義語でも解説したように、自尊心とは自分に対するさまざまな評価(自己評価)が影響して形成されます。
そのため、成功体験が少ない人は物事の捉え方を変えなければ、仕事や日常生活で成功した体験が少ない自分を評価することができず、自尊心も低くなってしまうでしょう。
成功体験を増やして自尊心を高める方法については、後段の「自尊心を高める方法4選」で解説しています。成功体験が少なく、自尊心が低いと感じている方はぜひ参考にしてくださいね。
自尊心は自己評価の末に生まれる状態です。そして人は、他人との比較によって自分を評価しようとする傾向があります。
そのため、周囲の人と自分を比べて「自分より優秀だ」「自分より成功している」と思う時に、自尊心が低くなる可能性があります。
成功体験が自己評価の向上につながりやすいのと反対に、失敗経験やネガティブな経験の記憶は自己評価の低下につながることがあります。
具体的には「挑戦した未経験の職種が自分のスキルや気質に合わず、早期退職してしまった」などのネガティブな経験があると、挫折感や無力感から自分に対して否定的な感情を持ってしまいがちです。
前提として、人間の脳には危険から身を守るための本能的な働きとして、ネガティブな情報ほど長く記憶に残るようになっています(ネガティビティ・バイアス)。
そのため失敗経験を次の行動に活かすための糧として前向きに捉え直すことができないと、いつまでもその記憶にとらわれ、自己への否定的な感情から自尊心を損ないやすくなるのです。
自尊心が低くなる原因は主に、他者や理想の自分などとの比較による自己評価の低下と過去の失敗やネガティブな思い出をアップデートできないことが挙げられると分かりました。また自尊心の意味や類義語との関係を理解した上で「自尊心が低い」状態を考えると、以下のような状態だと言い換えられるでしょう。
ここでは上記の前提を踏まえて、自尊心が低い人の特徴を解説します。
自尊心が低い人は、自分の良い面ですら肯定できない状態に陥っている場合もあります。そのため、自分の能力を信用する感情である自信も持てず、自己評価も低い状態が続くことになるでしょう。
このような状態が続くと「良い面(物事)が見えていない状態」が基準になってしまうため、悲観的な情報にのみ集中してしまう考え方が習慣になってしまうのです。「ネガティブ思考にとらわれやすいな…」と悩んでいる方は後段の「自尊心を高める方法4選」で一緒に自尊心を高めてみましょう。
自尊心とコミュニケーションスキルにも関連があり、自尊心が低いとコミュニケーションが苦手になる傾向があります。
コミュニケーションスキルの構成要素を定義したENDCOREモデルによると、コミュニケーションスキルは次の6つのスキルに分解されます。
自尊心が低い状態の場合、自分に対して「誇れるものが少ない」「役に立たない」と感じてしまいがちです。
そのため自尊心が低い人は、自分の考えや意見に自信が持てず積極的に自己主張できなかったり、批判を過度に恐れるなどコミュニケーションにおける感情のコントロールがしにくくなってしまうのです。
自尊心が低い状態は、あるがままの自分に価値を感じにくい状態です。そのため、自分を肯定するためには何らかの理由が必要となり、自分が他者からどのように見られているのか、攻撃されることはないか不安になる傾向があります。
前述したように脳はネガティブな記憶ほど長く記憶するように働くため、失敗やネガティブな経験によって自尊心が低くなっている人は物事をネガティブに思い込む傾向があります。
そのため、「失敗しないことが第一」「どうせ過去のように失敗する」と考えやすくなり、新しいことにチャレンジしにくくなってしまう場合があるのです。
自尊心が低い人は失敗やネガティブな経験、優秀な他者と比較された経験など何らかのきっかけがあり、自尊心を高く保ちにくい状態になったと言えます。
