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2023年11月28日 16:48 更新
顧客が商品と出会い、購入や利用に至るまでを一連のステップにまとめるカスタマージャーニーは、特にマーケティングにおいて重要な役割を果たします。本稿では、顧客理解を深め、マーケティング戦略や企画立案に活用ができるカスタマージャーニーの必要性や、その作り方についてわかりやすく解説していきます。
マーケティングに関連する仕事をしている方や、カスタマージャーニーの基本を知って実務で活かしたい方は是非ご覧ください。
カスタマージャーニーとは直訳すると「顧客の旅」で、顧客が商品やサービスを知り、購入や利用をするまでの一連のフローを意味する言葉です。そしてこのカスタマージャーニーを可視化し、フェーズ毎に顧客接点や顧客の感情・行動などの切り口で整理したものを、カスタマージャーニーマップと言います。
カスタマージャーニーマップの形式や内容は利用目的やビジネスモデルによって異なるものの、一般的には上の画像のように、横軸には商品を知ってから購買行動を起こすまでの顧客状態をステップで置き、縦軸には顧客行動・思考、課題点や解決策などを設定します。このように整理することで、企業は顧客の状態に合わせた適切なコミュニケーションがとれているかの確認や、施策の立案を行うことができます。
カスタマージャーニーの概念が初めて登場したのは1990年代後半であると考えられており、それ以降長くマーケティングの領域で活用されてきました。また、この概念はマーケティングの神様として知られるフィリップ・コトラー氏の著書「マーケティング4.0」に登場し、それを契機に日本でもビジネスで活用されるようになったと言われています。
※画像はSchooオリジナル授業『消費者心理学とカスタマージャーニーマップ』より引用
カスタマージャーニーと関わりの深い言葉として「消費者心理学」があります。消費者心理学とは、消費者が商品やサービスを購入・利用する際、どのような心の動きやメカニズムが働くのかを研究する学問のことで、消費者行動学と呼ばれることもあります。
消費者心理学の研究対象は、消費者の経験や思考、行動、感情などです。そのためビジネスの場では、それらの知見が顧客の購買意欲を促進することなどに活用されています。
一方のカスタマージャーニーは、顧客の購買行動や感情について分析を行い、顧客の状態に合わせた適切なコミュニケーションを設計するために活用します。即ちカスタマージャーニーは、消費者心理学をビジネスの現場で実践的に活用できるよう、応用したツールであると言えるでしょう。
AIDA(アイーダ)とは、消費者が商品やサービスを購入するまでの行動プロセスを構造化した「購買行動モデル」の一つです。19世紀後半に米国で誕生して以降、マーケティングの世界で広く活用されてきました。
AIDAモデルでは、顧客が商品やサービスを購入する際に以下の4つのフェーズを経由すると考えます。
このような汎用的なモデルが誕生したことで、企業は消費者の行動心理を的確に捉え、マーケティング活動の効率化ができるようになりました。
また冒頭で、カスタマージャーニーの横軸には「商品を知ってから購買行動を起こすまでの顧客状態をステップで置く」と解説しました。ここでご説明したように、AIDAはまさに「購買行動までのステップ」を分類したモデルなので、カスタマージャーニーの横軸としてそのまま使うことができます。
ペルソナとはサービスや商品のターゲットとなる架空の人物のことを指す言葉です。企業は商品のターゲットを明確にし、チーム内の共通認識を作ったり顧客体験を設計したりする目的で、ペルソナを利用します。
ペルソナを設定する時は、市場調査などさまざまなデータや仮説をもとに、年齢・性別・年収・家族構成・勤務先・性格などの細かい条件を設定し、人物像を作り上げていきます。
前提として、社会にはさまざまな人がおり、人によってニーズは大きく異なります。だからこそ、マーケティング施策を推進するには自社商品が誰の課題を解決するものなのかを明確にし、それらターゲットの購買行動を解像度高く捉える必要があります。
つまり、カスタマージャーニーで整理する顧客行動の一連の流れを捉えるためには、ターゲットの行動を詳細に想起できる必要があると言えます。またその観点で、ペルソナはカスタマージャーニーの作成においてもよく活用されているのです。
