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エシカル消費とは?注目される理由やできることについて紹介

<目次>
1:エシカル消費とは
2:エシカル消費の具体例
3:エシカル消費が注目される理由
4:エシカル消費に関連する用語
5:企業がエシカル消費に取り組むメリット
6:エシカル消費の課題
7:エシカル消費実践の企業事例
8:エシカル消費が学べる授業を紹介
9:まとめ

日本国内では2020年にプラスチック削減を目的とした、プラスチック製買物袋の有料化が開始されました。また最近では、買物袋の有料化に続いて、プラスチック製ストローから紙ストローに変更する飲食店も出現しており、環境問題への注目が高まっていると言えるでしょう。

レジ袋の有料化に際してマイバッグが普及したように、企業だけではなく、個人でも環境に配慮した消費が進められています。この社会課題の解決につながる消費の一翼を担っているのが「エシカル(倫理的)消費」です。ここではエシカル消費の定義や注目されている理由、メリットと課題までまとめて紹介します。

 

エシカル消費とは

エシカル消費 とは

まずエシカル消費についての理解を深めるために、言葉の定義や観点、現在日本で行われている取り組みを解説します。

 

エシカル消費の定義

消費者庁によれば、エシカル消費は「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら行う消費活動」と定義されています(※1)。

さらにエシカル消費は、2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と関連が深い取り組みでもあります。

SDGsとは人類が地球で暮らし続けるため、2030年までに達成すべき17の目標のことです。SDGsには貧困や飢餓、医療、環境などのさまざまな社会課題が掲げられています(※2)。

SDGsで掲げられた17の目標のうち、エシカル消費は12「つくる責任 つかう責任」に特に通じる消費活動です。この項目は持続可能な生産・消費形態を確保し、食品ロスや環境汚染、エネルギー不足等の問題にアプローチすることを目指しています。加えて、エシカル消費には地域経済の活性化やマイノリティ雇用への対応など、人 や社会、環境に配慮した消費行動も含まれるので、SDGsと深い関わりがあると言えるのです。

※参照1:消費者庁公式HP「エシカル消費とは

※参照2:ユニセフ公式HP「SDGsって何だろう?」

 

エシカル消費を行う観点

ここまでの内容で、エシカル消費は貧困、人権、労働、環境などの社会問題を取りまとめたSDGsの達成に商品の消費を介して、参加できる活動であることを紹介してきました。

朝日新聞社が15代〜60代5,000人を対象に実施した第8回SDGs認知調査(2021年)で「SDGsという言葉を聞いたことがある」と答えた人がどの世代でも7割を超えました(※)。認知度が高い一方、取組みに関しては「特に取組むことは考えていない」と答えた人が47.7%で、取組みに課題があると言えるでしょう。

ここからは実際にエシカル消費を行う際に必要な、商品の選び方・買い方・捨て方に関する知識をご紹介します。

※参照:朝日新聞社「SDGs認知度調査 第8回報告」

選び方

エシカル消費を実践する際に持つべき商品選びの観点は以下の通りです。

  • 1.生産者に金銭などが還元される(人・社会・地域への配慮)
  • 2.素材が地球環境に優しく、人の暮らしを守っている(環境への配慮)
  • 3.買わない選択肢を取れないか考える(環境への配慮)

1つ目の生産者への還元の具体例としては、フェアトレード認証商品(発展途上国の原料や製品が公平な条件で取引されていることなどが認証された商品)や、売り上げの一部が原産国に寄付される商品につながる商品を選ぶことが挙げられます。

カカオやコットンをはじめとした製品原材料の多くは発展途上国で作られており、立場の弱さから不当に不利な条件での取引となっているケースが問題視されているためです。

また同じく平均賃金が比較的安価である働く障がい者が生産に関わっている商品を選ぶこともエシカル消費の商品選択の1つの基準です。また地元の生産者が関わっている野菜や果物を選ぶことで、地域の復興や活性化にもつながるでしょう。

2つ目でご紹介した、地球環境に配慮した商品の選び方は「グリーン購入」とも呼ばれる行動です。環境負荷が少ないことが証明されている「エコマーク」が付いた商品や、適切に管理された森林の木材で作られていることが証明されている「FSC認証」が付いている商品を選ぶと良いでしょう。

