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2019年9月27日 14:22 更新
ーー目次ーー
1. 「マインドフルネス」とは?
2. Google、Facebookのエンジニアが実践する瞑想術(マインドフルネス)とは
3. 「マインドフルネス」をさらに学んでみよう!
かいせつ先輩
GoogleやFacebookなど、近年多くのIT企業が取り入れていることで注目を集めるマインドフルネス。さまざまなメディアで取り上げられているので、言葉を知っている人は多いでしょう。でも具体的にどんな効果があってどのように始めればいいのか…。そんなみなさんに、マインドフルネスの導入編をご紹介します!
猫田くん
マインドフルネスっていうのは、瞑想のことですよね?
かいせつ先輩
マインドフルネス自体は「“今、ここ”に集中する」といった意味があり、マインドフルネス瞑想を行うことで、ストレスが軽減されたり、仕事のパフォーマンスが向上されたりするなどの効果があるといわれています。詳しくはスクーの授業にぴったりのものがあったから、講師のみなさんに聞いてみよう!https://schoo.jp/class/3683
米田智彦 ライフハッカー編集者
1973年、福岡市生まれ。ライフハッカー[日本版]編集長、文筆家。 青山学院大学卒。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。フリーの編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、イベント企画まで多岐に亘る企画・編集・執筆・プロデュースを行う。2014年より株式会社メディアジーンの運営する「ライフハッカー[日本版]」の編集長を務めている。
井上広法 浄土宗光琳寺 副住職
1979年、宇都宮市生まれ。Cocokuriチーフプロデューサー、一般社団法人寺子屋ブッダ理事、hasunoha共同代表。佛教大学で浄土学を専攻したのち、東京学芸大学で臨床心理学を専攻。仏教と心理学の立場から現代人がより幸せに生きるヒントを伝える僧侶として活動している。2014年から、マインドフルネスをベースとしたワークショップ「お坊さんのハピネストレーニング」を開始。全国各地の寺院・学校・企業で熱弁をふるい、女性誌「an・an」や東洋経済オンラインなど様々なメディアでも取り上げられた。
西本真寛 株式会社Campus for H/リサーチ・マネージャー
1983年東京都出身。東京大学大学院医学系研究科修了、ポジティブ・メンタルヘルスを研究。株式会社 Campus for H および関連会社にて、経済産業省の健康経営オフィスレポートや、県の健康寿命研究、市の健康づくりの指針策定等を担当はたらく人の健康づくりを専門に、ビジネスパーソン向けヘルスケア・アプリの開発や、企業の生産性向上のためのトレーニング開発を行っている。
受講生代表:それではまずマインドフルネスの海外事情について米田先生から教えていただきたいと思います。
米田先生:なんといってもシリコンバレーが瞑想を始めたっていう、ここに尽きると思います。とくにGoogleやFacebook、インテルといった錚々たる世界的な企業が、なぜアナログな瞑想を始めたのかっていうところからですね。
Googleが始めた理由は課外活動のような感じで、エンジニアの心の指数であるEQを上げるため、ストレス低減のために、瞑想を始めたんです。
そこでチャディー・メン・タンという人が『サーチ・インサイド・ユアセルフ』というクラブのようなものを作って、その本を出版してそれがすごく広まったということがあります。それからもうひとつマサチューセッツ大学教授のジョン・カバット・ジンが『マインドフルネスストレス低減法』という本を2007年に出版してベストセラーになりました。この2つが起爆剤となって全米を中心に、世界中でマインドフルネスブームがきています。
なぜこのような状況になっているかというと、情報過多のせわしない日常のなかで瞑想をすることによって心を調える、しかもマインドフルネス瞑想というのはサマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想とは違い、誰でも気軽にできるというメリットがあるからです。
「マインドフルネス」の意味は「“今、ここ”に集中する」という意味なんですけども、雑念や未来に不安を抱えるんじゃなくて、目を閉じて呼吸をすることによって自分の心を自分で鍛えて調えていくという実践方法を科学的根拠に基づいて行います。
受講生代表:アメリカの西海岸というと、GoogleやFacebookが生まれた地ですが、なぜ現代のスタートアップ企業はマインドフルネスのようなものを取り入れようとするのでしょうか?