※画像はSchooオリジナル授業『カスタマージャーニーの作り方 -第2回:作成方法説明』より引用
カスタマージャーニーを使って顧客行動を可視化すると、「どんなユーザーに対して・いつ・何を伝えるべきなのか」の定義や、理想の顧客行動に対する現状課題を抽出することができます。
一般に、顧客に商品やサービスを購入してもらおうと考えた場合、顧客目線に立ったコミュニケーションが必須です。例えば、商品の良さをよく理解していない状態の人に対して割引セールの案内をしたところで、購買意欲を刺激するのは難しいでしょう。その点、カスタマージャーニーを活用すると、顧客の購買行動ステップを軸に施策を整理していくことができるため、顧客状態に合わせた適切なコミュニケーションを行うことが可能です。
また、カスタマージャーニーに既存の施策を当てはめていくことで、現在行っている施策の妥当性や抜けもれをチェックするという使い方もできます。
カスタマージャーニーは長らくマーケティングの現場で活用されてきた概念ですが、一方で時代遅れだと言われることもあります。
時代遅れと言われる背景には、SNSやスマートフォンの普及により消費者行動が多様化し、必ずしも消費者が伝統的な購買行動モデルに沿った行動を取らなくなってきたことがあります。具体的には、常日頃から情報にアクセスする中で、突発的に購買意欲が刺激され衝動的に購入行動をする「パルス型消費行動」が増えてきたことなどが挙げられます。
このように、技術進歩がめざましく行動変容も加速している現代では、変化に対応しながらマーケティング戦略を考える必要があります。一方、変化が激しい現代においても、顧客心理を理解し、戦略的にコミュニケーションを取ることの重要性は変わりありません。
そのため、例えばオフライン・オンライン両方の顧客接点を検討したり、新しいテクノロジーを顧客接点に取り入れたりと、環境変化を反映させてカスタマージャーニーを活用すると良いでしょう。
カスタマージャーニーの概要を押さえたところで、ここからはカスタマージャーニーのメリットやその効果について解説していきます。
カスタマージャーニーを活用すると、①顧客体験への理解が深まる、②マーケティング施策の全体設計ができる、③課題発見・施策優先度判断ができる、④フェーズごとのKPI整理ができる、の4つの効果が期待できます。
企業はカスタマージャーニーマップの作成を通じて、ターゲットの定義だけでなく、購買行動の言語化を実施することになるため、顧客体験への理解を深めることができます。
例えば、既存顧客のデータを分析してターゲット属性を細かく設定しても、それだけでは実際の顧客行動に対する解像度は低くなりがちです。適切な施策を実施するには、ターゲットがどんな人かに加え、なぜ行動するのかが見えている必要があるでしょう。
一方、カスタマージャーニーを作成する過程では、私たちはターゲットの購買までの一連の行動や、その背後にある感情等にも目を向けることになります。だからこそ顧客の心に響く商品・サービスの開発や販売ができるようになるのです。
カスタマージャーニーを整理することで、企業はフェーズごとの顧客ニーズや接点を一連の流れとして捉えることができます。そのためカスタマージャーニーは、マーケティング施策の全体設計に役立ちます。
一言でマーケティングといっても、その手段や施策はさまざまです。出てきた課題に対して一つ一つ解決策を考え施策を打つことも可能ですが、全体設計ができていないと施策間で矛盾が生じたり、コスト効率が下がってしまったりする可能性が生じます。
一方カスタマージャーニーでは、顧客が購買行動を起こすまでの一連の流れをフェーズに分類し整理して考えるので、初期フェーズからゴールまで一気通貫したマーケティング活動の設計が可能になるのです。
上の項では、カスタマージャーニーを作成することで施策全体を俯瞰して捉えられると述べましたが、それにより課題の発見や施策優先度の判断ができるようになることもメリットの一つです。
カスタマージャーニーを整理することで、例えば商品購入の意欲を高めるための顧客接点が不足していることに気が付いたり、顧客が商品に関心を持ってから購買意欲を高めるまでに離脱が多いなどの、課題点を洗い出すことが可能です。
また、整理した結果、マーケティングの課題が複数見つかることもあるでしょう。そのような場合は、上の画像のように課題を①重要度、②緊急度、③工数・予算、の3軸で整理すると優先度を判断しやすくなります。課題発見・施策優先度判断についての詳しい説明はぜひ授業本編も確認し、参考にしてみてください。