また、3つ目の観点で触れているように、商品購入をする前に「本当に必要なものなのか」をよく考えることもエシカル消費に繋がる行動です。物を作ることにも捨てることにも環境負荷がかかります。日本では多くの物を気軽に購入できますが、購入する前に一歩立ち止まって、「どの程度使うものなのか」、「代替品はないのか」などを考えることも環境への配慮の一つになります。

買い方

エシカル消費の観点で商品を購入するために必要な主な観点は以下の通りです。

  • 1.販売者から商品の特性を丁寧に聞く
  • 2.必要な分だけ買う
  • 3.快適な購入プロセスを踏む

商品を購入する際に量や商品の背景や工程を把握し、より環境や人、社会に優しい商品を優先的に購入することで、エシカル消費に繋げることができます。1つ目で挙げた消費者から販売者への働きかけは、消費者が社会課題に関する意識を高めた上で商品に関する質問を投げかけることで、販売者の社会課題に関する意識を間接的に高める効果があります。

またエシカル消費に則った商品の買い方として、2つ目に挙げた「必要な分だけ買う」はフードロスの削減や森林・水産物の豊かさを守ることにつながると言えるでしょう。

3つめの「快適な購入プロセスを踏む」に関しては、エシカル消費自体を持続可能な消費活動にするため、無理のない範囲でエシカル消費を取り入れることを意味します。例えば、エシカル消費に気を遣うあまり予算オーバーの買い物をし続けてしまっては持続することが難しくなります。エシカル消費のプロセスには自分の生活も含まれていることを知っておくと良いでしょう。

捨て方

エシカル消費では社会や環境に良い影響を与える商品を選び、購入するだけではなく、商品の捨て方にも配慮する必要があります。エシカル消費の観点で商品を捨てる方法は以下の通りです。

  • 1.資源の枯渇を防ぐため、商品を長く使い続ける
  • 2.シェアやリサイクルという手段を活用する

エシカル消費の観点で商品を捨てる際に必要なのは「環境配慮」の視点です。

SDGsの中でもエシカル消費と特に関わりが深い目標12「つくる責任 つかう責任」には11の構成要素があり、その要素野中でも「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」に貢献できると言えるでしょう。

商品を捨てる際、そのまま捨てるという選択肢から一歩視野を広げ、商品を使い続けるための工夫を考えることが大切です。

 

日本における取組み

エシカル消費 事例

ここまでエシカル消費の概要と、エシカル消費の考え方を活かした商品の選び方、買い方、捨て方についてご紹介してきました。エシカル消費は個人でもSDGsで掲げられている社会問題の解決に貢献できる消費活動ですが、日本国内では政府や企業も進んで取り組んでいます。

日本国内で特にエシカル消費を積極的に推進しているのは、環境省と消費者庁です。次でそれぞれの取組みについてご紹介します。

環境省

環境省は廃棄物対策や海洋汚染防止などの環境基本計画などを通じ、政府全体の環境政策を行う機関です。

省エネルギーやリサイクル、食品ロスのカットやファッションロス削減などを中心とした地球に優しい環境で作られた商品選びを啓発することで、環境面からエシカル消費を支えています。具体的な内容は、Webマガジン「ecojin」にてエシカル消費を含めた、SDGsを意識した生活を送るための情報発信や、エシカル消費に関する意識調査の実施、啓発教材の制作・配布を行っています。

消費者庁

消費者庁は消費者政策の推進、自立した消費者の育成などを行う機関です。

衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮したサステナブルファッション習慣をはじめとした取り組みを消費者へ発信し、無理のないエシカル消費を推進しています。

具体的には特設ホームページにて、エシカル消費の概要を解説し、国内の消費者が行っているエシカル消費の実例を「つくること」「かうこと」「つかうこと」「すてること」の4つのカテゴリーに分けて紹介している活動などが挙げられます。

 

エシカル消費の具体例

エシカル消費 事例

ここまでエシカル消費の定義、エシカル消費を鑑みた商品の選び方・買い方、捨て方、国内でのエシカル消費の取組みについてご紹介してきました。

次では、エシカル消費を実践する際の主な尺度である、以下の4項目とエシカル消費の関係を見ていきましょう。

  • ・環境保護
  • ・社会貢献
  • ・D&I(多様性の受容)
  • ・地域経済への貢献

 

