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非認知能力とは?重要性と大人が高める方法を解説

<目次>
1:非認知能力とは
2:非認知能力の捉え方
3:非認知能力が注目される背景
4:非認知能力は大人も伸ばすことができるのか
5:非認知能力の高め方
6:非認知能力に関する授業を紹介
7:まとめ

近年では、IQなど数値で測れる認知能力よりもEQなどの非認知能力の重要性やその価値について、ビジネスでも話題に上るようになりました。

ここでは、なぜ非認知能力が重要と考えられるようになったのか、大人でも伸ばすことができるのかについて分かりやすく解説します。

 

非認知能力とは

非認知能力とは、その別名をソフトスキルといい、社会性やコミュニケーション力、自制心などを総称した能力のことです。非認知能力が注目を集める要因となったきっかけは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジェームズ・ヘックマンによる研究にあります。この研究によって、それまではIQなどの認知能力が高い年収や社会的地位と紐づきが強いと思われていましたが、非認知能力とこれら成功因子との相関性が高いことが示され、注目を集めたのです。

 

認知能力との違い

非認知能力の対比として存在するのが認知能力です。認知能力は知識・技能、思考力等の要素から成り立つと考えられており、IQテストや知能テスト等で測ることができます。例えば、日本で最もよく使用されるウェクスラー式知能検査は言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの要素を見ることで認知能力の高さを測ります。

 
  • ・言語理解…言葉に関する理解力・概念化能力・語彙知識
  • ・知覚推理…視覚に関する情報把握力・情報処理能力・問題解決能力
  • ・ワーキングメモリー…短期的な記憶力・集中力・注意力
  • ・処理速度…作業の精度・複数の情報の処理能力

※参照: 中央教育審議会 初等中等教育分科会 幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会

 

非認知能力の主な構成要素

認知能力は共通認識のある定義や測定ツールがある一方、非認知能力は詳細な定義があるわけではありません。各団体によって考え方はさまざまであり、認知能力以外の能力すべてのことであるといった広義での社会活動能力を表す場合もあります。

そのため、非認知能力の概要を掴みやすくするために、大枠として対人スキル・対自己スキル・対課題スキルの3つに分けて見ていきましょう。

非認知能力の構成要素 対人スキル 対自己スキル 対課題スキル

対人スキル

対人スキルとは他者と円滑にコミュニケーションを取り、協力して生きていくために必要なスキルであり、非認知能力の一つと考えられています。対人スキルは基礎的な学力や専門的な知識を自分の中でとどめておくのではなく、上手に伝えたり拡散することに役立ちます。対人スキルの具体的な例は以下の通りです。

  • ・協調性
  • ・統率力
  • ・柔軟性
  • ・共感力
  • ・傾聴力

対自己スキル

対自己スキルは環境的な要因に左右されることなく質の高いパフォーマンスを維持し続けることができる自己管理能力のことで、非認知能力の一つです。対自己スキルを持ち合わせることはその人にとっての基盤となり、何をする時にでもその人の行動をサポートしてくれます。具体例としては、以下の能力が当てはまります。

  • ・道徳心
  • ・倫理観
  • ・探究心
  • ・自己肯定感
  • ・自律性

対課題スキル

対課題スキルとは、与えられた課題や仕事を解決するために、計画を立てて適切に処理するために必要な能力です。対課題スキルは多種多様な情報を精査し、正しい情報を元に業務を進める時などに役立ちます。具体的な例として、以下が挙げられます。

  • ・実行力
  • ・時間管理能力
  • ・批判的思考力
  • ・分析力
  • ・論理的思考力
 

非認知能力の捉え方

ここまで、非認知能力の概要と大枠の種類について見てきました。非認知能力は認知能力(IQ)ほど測定の仕組みは型化されていませんが、分類や測定に用いられる代表的な方法として「ビッグファイブ」があります。