カスタマージャーニーマップを作成すると、フェーズ毎の必要施策やKPI(成果指標)が明らかになり、目標管理が行いやすくなります。
前提として、各マーケティング施策は最終的なゴール達成のために行うものです。そのため、それぞれの施策やKPIは、最終ゴールから逆算して設計し、各施策同士には連動性を持たせることが理想です。また、そのように設計しておくことで、目標未達の場合にどこに課題が存在するのかを効率的に特定することが可能になります。
カスタマージャーニーマップを活用すると、上で述べた通り、施策を一連の流れとして捉え、施策同士のつながりを可視化することができます。またフェーズ毎の施策とともに、それぞれの成果指標を設定すれば、自ずと連動性のある目標管理ができるようになるのです。
カスタマージャーニーマップは、作成の用途や対象となる商材・業種によってさまざまな形があり、絶対的なフレームがあるわけではありません。そのためケースバイケースで柔軟に内容を調整することができる一方、決まった型がないからこそ、使いこなすのが難しいという側面もあります。
そこでここでは、具体的な作成フローについてご説明する前に、カスタマージャーニーマップの構成要素について解説します。カスタマージャーニーマップにおける、横軸と縦軸が何を意味するのかを知り、前提としての考え方を押さえておきましょう。
カスタマージャーニーマップの横軸には、顧客が商品やサービスと出会ってから最終的なゴールとなる行動(購買行動など)を起こすまでの一連の流れを、ステップに分けて設定します。
例えば、Schoo授業『消費者心理学とカスタマージャーニーマップ』(※上画像)では、横軸にAIDAモデルを利用しており、顧客の行動ステップは注意(Attention)・興味(Interest)・欲求(Desire)・Action(購買)の流れで進みます。このように、AIDAをはじめとした購買行動モデルは、さまざまな商材にまたがって適用できる汎用的なフレームとして、よくカスタマージャーニーの横軸に活用されます。
一方、横軸となるステップはビジネスの形態によっても多様で、さまざまなパターンがあります。
例えば、後ほど事例として紹介するサブスクリプション型のサービスでは、ビジネスモデル上いかに継続利用してもらうかが重要になるため、認知・検討・取得・体験・ロイヤル顧客化の5つを横軸においています。
このように、実際にカスタマージャーニーマップを活用する際は、横軸のステップを対象の商品・サービスに応じて設定していく必要があります。
上でご紹介したAIDAの他にも、購買行動モデルには多くの種類が存在します。ここでは、カスタマージャーニーマップの横軸によく利用される購買行動モデルの例として、「AIDMA」「AISAS」「5A」の3つをご紹介します。
【AIDMA】AIDAにMemory(記憶)を加えたモデル
【AISAS】検索やSNS共有といったWEB行動を想定したモデル
【5A】コトラーが提唱したオンラインでの情報拡散を踏まえたモデル
このように、カスタマージャーニーマップの横軸に採用できる消費者行動モデルは複数あり、それぞれ特色も異なります。どれを使うのが正解というわけではなく、自社製品やサービスにあったものを利用することが大切です。
カスタマージャーニーマップの縦軸は、横軸以上にさまざまなパターンがあり、ビジネス目標やマップを作成する目的に合わせて変化します。実際に、Schooのカスタマージャーニーを扱う授業においてもそれぞれ異なるので、例を用いてご説明します。
例えば『消費者心理学とカスタマージャーニーマップ』では、次の画像の赤枠に囲まれた5つの項目、①顧客接点、②顧客行動、③顧客の思考・感情、④課題、⑤解決策、を縦軸に採用しています。この切り口は、顧客接点毎の課題と解決策をまとめていることから、マーケティングの課題整理などに向いていると考えられます。
一方、『カスタマージャーニーの作り方 -第2回:作成方法説明』では、縦軸は①パーセプション(顧客の知覚・認識)、②コンテンツ、③マーケティング手法の3つを採用しています。
このマップはマーケティングオートメーションに活用することを念頭に、各フェーズで顧客に提供するコンテンツを縦軸とし、遷移指標についても詳細に定めている点が特徴です。
最後に、『統合デジタルマーケティング入門 第2回』では、縦軸に①KPI管理・②チャネル(オンライン/オフライン)・③顧客心理状態・④システム・⑤データ、を採用しています。