環境保護の観点

エシカル消費は環境保護の観点からも有意義な活動です。私たちは生活の豊かさと引き換えに、地球全体の環境問題に繋がる「大量生産・消費・廃棄」の課題を抱えています。SDGsに掲げられている「緑の豊かさを守ろう」「緑の豊かさを守ろう」をはじめとした環境問題に関する目標がその一例です。

これらの現状を認識し、環境に負荷のかからない商品を選んで購入し、消費をする行動も持続可能な社会を目指す消費活動である、エシカル消費の1つだと言えます。

例えば、商品を購入する際にリサイクル素材・低資源使用量や低CO2排出量、生物多様性を推進する商品を選択することで環境への負担を減らすことができます。環境保護の観点でエシカル消費を行いたい場合は以下をはじめとした認証ラベルが付いている商品を選ぶと良いでしょう。

FSC®認証

FSC認証とは、持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した「適切な森林管理」を認証する国際的な制度です。以下2つの基準を満たした商品に認証マークが付与されます。

  • ・森林管理のFM(Forest Management)認証
  • ・加工・流通過程のCoC(Chain of Custody)認証

FSC認証マークは主に紙パックジュース、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、お菓子の紙パッケージなどが対象です。

※参考情報:FSCジャパン公式サイト「FSC認証とは」

レインフォレスト・アライアンス認証

レインフォレスト・アライアンス認証マークは、持続可能性の3つの柱(社会・経済・環境)の強化につながる手法を用いて生産された商品に付与されます。

森林保護や気候変動への対応だけではなく、労働者への人権保証や労働環境の保証が為されていることも認証マーク付与の基準になっています。

※参照:レインフォレスト・アライアンス公式サイト

 

他国を含む社会への影響への配慮

エシカル消費では持続可能な社会の実現のために、商品そのものだけではなく、商品生産に関わる人や社会にも目を向ける必要があります。

発展途上国では、働き手が劣悪な環境や給与で輸出製品を作らされ、安い価格で売買されるなど先進国が発展途上国の人々を搾取する問題が起きているからです。劣悪な労働環境や不平等な経済取引を改善するには、労働者が快適に働ける環境の用意と、適切な価格での製品や作物の取引が必要になります。

貧困のない公正な社会をつくるために、途上国の経済的社会的に弱い立場にある生産者と、経済的社会的に強い立場にある先進国の消費者が対等な立場貿易が行われたことを証明する「フェアトレード認証マーク」が付与されている商品を購入することで、発展途上国の労働者の生活にも貢献できる消費活動につながるでしょう。

 

D&Iの観点

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは国籍や性別、障がいの有無をはじめとした人材の多様性を受容し、市場競争優位に役立てる文化や制度のことです。

少子高齢化や労働人口の減少に対する解決策として、D&Iを推進する企業もある一方、社会的マイノリティの人々に対するハラスメントや障がい者雇用の平均賃金の低さは依然として課題となっています。

エシカル消費では、人材の多様性を受け入れた上で、経済を成長させる動きにも貢献できます。例えば、売上の一部がや障がい者への支援につながる商品や、社会的マイノリティの人が作った商品を購入することが挙げられます。

他にも障がい者やLGBTQをはじめとした社会的マイノリティの人たちを積極的に採用する企業の商品やサービスを意識的に購入することも、エシカル消費です。

 

地域振興の観点

地域復興の観点で地元で生産された商品や原材料を購入する行動もエシカル消費の1つだと言えます。地元の野菜や肉、海産物などを積極的に購入することで、地元の生産者の収入を上げたり地域活性化に繋がるからです。

また、自然災害などが多い日本において復興支援商品の存在も知っておくと良いでしょう。自然災害などにより生活に被害を受けた地域の人々がつくる商品の購入は、被災地の復興を支援するものです。

食べ物や飲料、洋服や雑貨などジャンルは様々ですが、これらの商品を通じて、仕事を作り出し生活を支えることはもちろん、伝統の継承にも貢献できます。

 