ビッグファイブでは人の性格特性を「外向性」「協調性」「誠実性(勤勉性)」「情緒安定性」「経験への開放性」の5つの因子の強弱から診断します。ここからは、ビッグファイブの性格検査法の要素から非認知能力の捉え方を考えます。

 

外向性

外向性(Extraversion)とは、社交性・積極性・活発さ・冒険性・熱意などの特性を表す性質です。

外向性が高い場合、人は積極的に他者と交流することを好み、物事の関心が外に向きやすい傾向があります。一方、外向性が低い場合は思慮深く、控えめで、刺激を求めるよりも自分の安心できる環境を大事にする傾向があります。また、外向性が高い人は営業など、様々な人とコミュニケーションをとる仕事を、外向性が低い人はエンジニアやバックオフィスの業務などが向いていると言われています。

 

協調性

要素の二つ目は協調性(Agreeableness)です。協調性とは、集団の中での協力の度合いや共感能力の差のことを指します。

協調性が高い場合、人は周囲に共感し、思いやりを持って行動したり、協力関係を築くことができます。そのため、協調性が高い人は集団で仕事を行う場合や、人と直接かかわる仕事などに向いていると言えるでしょう。その一方、協調性が低い場合は周囲の視線をあまり気にせずに行動することができるため、人が躊躇してしまうような大胆な行動を起こし、チャレンジすることができます。このようなタイプの人は個人での仕事や、独自性を重視する仕事に向いていると言えます。

 

誠実性

次に、誠実性(Conscientiousness/勤勉性ともされる)について解説します。誠実性は自制心や責任感、真面目さの度合いを表す指標です。

誠実性が高い傾向にある人は目標に向かって地道に努力をし、強い責任感を持って仕事に取り組むことができます。そのため、ルールやマニュアルが体系化されている組織の中で活躍しやすいと考えられます。逆に誠実性の低い傾向にある人は自由さを備えていることから、突然問題が起こっても柔軟に物事に対応することができます。なので、新規事業の立ち上げなどある程度自由な領域の開拓などに着手することが向いていると言えるでしょう。

 

情緒安定性

四つ目は情緒安定性(Neuroticism)で、自制心や心の安定、衝動性などの特性を表す項目です。

情緒安定性が高い場合、何か変化があっても動揺せず、落ち着いていて対応することができます。そのため、常に精神的圧力がかかるような仕事でも任せることができるでしょう。一方、情緒安定性が低いと、感情的になりやすいことから他人の痛みが分かるなど、他人に寄り添えたり危機管理能力が高くなる傾向があります。

 

経験への開放性

ビッグファイブ最後の一つは経験への開放性(Openness)です。経験への開放性とは、新しい物事や価値観、経験への感じ方を表しており、好奇心・想像力・審美眼・独創性などの特性と紐づきます。

開放性の度合いが高い時、好奇心旺盛で何にでも興味を示し、また、芸術など独創性に溢れた領域に魅力を感じます。そのため、クリエイターやアーティストなどの職業に興味を持つ人も多いでしょう。一方、開放性が比較的低い人は既存の知識を重視したり、伝統的、古典的な技術などに魅力を感じやすいです。今あるものに目を向けることが多いことから、技術を踏襲したり既存の事業を固めることなどが得意です。

 

非認知能力が注目される背景

ここまでは、非認知能力がどのような要素で構成されているのかを解説しました。次に、非認知能力が注目される背景を解説します。

 

社会的成功要因として理解されている

社会的成功要因として理解されている

非認知能力が注目されている理由の一つに、社会的成功と非認知能力の関係性があります。そしてこの関係性を指摘し、非認知能力が注目を集めるきっかけを作ったのが経済学者であるジェームズ・ヘックマン教授です。