米田先生:やっぱりスティーブ・ジョブズが禅に興味を持っていたという話は有名ですよね。どこかでヒッピー文化と禅というは、昔からテック産業に流れていた文脈なんですけど、そこで先進的な企業であるGoogleが、クリエイターやエンジニアの創造性や生産性をあげるためにはどうしたらいいのか、また離職率を下げるために考え出されたのがマインドフルネスの手法の導入だったのではないかと思います。
西本先生:ではここからは、マインドフルネスがどういうものなのか説明します。
マインドフルネスについて話をするときによく話すのが、“マインドフルネスではない状態”との比較です。心ここにあらずの状態である「マインドレスネス」の反対が「マインドフルネス」になります。
イメージでお伝えすると、マインドレスネスは心のピントがぼやけている状態で、一方でマインドフルネスはピントがくっきり合っている状態です。子どものころを思い返してみると、遊びから帰宅して「今日、楽しかったなあ」と一日が色鮮やかに思い出せていたと思いますが、現代の働いているなかでは帰宅後に空を見たかどうかさえも覚えていないということもあります。
米田先生:子どものころに虫採りをしていたときは夢中という言葉が当てはまるというか、何も考えずに頭がパカーンと割れている状態がありましたね。
西本先生:それに比べるといまは、気になることがいろいろと多すぎて「自分がどれに集中していたのか?」という状況になりがちです。こういった状況を改善するために、マインドフルネスのトレーニングが注目されています。
実際にマインドフルネスを実践している著名人のなかでもっとも有名なのは、スティーブ・ジョブズさんです。彼の場合はデザイン哲学にもマインドフルネスが影響しているのではないかといわれています。日本人だと松下幸之助さん、現在のパナソニックの創業者です。彼もインタビューのなかで、朝のマインドフルネスの時間が大切だと話されています。最近ではテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチさんが自分のメンタルトレーニングとしてマインドフルネスが非常によかったといわれていました。
さらに企業では、さきほども出ましたがGoogleを中心にIT企業が多いです。でもそれ以外にも、ゴールドマン・サックスやマッキンゼー・アンド・カンパニーなど、さまざまな業界でマインドフルネスの取り入れが始まっているんです。
マインドフルネスの研究成果
受講生代表:ここからはマインドフルネスの研究成果について教えていただきたいと思います。
西本先生:さきほどのような先進的な企業がマインドフルネスを取り入れているのか、その研究成果についてお話します。
まずはスライドの文字(しめ切り)をご覧ください。単なる文字ですがご覧いただくと、どうですか?
米田先生:なんかイヤなイメージがしますねえ。
受講生代表:いろいろ思い出しますね、しめ切り物(笑)。
西本先生:ただの4文字の言葉なんですけどね。
米田先生:このオーラ、イヤです(笑)。
受講生代表:今みなさんのなかにいろんなしめ切りが思い出されていますね。
西本先生:こういう文字を見ただけで、なんかイヤ~な感じになってしまっているのは、マインドフルネスではないほうのマインドレスネスに近いかもしれません。たとえば「しめ切り」という文字を見ると、不安になってしまい集中できず、いいアイデアが浮かばない、さらにしめ切りの期日が迫り、周りに迷惑をかけるかもということまで気になってしまうんです。
米田先生:これは精神的に疲れてしまいますよね。
西本先生:そうですね。これではいい仕事ができません。こういったことに対するポジティブな効果がマインドフルネスでいくつも報告されているので一部をご紹介します。
マインドフルネスの効果その1は「ストレスや不安の軽減」で、医学界でも効果があるといわれていることのひとつです。メンタルが安定すると、高いパフォーマンスを維持できることにつながります。
効果その2は「集中力の向上」ですね。元々集中力のトレーニングとしてマインドフルネスがあるのですが、これも科学的にいくつか報告が挙がっています。集中力があがると高いパフォーマンスで仕事ができるようになるんです。