エシカル消費が注目される理由

エシカル消費 注目

エシカル消費への理解が少しずつ深まってきたところで、昨今エシカル消費が注目されている背景を見ていきましょう。

 

持続可能な社会への関心の高まり

エシカル消費が注目されるようになった理由の一つは、持続可能な社会への関心や危機感が日本社会で高まったことが挙げられます。

2017年には、文部科学省の学習指導要領にも「持続可能な社会の作り手」の記載が追加され(※)、社会課題の解決に対して、主体的に行動する人を増やす取り組みが推進されてきました。

その中でも、誰でもすぐに取り掛かれるエシカル消費の気軽さや身近さが人々の行動を促し、注目が集まる要因の一つになったと言えるでしょう。

※参照:文部科学省 持続可能な開発のための教育

 

情報化社会になり判断材料が豊富になった

エシカル消費の拡大には、IT技術の発展と情報化社会への変化も大きな要素の一つです。

パッケージの認定ロゴを見た時に、どんな基準を突破して認定されているのか、どんな企業がエシカル消費に貢献していると言えるのか、など個人の視点では判断しきれない情報も手元のスマートフォンやパソコンから瞬時に得られるようになりました。

また、企業や行政からの情報に受け身になるだけでなく、消費者自身がエシカル消費やSDGsなどの取り組みを積極的に発信していることも、社会的動向を助長した理由と言えるでしょう。

 

エシカル消費に関連する用語

エシカル消費 SDGs

ここでは、エシカル消費を知る際に関連してよく出てくる用語をご紹介します。

 

SDGs

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、持続可能な社会の実現を目指す世界共通で制定された目標です。

エシカル消費はSDGs の17 の目標のうち「12.つくる責任 つかう責任」、「1.貧困をなくそう」など様々なゴール達成に貢献する取組である点でSDGsと関係が深いと言えます。

 

CSR

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任を表す言葉です。社会的責任とは、従業員や消費者、投資者などへの配慮に加えて、商品やサービスを介して関わる社会への貢献までを考慮した上で、企業が適切な意思決定を行う責任です。

CSRを意識した経営や商品開発、販売を企業が行うことで、市場に出回った商品を購入する消費者が自然とエシカル消費を実現できるようになる点で、エシカル消費と関係性があります。

 

ESG投資

ESG(イーエスジー)とは「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の3つの単語の頭文字を取った略語で、主に企業経営や投資の領域で使われる言葉です。

環境や社会貢献、企業統治に配慮した経営をする企業に投資をすることで、売上高や利益などの金銭的な側面だけでなく、ESGへの取組状況も考慮した投資のことを指します。

ESG投資の風潮が強まれば、環境保全や人権問題への取組みをはじめとした社会課題の解決に企業が取組むメリットが大きくなり、企業は自社の社会的価値を高め、ESG投資の対象になるように動くでしょう。またESG投資によって消費者だけではなく、企業経営者がエシカル消費に対して興味関心を抱きやすくなるため、社会構造や市場倫理としてエシカル消費が広まりやすくなるとも言えます。

また銀行世界大手米モルガン・スタンレーのサステナブル投資研究所によれば、新型コロナウイルスの流行を契機にミレニアル世代の投資家の 75% 近くが社会の持続可能性に貢献する企業に投資の変更をしたと言われています。

※参照:Morgan Stanley「Sustainable Signals」

 

企業がエシカル消費に取り組むメリット

エシカル消費 メリット

ここまでエシカル消費の定義や取り組みなどを紹介してきました。次では消費者だけでなく、企業がエシカル消費に取り組むメリットをまとめて紹介します。

 

企業ブランディングになる

全国の16~65歳の一般消費者(2803サンプル)を対象に実施された、消費者庁の『倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査報告書』(2020)では「エシカル商品・実際に、サービスの提供が企業イメージの向上につながると思うか」の質問に対して、全世代の約80%が「(向上につながると)そう思う」または「(向上につながると)どちらかというとそう思う」と回答しています。(※)

この結果から、エシカル消費を推進する企業は消費者からのポジティブなイメージを抱かれやすくなると分かるでしょう。

※参照:消費者庁『倫理的消費(エシカル消費)」に関する 消費者意識調査報告書』

 