ヘックマン教授は1962年から、幼児教育を行うことが低所得者層の子供たちにどのような影響を与えるかの検証を行いました(ペリー・プレスクール・プロジェクト)。

この研究は長きに渡り追跡調査が行われ、その中で幼児教育を受けたグループは受けていないグループに比べ、学歴や年収・犯罪率の低さなど社会的成功に関わる要素で明らかに好ましい結果を示しました。その一方、両グループのIQを比較すると、就学後にその差はほとんどなくなっていたことから、IQではない力、すなわち非認知能力が社会的成功に影響を与えていると打ち出され、注目を集めたのです。

 

人生100年時代の到来

科学技術の進歩や食料の安定供給に伴い、先進国では多くの人が100歳を超えて生きる時代(人生100年時代)が到来すると言われています。そして非認知能力は、長い人生を豊かに生きるために必要な力としても注目を集めています。

人生100年時代が到来した結果、相対的に長い年月の間社会で活躍し続けることが必要となりました。また、社会で活躍し続けるためには、長い期間業務に携わるための忍耐力や思考力、幅広い年代で一丸となるためのコミュニケーション力や協調力、そして新しい技術を取り入れ推進するための実行力などが重要です。そのため、人生100年時代に社会と関わり続け、生きがいを感じるための土台となる力こそが非認知能力であると考えられます。

 

AI技術の発達

AI技術の発達 ChatGPT

AI技術の発達も非認知能力が注目される背景の一つです。AIは以前から、多くの仕事を代替するようになると言われてきました。実際に、2022年11月に公開されたOpen AI社のChatGPTは世界的に話題になり、その性能の高さから既にビジネスシーンに大きな影響を与えています。今後もAIの発達は続くと予想されているため、これからの時代では、AI技術を前提とした能力開発が求められると考えられます。

計算や暗記などIQで測れる領域はAIの得意分野であるため、人工知能との差別化を図るためには人間ならではの独自性・新規性を持つ必要があります。

事実、機械学習の専門家であるマイケル・オズボーン教授も人間がAIとの競争に勝つためには、創造的・社会的なスキルが必要になると述べています。そのため、これらの要素を含む非認知能力のスキルはAI技術が急速に発達していく現在、すぐにでも高めたいスキルであると言えます。

※参照: THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?

 

非認知能力は大人も伸ばすことができるのか

前述した経済学者ジェームズ・ヘックマンの研究は、幼児教育における非認知能力の育成の重要性を示唆するものでした。また同氏の研究により、人の教育に対する公的資金の投資は、投資対象の年齢が低いほど効果が高いことが示されました。そのため非認知能力は、幼児教育の文脈でよく語られます。

一方、大人になってからでも非認知能力を伸ばせることが分かっています。非認知能力は、先天的または幼少期に形成される気質だけではなく、意識的なふるまいや価値観によって測られる部分も多いため、継続して訓練等をすることで脳を鍛えればコントロールすることができると言えます。

 

非認知能力の高め方

非認知能力の高め方

ここからは、大人が非認知能力を高めるための具体的方法として次の5つをご紹介します。

  • ・メタ認知や内省力を高める
  • ・伸ばしたいスキルに対して型をインプットする
  • ・具体的な目標を設定する
  • ・人から積極的にフィードバックを受ける
  • ・メンタリングやコーチングを活用する
 

メタ認知や内省力を高める

メタ認知や内省力を高めることは、非認知能力の向上に繋がります。メタ認知とは俯瞰的に自分の認知を知覚することです。また、内省とは自分の内面に目を向け、価値観や言動を振り返ることです。メタ認知や内省を通して自己理解を深めることで、自分の感情や性質、欠点に気づけ、非認知能力の足りない要素を把握することができるのです。

Schooオリジナル授業『すべての経験を学びにする「内省」の技術』では、自分の認知を意見/経験/感情/価値観の4つの観点から俯瞰することが内省を助け、自己変容を促せることを解説しています。メタ認知や内省力を高めたい方は、ぜひ授業をご覧ください。

『すべての経験を学びにする「内省」の技術』

『すべての経験を学びにする「内省」の技術』

 