このカスタマージャーニーマップは顧客行動と心理・タッチポイントに留まらず、各フェーズの成果指標(KPI)や利用するシステム、データまで可視化しています。そのためマーケティング施策の全体設計や、施策の実行を見据えた内容になっているのが特徴だと言えるでしょう。
このように、一口にカスタマージャーニーマップと言っても、どのような観点で分析をかけていくのかは色々なパターンがあります。企業によって事業形態や目標、優先事項は異なるため、それら前提条件の違いや、作成の目的に合わせて項目を決めていく必要があるのです。
カスタマージャーニーマップの構成について理解したところで、ここからはカスタマージャーニーマップの作り方とその手順を、7つのステップで詳しく解説していきます。
なお、本稿ではSchooオリジナル授業『BtoCマーケターのためのカスタマージャーニーの作り方』を参考に手順を解説しますが、前述の通りカスタマージャーニーの内容は商材や作成目的によって変わります。そのため、ご紹介する手順は一つの参考として、用途に合った方法にカスタマイズしてご利用いただくと良いでしょう。
まずはじめに、カスタマージャーニーマップにおける目標、即ち該当のマーケティング活動をすることで最終的に得たい成果を明確化します。
例えばカスタマージャーニーにおけるゴールとは、以下のようなものがあります。
通常、これら目標を設定する際は、経営目標・KGIなどから逆算して考えます。その他、その時々の事業課題や優先度によっても左右されるので、関係者間でしっかり認識を合わせておくことが大切です。
取り組みの目標を定めたら、続いてアプローチしたいターゲットと、カスタマージャーニーの横軸となるステップの起点と終着点を策定します。
ターゲットを定める際には、年齢層などの属性だけでなく、どんな課題を抱えた人なのか、自社の商品やサービスがその課題をどう解決するのかを検討することが大切です。また一般的に、この検討を行う時は、既存顧客の分析や市場調査・競合分析などを通じて自社商品を購入しやすい顧客層や、そのボリュームを想定して定めます。そして、最終的に具体的な顧客像に落とし込む際は、上でご紹介したペルソナなどを活用します。
ターゲット像が固まったら、対象の初期状態と、最終的なゴールを達成した時の状態を設定します。例えば「このブランドは知っている」という状態の人が、最終的に「ブランドを気に入って利用しており、友人に勧めている」状態になるなど、前項で定めたゴールに沿って策定します。
カスタマージャーニーの始点と終着点が定まったら、その間のプロセスも含めて全体工程を定めていきます。この工程を通じて、カスタマージャーニーマップの横軸が出来上がります。
本稿でもご紹介したようなAIDAやAISASなどの購買行動モデルを使う場合、横軸は採用したモデルによって定まっていますが、同時に各ステップにおける顧客の心理変化も考えるようにすると、この先の打ち手の検討が行いやすいでしょう。
また、Schooオリジナル授業『BtoCマーケターのためのカスタマージャーニーの作り方』の小川共和先生は、カスタマージャーニーを使ってマーケティングオートメーションを設計することを前提に、顧客ステップをパーセプション(顧客の知覚・認識)単位で区切ってまとめる方法を解説しています。この場合、顧客が辿る一連のフェーズは例えば以下のようになります。
全体のフローが決まったら、続いて遷移指標を設定します。遷移指標とは、各フェーズの定義とターゲットの状態を元に、何をもって顧客のフェーズが変わったと判断するかの指標のことを指します。
例えば、ユーザーが広告から自社ウェブサイトにアクセスした瞬間を認知から興味のフェーズに変わったと定義したり、無料体験の申し込みをもって、商品に強い関心を抱いている状態と判断したりすることが考えられます。このように、ユーザーの行動やそれを把握するためのデータを元に、指標を策定します。
遷移指標の策定は、特にマーケティングオートメーションなどのツールの導入を検討している場合、自動で顧客の状態を判断できるようにする必要があり、重要です。一方で、カスタマージャーニーを作る目的が現状施策の棚卸しや、課題の特定である場合は、遷移指標策定の優先度は下がるでしょう。
次に、各フェーズにおけるユーザーとの接点や、それぞれの接点におけるマーケティング施策を策定していきます。