新世代の消費者にマッチしやすい

電通グローバル・ビジネス・センターと電通総研が日本を含めた世界12カ国の若年層500人を対象に行った『サステナブル・ライフスタイル意識調査2021』では、日本の若年層(18~29歳)の消費と価値観における傾向として以下の項目が挙げられると述べられています(※)。

  • ・社会活動に関心を持つきっかけはSNSが上位
  • ・社会活動の高関与者が4割
  • ・人種差別が関心のある社会課題のトップ

上記の調査結果からもわかるように、日本国内の若年層はインフルエンサーや友人のSNS投稿から社会活動に関心を持つようになっている傾向があります。また社会活動に関する情報を得るだけでなく、社会活動に既に参加している若年層も4割居ることから、若年層の消費活動にエシカル消費はマッチしやすいと言えるでしょう。

これらの情報から、企業がエシカル消費に取り組んだ商品を企画・販売することは、若年層のファン獲得や定着につながると推測されます。

※参照:『電通と電通総研、2010年に続き 「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」を12か国で実施』

 

新たなビジネスチャンスにつながる

エシカル消費 メリット

株式会社電通が実施した『エシカル消費 意識調査2020』によれば、消費者から見た業界ごとの「エシカル度(エシカル消費に積極的に取組んでいると考えられる程度)」の実態を見ると、以下の業界が特にエシカル消費に積極的に取組んでいると思われていることが分かります。

  • ・食品業界
  • ・自動車業界
  • ・日用品業界

また同調査から消費者が実践したいエシカル消費の傾向は以下のとおりです。

  • ・メディアや店頭などで知っていて身近なもの
  • ・自分と社会、両方のメリットが理解できるもの

前項でご紹介したエシカル消費の「若年層との相性の良さ」と業界との親和性を掛け合わせることで、ビジネスチャンスを拡大させることも可能かもしれません。

 

エシカル消費の課題

エシカル消費 課題

ここまでの内容で、エシカル消費は社会課題の解決につながる消費活動として、消費者や企業、社会にメリットがあることをご紹介しました。一方、解決し切れていない課題も存在します。

 

高コストになりやすい

日本生活協同組合連合会の調査によると、エシカル消費に取り組む際に懸念となるポイントの一位が36.2%で「価格が高い・経済的な負担」でした(※)。

エシカル消費は環境や社会に配慮するため、材料にこだわっていたり丁寧に作っていること、コスト以外のところに価値を見出そうとする傾向があります。

大量生産ではないため、一つの製品にかかるコストが一般的な製品に比べて高くなってしまうことは、消費者にとっては経済的側面からみて負担になってしまうでしょう。製品の背景などから価値を見出し、個人の生活に合わせた消費活動を行うことが大切です。

※参照:日本生活協同組合連合会「人や環境にやさしい消費活動についてのアンケート」

 

まだ認知度が低く商品も少ない

エシカル消費を実践しようと考えて店頭を訪れても、中々環境問題や労働問題に配慮したエシカルな商品が見つからないことも課題の1つです。

エシカル消費への関心は高まってきているものの、前述したように高コストになりやすい側面から、実際に商品やサービスを提供している企業はまだ少ない現実があるからです。

 

認定制度の認知度や利用率が低い

エシカル消費に関連するロゴマークは数多く制定されているものの、意味や背景の知識を正確に理解する機会は多くありません。

前出の『倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査報告書』によれば、エシカル消費に関連する認証マークの認知状況は以下のとおりでした。

  • ・エコマーク:80.5%
  • ・オーガニック:39.3%
  • ・フェアトレード:14.4%
  • ・レインフォレスト:11.3%

この調査結果から分かるように、環境問題に関する取組みをしている商品に付与される「エコマーク」の認知度は8割を超えている一方、公平な貿易を介した労働環境の改善につながる商品を示す「フェアトレードマーク」や、農村の経済機会創出に貢献する「レインフォレストマーク」は認知度が低いと言えます。

 

エシカル消費実践の企業事例

エシカル消費 企業事例

最後にエシカル消費に関する取組みをしている企業の事例を3つご紹介します。

 