効果その3は「創造力の向上」。アイデアが生まれやすいということについてもマインドフルネスは注目されているんですね。凝り固まった考え方でなく、新しくてもっとやりやすい考え方で問題を解く効果があります。新しいこと、クリエイティブなチャレンジを広げていくことで、もっと自分の仕事の価値を高めることができるかもしれないですね。
効果その4は「コミュニケーション力の向上」ですね。チームワークを進めていくうえでも貢献できる部分なのかなと思います。さきほどまでの個人の能力を高めるだけでなく、チームワークに貢献して、組織のパフォーマンスの向上も期待されています。
こういったいろいろなポジティブな結果を期待されつつ、さらに科学的に検証されているということで、さきほどの先進的な企業で取り入れられているわけです。
井上先生:マインドフルネスを実践するために、まずはどこかに自分の意識を寄せるんですね。伝統的には鼻の呼吸に意識を寄せるのがいいといわれています。ほかにも、お腹の膨らみに意識を寄せる方法もありますが、今回は鼻の呼吸に意識を集中することに統一します。
鼻の呼吸に意識を集中すると、最初はうまくいきますが8秒から十何秒くらいで「あれ? 今日あの仕事やったかな?」とか「明日何を食べようかな?」と、考えが次から次へと出てきます。これが一般的に雑念といわれるものです。このようなマインドレスネスの状態に自分がなっていることに優しく気づくことが重要になります。
雑念に優しく気がついたら、その心をまた鼻の呼吸に戻し集中状態にしてください。そして、またずれてしまったら気づいて、鼻の呼吸に戻し、集中状態にする、というように何回ずれてしまっても戻します。たったこれだけのことです。
とはいえ、一般的に仏教では「調身(ちょうしん)」、「調息(ちょうそく)」、「調心(ちょうしん)」に分けられており、身と息と心の3つを調えていきたいと思います。
まずは
(1)リラックスして姿勢を正し、目を半眼にし2mほど前をぼんやりと見る。
(2)呼吸を調えるために鼻から息を吸って鼻から吐き、深呼吸する。
(3)心を調えるために自分の呼吸に意識を向けます。
息を吸っているときに「自分は鼻から息を吸っている」とナレーションできるような気持ちで、しっかりと呼吸してください。息を吐くときも同様です。このようにただひたすらに、鼻の呼吸に意識しましょう。
かいせつ先輩:マインドフルネスが海外企業で取り入れられている理由や基本的なやり方などを理解できましたか? 次からは受講生のみなさんからの質問をいくつか紹介します。
かいせつ先輩
ここでは、授業を受けた方の質問とそれに対する回答を紹介していくよ!
受講生代表:マインドフルネスの適正時間はどれくらいですか?
井上先生:今回のお話には出てきませんでしたが、マインドフルネスの瞑想をすることによって脳可塑性といいまして、脳のある部分がいい意味で変化してくるのですが、そういった変化が出てくるのに3時間かかったという説があります。でも重要なのは習慣化です。自分が持続できる時間、たとえば3分あるいは5分から始めて最終的には10分に持っていく、といったように徐々に育ててあげてください。
受講生代表:座っているときだけでなく、電車内で立っていたり、外で歩いていたりするときにマインドフルネスはできますか?
井上先生:もちろんできます。歩く瞑想や立って行う瞑想がありますが、電車の中では自分はしっかり立っていると思っていても、電車の揺れで心が持っていかれるんですよね。そこで電車に乗っているときは、鼻の呼吸ではなく身体に意識を集中してみてください。そうすると、「自分が電車に対して結構がんばって無意識に逆らっている」などの新しい気づきが生まれますから、電車内はそういうやり方もあるかなと思います。
受講生代表:朝の5時からマインドフルネスをやっていたことがありますが、寝る前や空腹時など、やったらいいタイミングはありますか?
井上先生:自分のライフスタイルの中でできるタイミングでやることが重要です。というのも、さきほどのとおり習慣化することが大切です。どんないいものでも習慣化できなければ効果は得られません。まずは自分がどのタイミングでできるのかを見極めてほしいと思います。とはいえ、朝がおすすめな時間であることは間違いないので、朝や就寝前などのちょっと静かにできるタイミングで、いつも同じ時間帯でできるように実践してみてください。