自尊心が低くなるきっかけを捉え直さなければ、いつまでも「私には向いていない」「うまくいかないだろう」などのネガティビティ・バイアスがかかった状態で生活するため、物事の良い面に気付けず、結果的には幸福感が感じにくくなる場合もあるでしょう。
自尊心の意味や類義語との関係を理解した上で「自尊心が高い」状態を考えると、以下のような状態だと言い換えられるでしょう。
次ではこれらの前提を基に、自尊心が高い人の特徴を解説します。
自分の評価によって自分を認め、肯定できている状態が自尊心の高い状態です。そのため、自尊心が高い人には他者やシステムが自分を評価する軸とは別の、自分軸(物事の捉え方や自分を評価するポイント)を持っている場合が多いと言えるでしょう。
自尊心の高い人は自分の能力を受容できる状態をはじめとした「内的安定度」が高いとされています。
また困難な問題や危機的な状況に遭遇した時に、自分を適応させる能力「レジリエンス(resilience)」も高いため、自分の能力を受容した上で、自分の失敗に向き合うストレスがかかるイベントにも柔軟に対応できるのです。
自尊心が高い人は自分の価値を肯定できているため、他者に対する劣等感も少ない傾向があります。だからこそ、他者からの評価(例えネガティブな内容でも)も自分の成長のために活かしやすいと言えるでしょう。
また前で記載した通り、自尊心の高さとコミュニケーション能力には相関性があります。上記の要因から、ネガティブな情報を違う視点で捉え直すことで、ポジティブな言葉がけによって他者とも良好な関係が築きやすいのです。
自分の良い面も悪い面も肯定でき、他者との関係も良好に構築できる「自尊心が高い状態」は理想的ですが、自分の考え方や思考の癖にも関係するためすぐに自尊心が高い状態にするのは難しいと感じる場合もあるでしょう。
ここからは、自尊心が高い人になるための方法を4つ解説します。
自尊心が低い状態に陥っている状態から自尊心を高める場合は、物事の悪い面に注目して現状を正しく認知できなくさせている「ネガティビティ・バイアス」を取り除く必要があります。そのため、まずは自分の良い面を構成する「成功体験」や「頑張ったこと」を書き出してみましょう。
書き出す時は他者からの評価や賞賛に関係なく、自分が「成功した」「頑張った」と思える出来事を時間を決めて書き出す方法がおすすめです。
また自尊心がある程度保てている人の場合でも、自尊心をさらに高められるポイントを見逃している(潜在的自尊心)かもしれません。自尊心を高める第一歩として、気軽に試してみましょう。
成功体験や頑張ったことを可視化させる方法と同じく、乗り越えた苦労を書き出すことも自尊心を高める方法として効果的です。
なぜなら、苦労(自分に降りかかった災難や取り組んだ問題)を乗り越えるためには、問題解決のスキルが必要だからです。これは自尊心の一部である自信(物事を遂行できると信じる感情)に繋がると言えるでしょう。
自尊心を高める方法の1つとして、目標を立てるのも効果的です。なぜなら自尊心の一部である自己効力感(結果を出すために、自分が適切な行動の選択と遂行できると信じられる感情・状態)を高められる行動だからです。
自尊心を高めるための目標設定でポイントになるのは、成功体験の積み重ねを前提とした目標設定をすることです。成功体験の積み重ねを前提とした目標は以下のポイントを抑えて立てるようにしましょう。
リフレーミングとは、考えや感情の枠組みを別の方向から捉え直す心理学的なアプローチです。
脳の仕組みを応用したコミュニケーション心理学(NLP:Neuro Linguistic Programming)の用語であり、自尊心の中に含まれる「自信」を持ちたい時に役立ちます。
また他者に対してネガティブな思い込みをしにくくなる上、相手の立場に立った考え方もしやすくなるため、人間関係も良好に保ちやすくなるでしょう。リフレーミングの対象は主に以下2つです。
■状況
状況のリフレーミングでは、自分が置かれている状況を捉え直します。例えば「体調不良で休職中である」状況があるとします。