花王

洗濯用洗剤などをメインに販売する日用品メーカーの花王では、詰め替え用ボトルの推進やフィルム容器のリサイクル技術開発などにも積極的に取り組んでいます。

衣料用洗剤の「アタックゼロ」、食器用洗剤「キュキュット」、スキンケアの「ビオレ」、ヘアケアの「エッセンシャル」など日常的に使う商品がその代表例です。

1991年から販売されているつめかえ用では、独自に開発された、薄いフィルムタイプの包装容器が起用されており、プラスチック資源削減の取組みにつながっています。

また2016年には誰でも簡単に中身を残さずつめかえられる、つめかえ容器「ラクラクecoパック」を販売するなど、環境保全の観点でエシカル消費を促進し続けている企業だと言えるでしょう。

 

LUSH

LUSH(ラッシュ)はイギリスに本社を置く、バス用品・ハンドメイド化粧品メーカーで、エシカル消費に全面的に取り組んでいる代表的な企業です。

主な取り組みには動物実験への反対、フェアトレードの積極的な支援が挙げられます。同社の『エシカルバイイングポリシー』(※)でも「自分たちの調達活動が地域の人々や環境にどのような影響を及ぼすかを理解し、どこから、誰から、どのように購入するかについて、会社として責任のある決断を下しています。」と明記されているほどです。

また同ポリシーには仕入れの基準として以下のように明記されています。

・労働者の権利

労働組合、団体交渉、衛生と安全、離職の自由、公平な賃金、労働時間、差別、児童労働がない

・環境

オーガニック栽培、サステナビリティ、絶滅危惧種、製造過程における土壌および水の汚染、原材料加工に必要な資源の利用、遺伝子組み換え作物を使用していない

・動物保護

原材料の安全性テストに動物を利用していないこと。 ベジタリアンでも安心して使える原材料のみを採用する

・輸送

原材料が輸送される距離、空輸を最小限に抑えること、最小限の梱包用素材の使用

※参照:LUSH『エシカルバイイングポリシー』

 

セブンイレブンジャパン

大手コンビニエンスストア・セブンイレブンも、コンビニエンスストアの課題として挙げられる大量生産・大量廃棄を解決しようと動き出した企業の1つです。

2021年6月から消費者庁、農林水産省、環境省、日本フランチャイズチェーン協会が連携して、できるだけ販売期限の近い商品を選ぶ「てまえどり」の推進をしています。セブンイレブンでもてまえどりポップを設置し、お客様に賞味期限が近いものを購入してもらえるよう、てまえどりの呼びかけに積極的です。

 

エシカル消費が学べる授業を紹介

最後に「エシカル消費」をテーマに概要から観点、実際の取り組みまですぐに活用できる授業をご紹介します。エシカル消費に関する知識を深め、自分自身の消費行動を見つめ直したい方におすすめです。

 

エシカル消費のギモン~求められる消費者リテラシー

エシカル消費のギモン~求められる消費者リテラシー

< コース紹介 >

SDGsに貢献するために個人が起こせる行動の選択肢のひとつが「エシカル(倫理的)消費」です。SDGsの17の目標のうち、目標12の「つくる責任つかう責任」にも通じてくるエシカル消費は、人々や地域、社会、そして地球環境に配慮した買い物や、その他のお金を使う行動全般を指します。このコースではエシカル消費のポテンシャルと課題を整理しながら、今後求められる消費者リテラシーを考えていきます。

先生プロフィール

坂口孝則

坂口孝則(さかぐち・たかのり)
経営コンサルタント。大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。 調達・購買、原価企画を担当。 バイヤーとして担当したのは200社以上。 著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買実践塾』『だったら、世界一の購買部をつくってみろ!』『The調達・仕入れの基本帳77』(ともに日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』(ともに幻冬舎刊)など30冊を超える。

 

まとめ

エシカル消費は環境保全だけではなく、労働環境問題や国際社会の公平な取引に貢献できる消費活動です。エシカル消費に関連する認証マークを確認したり、エシカル消費に積極的に取り組んでいる企業の商品を選ぶことで、気軽に社会課題の解決に貢献してみましょう。

Schooでは、エシカル消費をはじめとして社会に関するコンテンツが公開されています。生放送授業は無料なので、ぜひ気軽に参加してみてくださいね。

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