タッチポイントと打ち手の策定をする際は、各フェーズの目的と各フェーズで企業が活用できるデータを念頭に置く必要があります。例えば、商品認知が目的のフェーズにおいて、ターゲットが既存客か新規客かでは使えるデータは異なります。この場合、既存客であれば登録済メールアドレスなどが活用できるかもしれませんが、新規客の場合は、TVCMやデジタル広告など個人情報がない前提で活用できるチャネルを検討する必要があるでしょう。
その他、年代によって利用SNSの傾向に違いがあるように、ターゲットの特性によって適切な手段は変わってくるため、前の段階で作成したペルソナなどを元に検討を進めると良いでしょう。
前の工程では、顧客に情報を届ける「手段」を検討しましたが、ここからは届ける情報の中身、即ち施策で使うコンテンツを企画していきます。ここで言うコンテンツとは、例えば商品情報やブランドの価値、何らかのお役立ち情報、購入に関する案内などのことです。
前提として、近年はスマートフォンの普及により、人は日々常態的に無数のコンテンツに触れており、情報過多に陥っていると指摘されています。そしてそのような環境にいると、脳が過剰な負荷を避けるために無意識的にコンテンツを無視するようになると言われています。そのためコンテンツの企画をするときは、他のコンテンツとの差別化を図ることが重要です。
一方、他との違いが明確で、人の心に刺さるコンテンツを作成することは決して簡単なことではありません。そのため、このフェーズでは必要に応じて、コンテンツ企画に知見のある人や部署の力を得て進行すると良いでしょう。
最後に、マーケティング活動の事業的な達成度を測るとともに、改善行動を促すためにKPI(評価指標)を策定します。
例えば上でご紹介した授業の例で言えば、「初回購入件数」や「無料サンプル申し込み数」など、一連のフローの中で成果判断をするために重要な指標を採用します。このように、前の工程で遷移指標を設定している場合は、それがそのまま成果指標に転用できるでしょう。
また、カスタマージャーニーの一連のフローには複数部署が関わることも多いため、各指標がどの部署の目標となるのかを考慮することも大切です。例えば、集客はマーケティング部門、商品購入にあたっての顧客対応は営業部門が担当するのであれば、各フェーズのKPIも連動して策定する必要があります。このように、一連のフローを俯瞰してKPIを策定する時には、部門間の連携をはかることが大切になるでしょう。
ここまではカスタマージャーニーについて考える際の手順について、Schooの授業を参考に詳しく解説してきました。ここからは、カスタマージャーニーが実際にどのように企業で活用されているのかについて、SpotifyとDuolingoの例を通して見ていきましょう。
Spotifyとは世界中の楽曲を探して聞くことができる音楽ストリーミングサービスで、世界で5億人以上のユーザーに利用されています。そして上の画像は、Spotifyのアプリに音楽の共有機能を追加するにあたり、現在の顧客体験を深く理解し改善につなげることを目的として作られたカスタマージャーニーマップです。
マップの横軸は訪問・鑑賞・発見・共有・議論・受信・感想と7つのフェーズに分かれています。また、縦軸にはフェーズ毎の顧客の行動と思考・顧客接点・登場人物・感情が設定されています。
このマップは最終的に「共有機能の開発と追加」を見据えているため、縦軸に「顧客接点(Touchpoints)」と「登場人物(Actors)」を置いており、ユーザーと知人間の音楽の共有プロセスを可視化しています。
このように顧客の体験やその時の感情を丁寧に追っていくことで、新しい機能を開発する際に重視すべき点や要件を導くことができるようになっています。
Duolingoは世界で7000万人以上が使用する語学習得アプリで、ゲーム性のあるプログラムが人気を博しています。そして上の画像は、若年層におけるDuolingoの利用を促進し言語学習を日常の一部にすることを目的にした施策を検討する際に作られたカスタマージャーニーマップです。
横軸は認知・検討・取得・体験・ロイヤル顧客化の5つで構成されており、継続利用を目指すサブスクリプション型のビジネスモデルに適したステップとなっていることが分かります。また、ロイヤル顧客化(Loyality)のフェーズの右横には、さまざまな理由でユーザーがサービスを使わなくなることも表現されており、想定される顧客のステータスが網羅的に描かれていると言えます。