休職の状況に漠然とした後ろめたさや、不安を感じた場合はリフレーミングを介して「体調とキャリア両方のバランスを取る方法を考える時間を取っている」と状況を捉え直します。
■内面(状況や物事に対する感じ方や考え方)
内容のリフレーミングでは、自分の内面(性格・出来事の解釈・感情)に関する考えを捉え直します。
例えば「自分は素早く決断ができない優柔不断な性格だ」と性格をネガティブに考えているとします。優柔不断な性格によるデメリットを思い浮かべやすく、自信が持てないと感じた場合は、内面のリフレーミングを介して「自分は慎重に比較検討や観察をする、思慮深い性格だ」と自分の内面を捉え直します。
リフレーミングはSchooのコース授業『3ヶ月で自分が変わる心理学』でもやり方の解説と実践をしています。リフレーミングを取り入れて、日常生活や仕事を前向きにこなしたいと考えている方はぜひ、気軽に受講してみてくださいね。
■『3ヶ月で自分が変わる心理学』第1回:長所を見つけ自信をつける
自分軸とは「好き・嫌いの判断基準」です。自分軸を見つけることで、自分の良い面・悪い面を他者の評価軸だけではなく、自分の評価軸でも判断できるようになり、必要以上に他人と自分を比べる必要が無くなるため、自尊心を高められる可能性が広がります。
過去の思い出や経験の中から「楽しかった(好きだと感じた)こと」「楽しくなかった(嫌いだと感じた)こと」を洗い出す作業を繰り返して、自分軸を見つけてみましょう。
自分軸を見つけられたら、自分軸に沿って行動をしてみましょう。自分が心地よい(好き)と思える時間や場所を増やすことで、「自分はここに居て良い」と自己肯定感が高まります。そして結果的に自分の良い面に意識が向けられるようになり、自尊心が高まるのです。
最後に自尊心を高める方法や自尊心が高い人の特徴・考え方を学べるSchooのおすすめ授業をご紹介します。
< コース概要 >
このコース授業では、アドラー心理学をベースに「なりたい自分」になるための心の持ち方や行動方法を学びます。「明確な目標を持ちたいけれど、自分がどのようになりたいのか、何が向いているのか分からない」方におすすめです。
先生プロフィール
平本 あきお(ひらもと・あきお)
日本人では数少ない「米国アドラー大学院修士号」取得者。東京大学大学院修士(専門は臨床心理)。1995年 阪神淡路大震災で両親を亡くしたことを機に、渡米。アドラー心理学をベースに600種類以上の心理学やボディワーク、瞑想を習得後、数々の手法を統合。アメリカでは、小学校や州立刑務所、精神科デイケアなどに、コーチングを初めて導入した。「現場変革リーダー養成コース」主宰。
< コース概要 >
このコース授業ではこの授業では自分や自分が大切だと感じている人々がいる「半径3メートル以内」を幸せにすることで、充足感のある人生をつくる方法について学びます。「やる気が出ない」「自分の夢がわからない」など漠然とした悩みがあって人生に不安を感じている方におすすめのお授業です。
先生プロフィール
本田晃一(ほんだ・こういち)
1973年1月生まれ。1996年にオーストラリア大陸を自転車で横断したり、バックパッカースタイルで世界を周る。 2007年、日本一の個人投資家・竹田和平氏から後継者としての打診を受け、和平哲学の素晴らしさに感銘を受け、気が付いたら500泊寝食をともにし、多くの帝王学を学ぶ。 竹田和平氏を始め多くの方から教わった帝王学などの情報配信をしたり、不定期に経営者や起業家に向けて講演等も行う。 夢は多くの旦那(与えられる人)を育てること。
自尊心とは、自分や他人からの評価である「自己評価」に影響を受けながら、「自分はここに存在して良いのだ」と感じられる、自己肯定感や自分の能力や良い面を信じられる自信などを内包する感覚・感情です。自尊心を構成する要素を知ることで、最終的には自尊心が高めやすくなるでしょう。
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