伸ばしたいスキルに対して型をインプットする

何か特定のスキルを伸ばしたいと考えている場合、その技術を習得するための方法論やフレームワークを学ぶことも有効な手段です。例えば、課題解決力を身につけたい場合、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどの思考法をインプットすることが挙げられます。また、MECEやSWOTなどの課題解決に関するフレームワークを学び、活用することも有効でしょう。

このように、あらかじめ習得のための方法論が整理されているスキルの場合、まずは型を身につけ実践を繰り返すことで自分の力にしていくことができます。

 

具体的な目標を設定する

非認知能力を高めるためには、そのための具体的な目標を設定することも大切です。具体的な目標を設定することでやるべきことが明確になり、達成の確率が上がるためです。

また実際に目標を設定する際は、後で振り返りができるようにできるだけ数値などで測れる目標にすることが理想です。能力開発に関する目標を数値化するのは難しいシーンもありますが、例えば社交性を養うために「月に〇回以上は初対面の人と会話ができる場に参加する」など、行動目標に落としこむことなどが考えられます。

Schooオリジナル授業『目標設定と管理への基礎理解』では、明確な目標を持ち、それを書き出していた人はそうでなかった人に比べ10倍もの収入を得ていたというハーバード大学の研究が紹介されています。このように、具体的な目標の有無で、得られる成果にも差分が生まれやすくなります。

こちらの授業では、チームでの成果創出に欠かせない目標設定・管理の具体的方法とフレームワークについて解説しています。気になる方はぜひご視聴ください。

『目標設定と管理への基礎理解』

『目標設定と管理への基礎理解』

 

人から積極的にフィードバックを受ける

自身の社会性や価値観などの非認知能力は自分で測るには限度があります。そのため、非認知能力を高めたい場合には積極的に周りの人からフィードバックを得られる状態にすると効果的です。

他者から客観的に見てもらい、フィードバックを貰うことで自分に非認知能力がどの程度備わっているのかを理解できます。そして自分に足りない能力やスキルを具体的に知り、進捗を把握することが次のアクションにつながります。職場でメンタープログラムや1on1を実施している方はそのような機会を活かすのもよいでしょう。

 

メンタリングやコーチングを活用する

メンタリングやコーチングを活用する

メンタリングやコーチングを活用することも、非認知能力の向上に役立ちます。目標達成の支援をスペシャリストに依頼することは、目標の解決方法が曖昧になることを防ぎます。また、プロに自己理解を助けてもらうことはメタ認知をするための助けにもなり、発想や思考法を見直すきっかけともなります。そのため、効率的に自分の注力したい能力の向上が見込めます。

 

非認知能力に関する授業を紹介

ここまで、大人が非認知能力を高めるための具体的な方法について詳しく解説していきました。最後に、本稿で解説してきた非認知能力と社会問題の関係性について知識を深めたいという方に向けて、Schooのおすすめ授業を紹介します。

 

生涯年収を変える「非認知能力」〜教育格差の現状を知る〜

生涯年収を変える「非認知能力」〜教育格差の現状を知る〜

< 授業紹介 >

この授業では、教育格差を起点とする社会問題に目を向けながら、その要としての非認知能力のあり方と育む方法を学びます。非認知能力だけでなく、社会問題や子育てにも関心がある方におすすめの授業です。

先生プロフィール

本山 勝寛

本山 勝寛
極貧家庭に育ち、独学で東大、ハーバードに合格。 日本財団で、教育や国際協力、障害者支援、子ども支援事業等を手がける。2021年11月に独立し、4kizを起業。主な著書に『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)、『好奇心を伸ばす子育て』『最強の独学術』(大和書房)、『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ社)などがある。

 

まとめ

本記事では、非認知能力は社会的成功の鍵であり、認知能力に限らず幼少期から育むことが重要であること、そして大人になってもメタ認知や目標の設定などに取り組むことで伸ばせることを解説してきました。

Schooでは非認知能力を含む、幅広い分野に関する生放送授業を無料で公開しているので、ぜひ活用してくださいね。

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