加えて縦軸には、顧客の考え・行動・感情だけでなく、現状の課題(Pain point)と機会(Opportunities)もあるため、現状サービスの課題点を整理し、課題解決に向けたアイデアを練る際に有効なまとめ方と言えるでしょう。
※参照Michelle Slattery - Duolingo & Duopal
ここからはカスタマージャーニーについてさらに理解を深めることができる、Schooのおすすめ授業をご紹介します。本稿でご紹介した以上に詳しい説明を専門知識を有する先生から学ぶことができるので、是非ご覧くださいね。
< 授業紹介 >
「マーケティング基礎」の第10回に当たるこの授業では、大阪大学で経営学を教えていたこともある講師の中川先生にカスタマージャーニーについて分かりやすくご説明いただきます。本稿でご紹介した消費者心理学やAIDAモデルについても詳しく解説しているので、動画で体系的に勉強したいと考える方は是非ご覧ください。
先生プロフィール
中川 功一(なかがわ こういち)
経営学者/YouTuber。経済学博士(東京大学)。大阪大学経済学研究科准教授を経て独立。「アカデミーの力を社会に」をモットーに、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。専門は、イノベーション・マネジメント、経営戦略論。 主な著書に『ど素人でもわかる経営学の本』(翔泳社)『感染症時代の経営学』(千倉書房)『戦略硬直化のスパイラル』(有斐閣)など。
< 授業紹介 >
こちらの授業は、上の授業と同様に、中川先生にカスタマージャーニーについて教えていただく授業です。本授業では、より具体的な利用場面を想定した説明や、本稿では詳しくご紹介していないAIDMAという概念についても紹介しています。カスタマージャーニーの知識を体得することができるので、上の「消費者心理学とカスタマージャーニーマップ」と合わせてご視聴くださいね。
< コース紹介 >
「Marketo」というマーケティングオートメーションツールを提供する会社で特別顧問としてご活躍されている小川先生にご登壇いただく本授業ではBtoC企業でのカスタマージャーニーマップの取り入れ方について詳しくご紹介しています。カスタマージャーニーマップの作成方法についてプロの解説を聞きたいと考える方やBtoCサービスの利用事例を学びたいと考える方におすすめです。
先生プロフィール
小川 共和(おがわ ともかず)
マーケティングコンサルティング専門 小川事務所代表。株式会社マルケト 特別顧問。青山学院大学ビジネススクールABS非常勤講師。 電通 東京本社でマーケティング部門、営業部門に在籍。定年退職後、マーケティングコンサルティング専門の小川事務所を設立。その間、電通イーマーケティングワンに出向し専務取締役として営業・コンサルティング・制作等の現業部門を担当。 出資社としてマルケト立上げにも参画。
< コース紹介 >
幅広いマーケティングの中でもデジタルマーケティングに焦点を当てた本コースではカスタマージャーニーだけでなく4Cや3Cをはじめとするデジタルマーケティングにおいて必要不可欠な概念について学ぶことができます。事業戦略におけるKGI/KPIなどについても解説しており、デジタルマーケティングを統合的に推進する立場にある事業責任者必見の授業となっています。
先生プロフィール
竹内 哲也(たけうち てつや)
早稲田大学政経学部卒。NTT データ、コーポレイトディレクションなどを経て、2014 年にデジ タル・アドバタイジング・コンソーシアムに参画。2018 年よりアイレップも兼務し、グループ 全体の統合デジタルマーケティングを包括的に牽引。2019年度よりIREP執行役員。 NEWSY、タービン・インタラクティブ、シェアコト 3 社の社外取締役も兼任。専門は事業開発。著書は『統合デジタルマーケティングの実践 』(東洋経済新報社) 。
本稿では顧客理解を深め、適切なコミュニケーションを取るために重要と考えられているカスタマージャーニーの重要性や使う際の手順などについて詳しく解説していきました。業種や扱っている商材によって考慮すべき点は変わるものの、マーケティング活動の促進に大きな効果があるため、是非授業も見て実務にお役立てください。
Schooではカスタマージャーニーをはじめとするマーケティングやビジネスで役立つ知識を月額980円で学び放題です。ぜひ活用してくださいね。